「首相になったらできるだけ早期に衆院を解散し、私の改革プランについて国民の皆さんの信を問うことにしたい」9月6日、総裁選出馬表明会見でそう宣言した小泉進次郎元環境相(43)。すでに50人前後の議員の支持を集めるともいわれる小泉氏だが、党内の衆院議員と参院議員の間では温度差もあるようだ。
「場合によってはぶっちぎりの1位もありうる」
空前の出馬ラッシュとなっている自民総裁選。出馬意欲を示した12人の自民議員のうち、少なくとも史上最多となる8人の候補が総裁選レースに名乗りを上げる大混戦の様相だ。
「旧岸田派からすでに出馬会見を終えた林芳正官房長官に加え、上川陽子外相も出馬へと動いています。派閥が健在なら事前にどちらかに一本化されていたはず。派閥が機能しなくなったせいで、票読みもままならない。いったいだれがどれだけの票を集めて勝つのか、予測がなかなかつかない。こんな総裁選は初めてです」(自民党議員)
そんな予測不能な自民総裁選にあって、「決戦投票に残れる2位以内に食い込むのは確実、場合によってはぶっちぎりの1位もありうる」と目されるのが、6日に出馬表明を行った小泉進次郎元環境相(43)だ。
かねて将来の総理総裁と言われてきた小泉氏だが、8月に入って出馬が取りざたされるようになると、ぐんぐんと支持率が上昇。次の総理にふさわしい人物を問う直近の世論調査でも石破茂元防衛相を抑えて1位(日本経済新聞テレビ東京合同調査8月21~22日実施)となっている。
党内の支持も厚い。他候補が総裁選出馬に必要な国会議員20人以上の推薦人集めに四苦八苦する中、すでに50人前後の議員が「進次郎推し」を表明しているとされる。
自民内の進次郎人気のワケを自民関係者がこう説明する。
「裏金騒動や旧統一教会問題などで自民支持はガタ落ち。今年6月の自民内部調査では、今総選挙を行えば自民はマイナス60~70議席の大敗、単独過半数割れもありという予測が出た。
このデータに衝撃を受けた選挙基盤の弱い若手議員から『総選挙は国民に人気の高い進次郎で戦ってほしい』という声が上がり、加えて菅義偉元首相が小泉支持を表明したこともあって、党内で一気に『進次郎推し』の動きが加速した」
ジャーナリストの鈴木哲夫氏もこう言う。
「小泉さんはまだ43歳。しかも軽量級とされる環境大臣を務めただけで、総理総裁に必要な経歴とされる重要閣僚ポストや党三役はまだ経験していない。多くの自民議員が小泉さんを将来の総理の器と認めながらも、まだ経験が不足しているとわかっている。
ただ、自民の支持率低迷は危機的状況。この劣勢を跳ね返して衆院選を勝つには『進次郎総理誕生の一手しかない』というところまで追い詰められているのでしょう」
実際、6日に行われた総裁選出馬会見において小泉氏は、「首相になったらできるだけ早期に衆院を解散し、私の改革プランについて国民の皆さんの信を問うことにしたい」と早期解散を宣言した。
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「問題は総選挙を勝ち抜いたあと…」
とはいえ、党内の「進次郎推し」に温度差がないわけではない。衆院議員に比べ、参院議員――とくに来夏の参院選で改選を迎える議員たちのトーンはどことなく低いという。
「たしかに進次郎氏が総裁選を勝ち抜いて小泉政権が発足すれば、自民の支持率は上がって総選挙で勝てるかもしれない。問題はその後です。もし、その後の予算作りや外交交渉などを進次郎氏がうまくこなせなければ、この内閣は当面の衆院選大敗を免れるための選挙管理内閣にすぎなかったと多くの国民が気づいてしまう。
そうなれば、本予算作りを終えた来年4月から国会が閉会する6月末頃にかけて、ふたたび自民の支持が下落してもおかしくない」(前出・自民関係者)
参院選はその直後の7月にあるため、自民の中には『衆院はいいが、我々は生き残れない可能性がある』と話す参院議員もいるという。
「衆院は小泉内閣誕生で総選挙を有利に戦えてウハウハかもしれないけど、そのツケは来夏の参院選でオレたちが負うはめになるのではと不安視している議員は少なくない」(前同)
資質、能力、経験でなく、若さと人寄せパンダとしての能力値が重視されているだけ――。はたして小泉氏はそんな口さがない巷の見方を一蹴できるのか?
大混戦だけに激しい政策論争になると予想される全国8か所での総裁選演説会。ここで立往生するようでは厳しい。演説会での小泉氏の弁舌ぶりが注目される。
取材・文/集英社オンラインニュース班