マンガの結末には、これまでの伏線回収や大きな問題の解決など、スッキリできる展開を求める人も多いでしょう。しかしなかには、駆け足な描写で一部の読者が納得いかない結末を迎えた人気作品もありました。



『ちはやふる』1巻(講談社)

え…っ? 実写版でもイケメン過ぎじゃね? こちらが『ちはやふる』主人公と三角関係になったふたりです(6枚)

あっさりとしたラストに「以前の伏線はなんだったの?」

 熱い展開や数々の伏線の考察などで盛り上がるマンガの最終回には、納得のいく結末を期待してしまうものです。とはいえ、すべてが解決してスッキリできることを望んでいても、予想外の結末や急展開で描写が不十分などと言われた作品もありました。

※この記事では『マギ』『ちはやふる』『東京卍リベンジャーズ』のネタバレに触れています。

『マギ』

 大高忍先生によるファンタジーマンガ『マギ』は、「週刊少年サンデー」(小学館)で連載されていた人気作品で。主人公「アラジン」と「アリババ・サルージャ」が迷宮(ダンジョン)を攻略しながら、成長していく姿が描かれています。冒険や友情、迫力のあるバトルのほかに、戦争や奴隷問題、人種差別など重いテーマを扱う作品としても注目されました。

 ただ、全37巻で完結した本作には、未回収の伏線の多さや、あっさりと描かれたラストに読者から「納得いかない」という声も出ています。たとえば、謎の組織「アル・サーメン」の魔導士「アルバ」に語り掛ける声の主の正体や、アラジンが思いを寄せているように描かれた皇女兼迷宮攻略者「練紅玉」への本当の気持ちなどは、謎のまま完結しました。

 またクライマックスで描かれたのは、シンドリア国王「シンドバッド」と黒幕の「ダビデ」との戦いですが、メインになっているのはバトルではなく、ふたりの話し合いです。決着はついたものの、本編で詳しい描写のないダビデの過去をもとに描かれたため「理解しづらい」との声もありました。

 物語が進むにつれて壮大な展開になっていったため、あっさりとしたラストに「世界設定とか面白いのにもったいない」「ラストでわけ分からなくなった」などと、残念がる読者の声も目立ちました。

『ちはやふる』

 末次由紀先生による『ちはやふる』は、競技かるたに情熱を注ぐ少女「綾瀬千早」を中心に、友情や恋愛、成長の物語が描かれた作品です。競技かるたの奥深さや、魅力的な登場人物が織りなす青春群像劇、千早が長年の夢であるクイーンを獲得するまでの過程など、多くの見どころがあります。

 そして、非の打ち所がないイケメンの幼なじみ「真島太一」と、彼女がかるたに没頭するきっかけを作った「綿谷新」の三角関係の行方も、読者にとっては見逃せないポイントでした。かるたでつながる3人ですが、千早と新が両想いかのような描写が目立っていたことで、彼らが結ばれることに期待する読者は多かったようです。

 ところが最終的に千早は太一と交際を開始し、新に「太一と付き合うことになった」と告げ、新も「18より28で(千早の)となりにいるの目指すわ」と言って、あっさりと受け入れたというラストでした。彼らの恋模様にドキドキしていた読者からは、「結局そばにいたやつが勝つんかい」「太一も大好きだからいいけど、もう少し丁寧に描いてほしかった」「全否定はしないが、さすがに太一エンドになる伏線が薄すぎ」といった声も出ています。一方で太一を応援する読者もいたほか、「どっちともくっつかないラストを期待していた」などの声もあり、人によって意見が分かれるラストの作品になりました。



『東京卍リベンジャーズ』最終第31巻(著:和久井健/講談社)

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ハッピーエンドだけどモヤモヤな急展開で炎上?

『東京卍リベンジャーズ』

 結末が急展開で読者に衝撃を与えたのが、和久井健先生によるマンガ『東京卍リベンジャーズ』です。半グレグループの抗争に巻き込まれたかつての恋人の死を知った後、タイムリープ能力に目覚めた主人公「花垣武道(タケミチ)」が中学時代に戻り、最悪の未来を変えるために奮闘する様子が描かれました。

 困難に立ち向かい成長するタケミチや、未来で凶悪な半グレ組織になってしまう不良チーム「東京卍會」の仲間たちとの熱い友情、ヤンキー同士の激しいバトル、そして徐々に謎が明かされていくサスペンス展開などで、社会的ブームを起こすほどの人気を集めた作品でした。

 ところが原作マンガは最終章の急展開により、一部で炎上する結末を迎えます。それは、中学時代にタイムリープしていたタケミチが、最後の最後のタイムリープで助けようとしていた東京卍會総長「佐野万次郎」と一緒に小学1年生時代に戻り、ふたりがその後の数々の悲劇を起こさないように行動して、急ピッチで現代まで進行するというものでした。その過程はダイジェスト的に描かれ、最後はそれまでの物語で死んでいたキャラクターも含め、全員が幸せになったことが分かる形で幕を閉じています。

 登場人物の生死に関わる重要な出来事や壮絶な経験から得た成長など、それまでの積み重ねをなかったことするような展開に対し、「今まで読んできたのは何だったんだろう」「ハッピーエンドが唐突すぎ」「みんな幸せになってほしいと思ってたけど、これは……」などと言われる結果になりました。アニメ化や実写映画化、舞台化などメディアミックスもされている人気作品なだけに、ラストの物足りなさが際立ってしまったといえるでしょう。