『ターミネーター2』、『ゴッドファーザーPART II』といった名作を追いやり、「史上最高の続編映画」第1位に輝いたのは、ジェームズ・キャメロン監督によるアノ映画でした。



『エイリアン2』ポスタービジュアル (C)1986 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

【画像】うわ、悪夢みそう… こちらは”もっとよだれダラダラ”の『エイリアン』です(5枚)

80年代を代表するSF映画『エイリアン2』

 イギリスの映画雑誌「エンパイア」が「史上最高の続編映画」(50 Greatest Movie Sequels)というランキングを発表しています。2019年のデータなので直近の続編映画はランクインしていませんが(今であればおそらく『トップガン マーヴェリック』あたりがベスト10入りしていることでしょう)、映画史に残る続編映画の数々が名を連ねました。

1位:『エイリアン2』(1986年/ジェームズ・キャメロン)
2位:『ゴッドファーザーPART II』(1974年/フランシス・フォード・コッポラ)
3位:『ターミネーター2』(1991年/ジェームズ・キャメロン)
4位:『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年/ジョージ・ミラー)
5位:『トイ・ストーリー2』(1999年/ジョン・ラセター)
6位:『ダークナイト』(2008年/クリストファー・ノーラン)
7位:『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』(1980年/アーヴィン・カーシュナー)
8位:『ボーン・スプレマシー』(2004年/ポール・グリーングラス)
9位:『ビフォア・サンセット』(2004年/リチャード・リンクレイター)
10位:『ザ・レイド GOKUDO』(2014年/ギャレス・エヴァンス)

 栄えある1位に輝いたのは、『エイリアン2』です。ジェームズ・キャメロン監督といえば、3位にランクインしている『ターミネーター2』や『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』、脚本家として『ランボー/怒りの脱出』にも関わっており、もはや「キング・オブ・続編映画」的な風格を漂わせています。

 それしても、『エイリアン2』はなぜここまで高い評価を受けているのでしょうか。その理由のひとつに、作品のシリーズ特性があると思われます。

『マッドマックス』シリーズのジョージ・ミラー監督、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのピーター・ジャクソン監督、『ダークナイト』シリーズのクリストファー・ノーラン監督のように、通常はひとりの監督がシリーズ全体を統括するパターンが多いなか、『エイリアン』シリーズでは1作ごとに異なる監督が招聘(しょうへい)されています。

●『エイリアン』→リドリー・スコット 代表作:『ブレードランナー』、『グラディエーター』
●『エイリアン3』→デヴィッド・フィンチャー 代表作:『ブレードランナー』、『グラディエーター』
●『エイリアン4』→ジャン=ピエール・ジュネ 代表作:『ブレードランナー』、『グラディエーター』
●『エイリアン:ロムルス』→フェデ・アルバレス 代表作:『ドント・ブリーズ』、『蜘蛛の巣を払う女』

 実は『スター・ウォーズ』のオリジナル・トリロジーも、1作ごとに監督が異なります。しかしこの場合、創始者であるジョージ・ルーカス監督が、『エピソード5/帝国の逆襲』をアーヴィン・カーシュナー監督、『エピソード6/ジェダイの帰還』リチャード・マーカンド監督に演出を任せて、プロデューサーというポジションでシリーズ全体を統括していました。

『インディ・ジョーンズ』シリーズの最終作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』では、スティーヴン・スピルバーグ監督からジェームズ・マンゴールド監督にバトンタッチされていますが、それまでのスピルバーグ・タッチから大きく逸脱しないような作りになっていました。

 その一方で『エイリアン』シリーズでは、映画監督の作家性が強く反映されていて、作品のテイストがまるで異なります。『エイリアン』第1作は、宇宙貨物船「ノストロモ号」の乗組員たちが未知なる怪物に襲われる、静謐(せいひつ)なSFホラー映画として作られていました。

 しかしジェームズ・キャメロン監督は、その方向性を大きくシフトチェンジします。原題の『ALIENS』が指し示す通り、大量のエイリアンが登場して、マシンガンが乱射され、モノが爆発するという、景気のいいアクション映画に仕立ててしまったのです。

『エイリアン2』が「史上最高の続編映画」第1位に輝くほど高い評価を受けたのは、第1作のアプローチを大きく変え、自分の得意分野に引き込むことで、偉大なるフランチャイズに新しい可能性を提示したことにあるのではないでしょうか。