豆はトウモロコシの悲鳴を聞いている / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,Canva,ナゾロジー編集
ニュースで各地の台風被害を耳にすると、自分たちの対策を見直すかもしれません。
近所で誰かの悲鳴が上がると、それを聞く私たちはとっさに身構えます。
こうした傾向は、人間だけでなく植物にもあるようです。
最近、スイスのヌーシャテル大学(University of Neuchatel)に所属するパトリック・グロフティザ氏ら研究チームは、メキシコの混作(2種類以上の作物を同じ畑で同時に栽培する)にて、トウモロコシの悲鳴をマメが聞いていることを報告しました。
マメ科植物は、トウモロコシが害虫に襲われる時に放出する揮発性物質を感知し、それに応じて、害虫から自分たちを守るアリやスズメバチを引き寄せていると判明したのです。
研究の詳細は、アメリカ生態学会の年次総会「2024 ESA Annual Meeting」にて発表され、今後論文にも掲載される予定です。
目次
メキシコの伝統農法「ミルパ」の秘密トウモロコシは悲鳴を上げて助けを呼んでいるマメはトウモロコシの悲鳴を聞いている
メキシコの伝統農法「ミルパ」の秘密
メキシコや中央アメリカのミルパ農法 / Credit:Wikipedia Commons_ミルパ
メキシコや中央アメリカの一部の農家は、何千もの間、「ミルパ(Milpa)」と呼ばれる伝統農法を行ってきました。
これは、トウモロコシ、マメ(インゲン豆)、カボチャの3つを同じ畑で栽培することであり、そうすることで収穫量が増えると考えられてきました。
この農法で収穫量が上がるメカニズムが全て解明されたわけではありませんが、これまでの研究により、様々なメリットが明らかになっています。
例えば、トウモロコシの生育には窒素を多く必要としますが、連作すると土壌の窒素が少なくなり収穫量が落ちます。
しかし、近くにマメを植えると、マメが空気中の窒素分子を変換し、土壌に窒素を固定するため、トウモロコシの需要を満たしてくれます。
またカボチャのつると葉が地面を覆うことで、光を遮って雑草の成長をいくらか抑制したり、厚くて広い葉によって土壌を湿らすための水分を保持しやすくなったりします。
さらにマメは、背の高いトウモロコシの茎を登って、太陽を浴びる機会を得ています。
このように、既に判明している要素だけでも、伝統農法「ミルパ」が効果的であることが分かります。
そして今回、グロフティザ氏らの新しい研究では、この3種の相互関係のうち、トウモロコシとマメにおける新たなメリットを発見することができました。
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トウモロコシは悲鳴を上げて助けを呼んでいる
研究チームは最初、実験用の畑で、「ミルパ農法」と「3種類の作物を別々に栽培すること」を比較しました。
その結果、ミルパ農法の方が、害虫からの被害が少ないことが明らかになりました。
トウモロコシは悲鳴を上げている / Credit:Canva
この点をさらに詳しく調べるため、研究チームは、実験室でトウモロコシを栽培し、穀物を食べる害虫「アワヨトウ(学名:Mythimna unipuncta)」の幼虫に襲わせました。
そして、その際にトウモロコシから放出される揮発性物質を収集しました。
この揮発性物質の存在は昔から知られており、30種類の物質が含まれているようです。
これらの成分には、害虫アワヨトウに寄生するハチ「カリヤコマユバチ」を引き寄せる効果があります。
この寄生バチに卵を産み付けられたアワヨトウは、孵化した幼虫たちに内部から食べられてしまいます。
つまり、トウモロコシは自分が害虫に襲われると悲鳴を上げ、自分を守るための兵士を呼ぶことができるのです。
このことは以前から知られていましたが、研究チームは、このトウモロコシの悲鳴が近くに植えられているマメにも影響を与えることを新しく発見しました。