秋の運動会シーズンが始まる。暑すぎる初夏ではなく、秋に開催する学校も増えている。前編で紹介したように、コロナ禍や気候変動の影響もあり、学校の運動会は縮小されつつある。保護者の中には、縮小されて嬉しいという声と、以前のように盛大な運動会を求める声がある。背景には、どんな事情があるのだろうか。後編では、現役の教員の“ホンネ”を紹介する。
コロナ禍以前の形に戻す予定はなし
40代女性の小学校教員は、「コロナ禍以降、勤務する学校の運動会は、団体競技、徒競走、リレーに種目を絞って実施しています」と語る。
徒競走は学年ごとに行われるので、待ち時間が長くなる。熱中症対策のため、他の学年がやっている時間は、クーラーの効いた教室で水分補給をしながら休憩することになっている。
得点をつける/つけない、順位を決める/決めないに関しては、コロナ禍以前からたびたび職員会議で議論されてきた。
「運動会の内容よりも自分が勝ったか負けたかの方が記憶に残ってしまい、本来の目的から外れる」「運動会が終わってからも、自分の順位にコンプレックスを感じ、引きずってしまう児童がいる」などの意見が出た。
「得点をつけなくなった理由には、時間の短縮や教員の負担軽減もありますが、以前からこのような意見があったことも大きいです。私の勤める学校では、もともと5月に運動会を開催していたのですが、1年生の担任をしたとき、入学して間もない児童に練習をさせるのはかなり大変でした。
練習が負担になり、泣き出す児童も毎年いました。開会式や閉会式がなくなり、競技の種目数が減ったことにより、その負担はかなり軽くなりました」(同前)
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教員は「運動会は今の形がベスト」
30代男性の小学校教員は「学校の運動会は組分けもなく、得点もつけず、種目もラジオ体操・ダンス・徒競走の3つだけです」という。
コロナ禍以降、運動会が午前中のみの開催となったため、内容を精選するようになった。職員会議で話し合いを重ね、児童にとって教育的効果が高く安全にできるものを実施している。
この教員は「正直、この形になってすごく助かっています」と明かす。
「コロナ禍以前は、担当の先生がたに負担が偏っていました。種目数が多いと当然、準備に時間がかかります。以前は担当の先生がたを中心に2週間以上前から準備をしていました。
しかし、現在は前日に全教員で一斉に準備をするので、だいたい1〜2時間くらいで終わります。また、平日の午前中のみの開催になったことから、当日の午後を片付け作業に充てることができます」
午前中だけで、児童の弁当持参がなくなったのもよかった。以前は、事情があり家族が運動会に来られない児童だけ、教室で弁当を食べることになっていた。他の児童がテントで家族と一緒に弁当を食べる中、かわいそうだなと感じていた。
さらに、縮小の背景として、教員の働き方改革とともに「学習時間の確保」があるという。
「運動会をコロナ禍以前の形に戻さないのは、教師や親の負担を軽減するためですが、それ以上に授業時数確保のためでもあります。練習時間が長くなってしまうと、他の授業を削ることになるので、学習に影響が出かねません。子どもたちの学習のためにも、運動会は今の形がベストだと思います」(同前)