豪州を破ったバーレーンの攻略法。カギを握る“後ろの選手の攻撃サポート”。ボランチの飛び出し、CBの外回りオーバーラップなど【日本代表】

 森保ジャパンが中国に7-0と大勝して、ワールドカップのアジア最終予選史上でも最高のスタートを切った裏側で、次の対戦相手であるバーレーンがアウェーでオーストラリアを1-0と撃破。決勝点は相手のオウンゴールだったが、日本にとっても決して簡単な相手ではないことを印象付けた。

 半年前にアジアカップのラウンド16で戦い、3-1で勝利したが、指揮官がアルゼンチン出身のピッツィ前監督からボスニア・ヘルツェゴビナのタライッチ監督に交代し、基本システムも4-1-4-1から4-4-2にシフトしている。

 つまりシステムは前半の中国と同じだが、サイド攻撃に対しては4バックがスライドするのではなく、サイドハーフから一枚落ちてマンツーマン気味に対応する癖のある守り方をするため、もし日本が中国戦と同じ3バックで、攻撃時に5トップのような形を取っても、中国のような混乱はしてくれないと予想できる。

 しかも、局面での1対1はオーストラリア戦を見る限り、中国よりもタイトなので、簡単には剥がしにくいだろう。

 そうしたバーレーンの守備戦術をベースに攻略法をイメージすると、後ろの選手の攻撃サポートが鍵を握る。日本が中国戦と同じ3-4-2-1(3-2-4-1という表記もある)を継続する場合は、1トップが2枚のセンターバックを背負うことで、2シャドーに対するマークが浮きやすい状況をできるだけキープしたい。

 そうすることで、バーレーンが日本のアタッカー陣に対して可変な5バックで対応してきても、最終ラインにギャップを作れない分、2シャドーの二人は前向きにボールを持ちやすくなる。
 
 森保監督が2シャドーに誰を起用してくるかは不明だが、仮に中国戦と同じ久保建英と南野拓実だと想定するなら、二人がバーレーンの中盤と最終ラインの間をうまく使って、起点を作る役割が求められる。

 もちろん、そのためにはビルドアップの段階で、最終ラインとボランチの二人がバーレーンのプレッシャーをある程度、吸収して間延びを誘いたい。バーレーンは日本がブロックの手前でボールを持っている限り、そうした間延びは見せてくれない。ただし、サイドを狙う攻撃に対してサイドハーフの一枚は最終ラインに落ちる動きを見せるので、反対側から持ち上がれるスペースが生じやすい。

 たとえば一度、右のセンターバックがウイングバックに付けて、同サイドから縦に差す狙いを見せたところから、ボランチが斜め後ろに戻すパスを受けて、反対側にボールを振って行く。そこで左センターバックが空いたスペースを持ち上がることで、バーレーンの中盤はそこに対応せざるを得なくなり、2シャドーの南野と久保に対する前後のプレッシャーが緩くなる。

 そこで彼らに当てて、瞬間的に左ウイングバックがインに走り込んでワイドで絡んでもいいし、中央の状況次第では2シャドーと1トップでフィニッシュを完結させてもいい。

 ただ、そこでバーレーンのさらなる混乱を生み出す意味で、ボランチの飛び出しが得点の可能性を高める要素になるのではないか。中国戦のセットであれば、主に守田英正の役割になってきそうだが、流れ次第では遠藤航が前に出て行ってもいい。

 もう1つ有効なのは、センターバックの外回りのオーバーラップだろう。ウイングバックがインにポジションを取る場合、バーレーンのサイドバックは絞り気味にマークしてくるので、外側にはスペースが生じる。

 3バックの4バックにない強みは、センターバックがワイドから攻撃参加しやすいことだが、中国戦では左が三笘薫、右は堂安律と右シャドーの久保が入れ替わりながら外を効果的に使っており、あまりセンターバックが外側を回る必要がなかった。

 一度、三笘が中にポジションを取った状況で町田浩樹が上がり、クロスに持ち込んだシーンはあったが、バーレーン戦ではそうした形がより有効になりそうだ。

 町田はバーレーン戦のコンビが中村敬斗になる可能性も含めて「中国戦、僕がクロスを上げた場面とかは薫が相手を引き入ってきてくれた。そこは攻撃に比重かけられることだと思う」とイメージをしている。

【画像】日本代表の中国戦出場16選手&監督の採点・寸評を一挙紹介。5人が最高評価の7点。MOMは3点に関与した20番
 そうしたいくつかの狙いをシンプルに実行して、一発で仕留められたら苦労はないが、似た狙いの攻撃を別ルートからも行なうことで、バーレーン側が脅威に感じる攻撃を多く繰り出して、守備組織に穴が空く状況を作っていけば、必ず得点チャンスは生まれるだろう。

 そのためにも日本がボールを失ったところから、いかに高い位置で即時奪回して、短い時間に二度、三度と危険な攻撃を繰り出していけるかが大事になる。ただし、日本より気温が暑く、ボールを握る時間が多くても、ずっと縦方向の攻撃を続けるのは日本代表の選手であっても難しい。

 やはり積極的にゴールを狙う時間帯と後ろでボールを動かして、じっくり相手の守備を揺さぶる時間帯のメリハリを付けていきたい。幸い、第二次森保ジャパンは3バックでも4バックでも、状況に応じて可変しながらゲームを進められる柔軟なチームに進化してきている。じっくり攻める時は左右のウイングバックが同時に上がっている必要はなく、下がり目でビルドアップに関わっても問題ない。

 ただ、1つのことをやり続けるというよりも、時間帯に応じたゲームコントロールの部分でアドバンテージを取れるのは日本の強みだろう。
 
 そうは言っても、久保も“個人的な予想”と前置きしながら「前から来るんじゃないかなと個人的には思っていて。相手が日本とはいえ、オーストラリアにアウェーで勝っているので。僕が相手の監督だったら、後がないわけではないし、ホームの観客の前で恥ずかしい試合を見せられないし、前から行こうよという話はすると思う。結構激しく、前からくるんじゃないかな」と語るように、バーレーンもホームの利と前線のフィジカル的な強さを押し出して、日本が高い位置で試合をやりきれない状況は作ってくるはず。

 局面のマンツーマンをベースとしていることを考えれば、日本のシステムに噛み合わせて、バーレーンも3バックでスタートしてくる可能性も想定しておく必要があるだろう。

 GKの鈴木彩艶は「次のゲームはもう明らかにクロスがたくさん来ると思ってますし、シュートももっと来ると思うので。1回、中国戦っていうところは自分の中で切り捨てて、本当にゼロから強い相手と戦うメンタリティで向かっていきたい」と気を引き締める。

 特にセットプレーではアル・アスワドという左利きの良質なキッカーがおり、ターゲットマンも揃っているだけに、なるべく危険な位置のFKやCKを与えない守備というのも継続して、攻勢をかける時間帯にゴールを奪い切れるようにしていきたい。

取材・文●河治良幸

【PHOTO】キュートな新ユニ姿を披露!日本代表戦中継に華を添えた影山優佳を特集!

【記事】バーレーン戦で2シャドーの人選は? 先発濃厚の鎌田大地、もう1人は堂安律? それとも浅野拓磨か【日本代表】

【記事】「僕が相手の監督だったら、日本が相手でも…」久保建英が豪州撃破のバーレーンを警戒! 中国に7発大勝も「気を引き締める材料は必要ない」【現地発】