スタジオジブリの名作アニメ『もののけ姫』は、公開から25年以上経った今も、多くのファンに愛される作品です。その『もののけ姫』には、映画では語られなかった意外な真実、浦設定が存在しています。
サンは自分のことどう思っていた? 『もののけ姫』より (C)1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND
【画像】え…っ? 「コダマ」って後でこうなるの? こちらが宮崎監督の語る「別作品のキャラ」です
意外なキャラがトトロに?
1997年に公開され、スタジオジブリの代表作のひとつとして知られる『もののけ姫』には、映画を観ただけでは分からない裏話がたくさんあります。映画公開後かなり経ってから語られた、意外な監督の見解や演出意図もありました。この記事では、映画では語られることがない、「裏話」について振り返ります。
『もののけ姫』に登場する印象的なキャラクターといえば、森の精霊である「コダマ」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。コダマは、小さくて白い、まるで人間の子供のようなフォルムと、なんともいえない不思議な表情が特徴的なキャラです。
1998年に出版された書籍『「もののけ姫」はこうして生まれた。』(徳間書店)には、本編が終わったあとのアフターストーリーが記されていました。物語の終盤、タタラ場の指導者である「エボシ御前」に撃たれた「シシ神」が怒り狂い、森を破壊したことにより、コダマたちは全滅状態になってしまいます。しかし、ラストシーンでは、生き残ったのか、あるいは新しく生まれたのか、1匹のコダマがこちらに歩いてくる姿が描かれていました。
本書では、このコダマはやがて成長し、のちに「トトロ」に変化したのではないか、という宮崎駿監督の「見解」が掲載されていました。実は、作中でコダマがたくさん描かれた絵を見た宮崎監督は、そのなかに、大昔から森で生きていたはずのトトロがいないことを気に病んでいたそうです。『「もののけ姫」はこうして生まれた。』の著者である浦谷年良さんは「(宮崎監督は)多分、このコダマが後々トトロに進化したという論理で自らの決着をつけたのである」と推察していました。
ちなみに、ラストシーンにコダマが現れるという展開は、宮崎監督のアイディアではなく、アニメーターの二木真希子さんが希望したものだそうです。
また、『もののけ姫』のヒロインで、人間でありながら山犬に育てられた少女「サン」についても、切ない裏話があります。日本テレビ系「金曜ロードショー」の公式X(旧:Twitter)によれば、サンと、主人公である「アシタカ」のとあるシーンには、サンの本音が隠されているのだそうです。
作中、サンがアシタカに「美しい」と言われる場面があります。その言葉を聞いたサンは驚いた表情を見せるのですが、このリアクションは、サンが「自分のことを醜いと思っている」という心理によるものだと解説されていました。
宮崎監督はサンの育ての親である「モロの君」とサンの関係について、「多分モロのことだからあけすけにお前は醜いと言ってると思うんですね。そういうお母さんですから」とコメントしています。そのサンが、アシタカに「美しい」と言われたことで驚くこの短い場面は、人知れず苦悩するサンの本音を表しているのかもしれません。
そしてサンが心から憎んでいるのが、タタラ場の指導者、つまり森を破壊する人間たちのリーダーである「エボシ御前」です。彼女は先述の通り、森を支配するシシ神の首を撃ったり、巨大なイノシシである「ナゴの守」を撃ち「タタリ神」にしてしまったりと、神をも恐れない人間として描かれています。
しかし一方では、彼女は身売りされた女性や重病人を引き取り、自立させるために仕事を与えるなど、社会的に弱い立場にいる人が生きていけるように尽力する人物でもありました。このように、複雑なキャラクターであるエボシ御前には、壮絶な過去があります。
前述の『「もののけ姫」はこうして生まれた。』では、エボシ御前はかつて海外に売り飛ばされた過去を持っている、と記されています。そして倭寇(海賊)の頭目の妻になりますが、最終的には夫を殺し、金品と石火矢の技術を手に入れて日本に帰ってきたというのです。このような過去を持っているからこそ、守るべきタタラ場の人たちのためなら、時に冷酷な判断を下せるのかもしれません。
このように、映画では語られることのなかった多くの裏設定が、作品に深みを与えているのかもしれません。これらの裏設定を知ったあとで『もののけ姫』を見返すと、また違った味わいで楽しめるのではないでしょうか。