ロードサイド型ファミレスは「資さんうどん」になる可能性が大
すかいらーくは2027年度までの中期事業計画の中で、成長戦略の一つに「M&Aの推進」を掲げていた。3年間で3~5件程度実施するというものだ。資さんうどんの買収はこの一つに該当することになる。
資さんは、幹線道路沿いに出店するロードサイド型と繁華街のビルイン型を得意としている。すかいらーくはロードサイド型のファミリーレストランが多く、転換が必要なエリアに新ブランドが加わる意味は大きい。
すかいらーくには、ガストとジョナサンのほかに、バーミヤンやしゃぶ葉、夢庵などの業態があるが、どれもターゲットはファミリー層で顧客の食い合いが起こりやすい。資さんも子ども用のメニューを用意するなど幅広い層をカバーするが、さっと食べられる麺類となればドライバーや建設作業員などの移動が多い労働者の利用にも期待ができる。
さらには資さんには固定ファンが多く、顧客の8割は月に何度も足を運ぶ常連客だという。労働者層との相性もいい。
将棋の藤井聡太竜王・名人は、2023年10月26日の竜王戦で、勝負メシに資さんうどんの「肉ごぼ天うどん」を選んで話題となった。その前に、北九州市などが参加する実行委員会は、食の魅力を全国に発信しようと市内の事業者を対象に勝負メシを公募している。その中から選ばれたのが、資さんのメニューだったわけだ。つまり、市を代表する食の一つに挙がるほど、地元では親しまれていることになるので、味はお墨つきというわけだ。
東京では、2024年7月13日から3日間限定で神田にポップアップレストランをオープンさせ、400人以上の行列ができた。そして今冬には、都内1号店を両国に出店することが正式決定。期間限定の店舗で感触を試し、底堅い人気を確信して出店を決めたのだろう。
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出汁と麺の勝負の行方は?
資さんは2018年に投資ファンドのユニゾン・キャピタルに買収されている。その数年前に、事業承継を背景として福岡銀行傘下の投資ファンドである福岡キャピタルパートナーズが資さんを取得していた。
ユニゾンといえば、回転ずしの「あきんど スシロー」を国内トップに引き上げた実力者だ。
ユニゾンが買収した年の2018年に、佐藤崇史氏が資さんの社長に就任した。ボストン・コンサルティング・グループを経て、ファーストリテイリングの経営変革を推し進めた経歴を持つ人物だ。
資さんの2016年8月期の売上高は70億円あまりだったが、直近の売上高は150億円を超える見込みだ。投資ファンドとプロ経営者のもとで急成長を遂げ、今回のすかいらーくの買収で全国区のブランドとなる土台を一気に築き上げた。
ユニゾンが全株を手放していることからも、240億円という金額は納得できるものだったのだろう。
今後の注目のポイントは、丸亀製麺などのライバルにいかにして差をつけるかだ。
資さんは、鯖や昆布などからとった出汁と、100種類以上というメニューの豊富さが最大の特徴。特に出汁へのこだわりは強い。麺をセールスポイントとする、丸亀製麺と真っ向勝負を仕掛けることになるのではないだろうか。
文/不破 聡