仮に死ぬのも楽ではない?


仮死状態のクマムシの寿命が保存されるという説は「眠りの森の美女」仮説として知られています / Credit:Canva . ナゾロジー

今回の研究により、クマムシは凍結状態にあるときには寿命を消費しないことが示されました。

研究者たちも「凍っているときのクマムシは眠れる森の美女のように体内時計を止めている」と述べています。

ただ全ての凍結が同じような結果をもたらすわけではないようです。

今回の研究ではクマムシにとって理想的な凍結環境が整えられていましたが、凍結まで早すぎたり逆に時間がかかり過ぎる場合などでは、クマムシは仮死状態に移行するのに失敗して本当に死んでしまうことが知られています。

また研究では凍結と凍結の間に十分なエサを食べる時間が与えられていましたが、エサが不足している場合では、仮死状態になるのに失敗して死んでしまうことがありました。

実際、仮死状態の前後において、クマムシの体内でエネルギーを貯蓄している細胞(人間の脂肪細胞のようなもの)が大きく縮小していることも確認されています。

このことから研究者たちは、クマムシにとって仮死状態への移行はかなりのエネルギーを使うものだと結論しました。

参考文献

Sleeping Beauty in an ice cube: How tardigrades survive freezing temperatures
https://www.uni-stuttgart.de/en/university/news/all/Sleeping-Beauty-in-an-ice-cube-How-tardigrades-survive-freezing-temperatures/

元論文

Reduced ageing in the frozen state in the tardigrade Milnesium inceptum (Eutardigrada: Apochela)
https://zslpublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jzo.13018

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。
大学で研究生活を送ること10年と少し。
小説家としての活動履歴あり。
専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。
日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。
夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。