日本が旅行先に選ばれる最大の理由
コロナ前、2019年との為替レートを確認する。1米ドルは同年3月の約111円から、159円(2024年6月)となった。30.2%の円安である。アメリカからの旅行者は、これまで1110円の商品を10ドルで買っていたが、今なら6ドル98セント程度で買える。
しかも、同じものを(もしあればだが)アメリカで買おうとすると、20~30ドル程度する可能性が高い。もし、たくさんあっても困らない商品なら、1個で我慢していたものを3~4個は買える。交通費や宿泊費も同様である。
為替レートの変化は、米ドルだけでなく、ユーロが同時期の比較で125~126円→170円、シンガポールドルが80円→118円、韓国ウォンが0.10円→0.11~0.12円と、韓国は少し穏やかだが、他の通貨でも同様の円安を記録している。
国際的な価格比較でよく引き合いに出されるビッグマック指数(世界規模で展開しているマクドナルドのビッグマックの価格を比較することで、各国の物価や経済力を知るための指標)では、2024年1月の価格が日本は3.04米ドルとなっている。これは韓国4.11ドル、タイ3.78ドルに大きく水をあけられている。日本に近いのはベトナムの3.01ドルである。
中国は日本より高く(3.47ドル)、永らく欧州の最貧国グループとして知られていたルーマニアでも日本より高い(3.42ドル)。中東諸国やラテンアメリカの国々よりもマックの商品が安く食べられるのは、ここで暮らす私たちには一見朗報に聞こえる。しかし、私たちは日本の物価に慣れきっていて、ビッグマックを「安い!」と思う人はあまりいない。
いまや日本は、欧米はもちろん、東南アジア、中東、ラテンアメリカよりも「安い」国に成り下がってしまっている。必ずしも日本が魅力的だからインバウンドで賑わっているわけではなく、もし今度為替レートが大きく円高に振れたらどうなるのか。様々なシミュレーションをしておく必要がある。
ちなみにこのビッグマック指数は、ある時点での価格に基づくものなので、実際にはさらに格差が開いているケースもある。
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日本の100円ショップはオーストラリアでは300円
2024年3月にオーストラリアを訪れたとき、実際にマクドナルドの店頭を覗いてみた。第2の都市メルボルンの中心街にある店舗では、ビッグマック単品が12.85豪ドルという表示であった。
この時の豪日の為替レートが、1豪ドル97~98円だったので、日本円でおよそ1285円ということになる。
帰国して早速近所のマクドナルドに出かけて価格を確かめてみると480円(税込み)であった。オーストラリアのビッグマックは、円安の状況でおよそ2.7倍。ビッグマック指数のデータでは、オーストラリア770円、日本450円となっているので1.71倍。実際には、データよりもさらに大きな物価の差が生じているのである。
メルボルンでは「DAISO JAPAN」という店にも足を運んだ。そう、100円ショップの代表格のダイソーである。ここでは基本(最低)価格が3豪ドルであった。約300円である。やはり3倍近い価格差があるようだ。この感覚でオーストラリア人が日本に来たらさぞかし安く感じるであろう。
文/佐滝剛弘