1万回の圧力テストに合格!ただし洗剤が苦手


1万回の圧力テストに合格 / Credit:Rong Yin(NCSU)et al., Device(2024)

新しく考案されたセンサーがいくらか機能することは分かりましたが、気になるのは耐久性や正確性です。

耐久性に関しては、1万回以上の圧力テストをクリアし、問題なく機能することが分かりました。

また8000回にも及ぶ摩耗試験(専用の機械で試験布と摩擦布をこすり合わせる試験)の後でも、性能が劣化することはありませんでした。

ただし、衣服に必須な洗濯に関しては課題が残りそうです。

水洗いの後は特に大きな変化はありませんでしたが、洗剤で洗った後には、出力が著しく低下しました。


刺繡ベースのタッチセンサーは、界面活性剤で出力が低下する / Credit:Canva

これは、洗剤に含まれる柔軟剤成分(界面活性剤)が糸に付着し、摩擦帯電の特性を弱めるからだと考えられています。

さらに、衣服の一部がセンサーの役割を果たすため、体を動かすことで意図しない入力がもたらされる可能性があります。

加えて、センサーに対する押し方の違いや、温度や湿度などの環境要因によっても、正しく入力されないケースが出てくるでしょう。

研究チームによると、機械学習を用いることでそのような誤作動を減らすことができ、正確性を高められるようです。

もちろん、この研究は初期段階にあり、製品化するためにはさらなる実験や調整が必要です。

それでもこのアイデアは、「自分が普段着ている服でスマートグラスを操作したりゲームをプレイしたりする」という「新しいウェアラブルデバイス」の可能性を秘めています。

【編集注 2024.4.23 17:00】
一部の解説文を加筆しました。

参考文献

NC State Researchers Use Machine Learning To Create a Fabric-Based Touch Sensor
https://news.ncsu.edu/2024/04/nc-state-researchers-use-machine-learning-to-create-a-fabric-based-touch-sensor/

元論文

A clickable embroidered triboelectric sensor for smart fabric
https://doi.org/10.1016/j.device.2024.100355

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。