スタジオジブリの名作『魔女の宅急便』は、13歳の魔女「キキ」の成長物語です。映画では個性豊かなキャラクターたちが物語に彩りを添えていますが、それぞれのキャラクターには、知られざる「裏話」があるのをご存知でしょうか。



画像は雨のなか飛ぶキキ (C) 1989 Eiko Kadono/Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, N

【画像】え…っ? 全然印象違う… こちらが17歳、19歳になったキキです(3枚)

『魔女の宅急便』のエンディングには、意外な案も?

 1989年に公開されたスタジオジブリの映画『魔女の宅急便』(原作:角野栄子)では、13歳の女の子「キキ」が、一人前の魔女になるために親元を離れ、成長していくストーリーが描かれています。その本作には、キキをとりまく個性的なキャラクターたちが多く登場しており、彼らには映画を見ただけでは分からない「裏話」が存在しました。

 故郷を旅立ったキキは、海の見える大きな街で魔女の修行をすることを決めます。そこでキキが下宿することになるのが、「グーチョキパン屋」です。そこのおかみさんである「おソノ(通称:おソノさん)」は、キキの理解者のひとりでした。

 26歳という若さでパン屋を切り盛りし、明るくて親切なおソノさんに関して、『魔女の宅急便』の劇場パンフレットには、おソノさんが「青春時代にはそれなりにツッパった経験を持つ」人物だと書かれています。また、2013年に刊行された書籍『ジブリの教科書5 魔女の宅急便』でも、彼女に関して26歳にしてはしっかり者であることが書かれており、スタッフの意見として「もしかしたらゾク(暴走族)だったのかも」とまで記されていました。

 具体的にどんな過去があったのかは分かりませんが、エンディングでは「(赤ちゃんを産んだ後のおソノさんが)バイクに乗る」場面の案もあったそうです。

 また、主人公であるキキの声を担当した、声優の高山みなみさんについても、驚きのエピソードがありました。『ジブリの教科書5 魔女の宅急便』によれば、高山さんはもともとキキに影響を与える画家「ウルスラ」役の方の候補だったのです。

 しかし、制作陣は肝心のキキ役を決めるのに苦戦していました。宮崎駿監督の提案で高山さんにキキのセリフを録音してもらったところ、スタッフたちは「アッ、この声でイケる」と感じたそうです。そこで、高山さんはそのままキキ役に任命されます。ウルスラの役は、一度別の人に決まったものの、高山さんがキキとウルスラの両方を演じても不自然ではなかったため、最終的には高山さんがひとり2役を演じることになりました。

 また、キキといえば、大きな赤いリボンに真っ黒なワンピースが印象的、という人も多いのではないでしょうか。しかし、キキは最初からこの格好をしていたわけではありません。故郷を旅立ち魔女修行を始める前には黒い服は来ておらず、他の女の子と同じような格好をしています。原作小説の表紙に描いてある通り、キキが黒い服をまとうのは元々あった設定ですが、『ジブリの教科書5 魔女の宅急便』のなかでは、魔女の修行をするキキがどうして黒い服を着ているのか、宮崎監督が「自分なりに考えた」その理由について言及していました。

 宮崎監督いわく、「黒い服は、もっともそまつな服」を表し、魔女の修行というのは「いちばんそまつな服を着て、着かざったりしないで、ありのままの自分の姿で、自分の世界を見つけに行く」ということだそうです。キキが黒い服を着ているのは、やはり単なるファッションではなく、魔女の修行の一環なのでしょう。

 このように、『魔女の宅急便』には数々の裏話が存在しています。これらの話を知っていれば、よりいっそう作品を楽しめるかもしれません。