『烈火の炎』について、「『幽遊白書』のパクリ」だという意見が見られます。両作品を比較してみると、確かに「暗黒武術会」と「裏武闘殺陣」の設定、飛影と紅麗の能力などに類似した点がありますが、むしろ似ているのは「そこだけ」でした。
『烈火の炎』第1巻 著:安西信行(小学館)
【画像】なにこれ、絵画? こちらは美しすぎる『烈火の炎』最終巻です
パクリ疑惑にモノ申す!
マンガ『烈火の炎』(作:安西信行)は、1995年から2002年までの7年間「週刊少年サンデー」(小学館)にて連載された作品です。腕から炎を出す不思議な能力を持つ主人公「花菱烈火」が、治癒の力を持つ少女「佐古下柳」を「君主」と定め、彼女を狙う組織と戦います。
1997年にはTVアニメも放送されたものの、その裏で「とある人気少年マンガ」を彷彿とさせる……いわゆる「パクリ」だとささやかれていたことをご存じでしょうか?
そのマンガとは、1990年から1994年にかけて「週刊少年ジャンプ」(集英社)にて連載されていた『幽☆遊☆白書』(作:冨樫義博)です。なぜそういった疑惑が出たのか、作品を比較してみました。
まずは、ストーリーについてです。共通点として、両作品ともに「トーナメント形式の戦い」が開催されます。『幽遊白書』は「暗黒武術会」、『烈火の炎』は「裏武闘殺陣」といい、どちらも特殊能力(異能)を持つキャラが5人でチームを組み、その能力を駆使して戦うというルールのほか、バトルリングが円形、周りを観客が取り囲んでいる、審判が女性キャラクターという点が共通しています。
次に、キャラクター性です。どちらも熱血主人公であることをはじめ、主人公のケンカ仲間でありともに戦う良きライバル「桑原和真」&「石島土門」、クールキャラの「蔵馬」&「水鏡凍季也」、炎を操る能力+暗い過去を持つ「飛影」&「紅麗」など、主人公との関係性や設定が類似していると言われています。
ふたつの類似点を挙げてみましたが、特に「パクリ」だと言われているのが「暗黒武術会」と「裏武闘殺陣」の方です。子供の頃にどちらの作品も読んでいて、確かに「ルールが似ているな」と思った瞬間が筆者にもありました。しかし、改めて作品を見てみると、「たったそれだけ」なのです。
むしろ、パクリと言われる要因となった「トーナメント戦」について着目してしまうと、『幽遊白書』発表前作品として『キン肉マン』の「宇宙超人タッグトーナメント」や『ドラゴンボール』の「天下一武道会」、『魁!!男塾』の「天挑五輪大武會」などがありましたし、少年マンガではそう珍しくない設定だったように思います。
いまとなっては『シャーマンキング』の「シャーマンファイト」、『NARUTO-ナルト-』の中忍試験本戦など、少年バトルマンガの「あるある展開」にまでなってきているのではないでしょうか。
同様に、キャラクター性に関してもそうです。熱血主人公にライバル、クールキャラ、卑劣な敵といった点については、そういったキャラクターが登場する作品は挙げるとキリがありません。
一方、似たような描写になってしまった理由も挙げるとすると、安西先生が冨樫先生のファンなのだそうです。以前に発行された企画同人誌内にて、安西先生が「好きなジャンプ漫画」について聞かれ、「冨樫さんのマンガ全部」と答えています。その愛ゆえに、似通ってしまった点があったのかもしれません。
好きなマンガで『烈火の炎』を挙げると、いまだに「『幽遊白書』のパクリじゃん」と言う人もいます。それで「どこが?」と聞くと、大半が「暗黒武術会と裏武闘殺陣が」と答えるのです。
むしろ『烈火の炎』はそこからが本番といっても良いでしょう。後半戦に入ってからの怒涛の展開が見どころで、最後にかけての伏線回収、特に『烈火の炎』というタイトル回収は素晴らしく、何度見ても泣いてしまいます。よく話題になる「絵柄」についても、後半にかけてとても綺麗になっていき、安西先生の努力と成長を感じられます。
もし「パクリ」という情報に踊らされて作品を見ていない人がいたら、いまからでも遅くありません。『烈火の炎』の魅力あふれるストーリーとキャラクターたちに、きっと夢中になることでしょう。