背後の人や物を透明にする透明シールド / Credit:Invisiblity Shield Co(Kickstarter)_A Real Working INVISIBILITY SHIELD(2022)

「透明マント」や「透明シールド」はフィクションの世界で頻繁に登場します。

それらの実現を夢見て、これまでにも「透明シールドのようなもの」はいくつか開発されてきました。

しかし、それらはどれも技術的に完成度が低く、一時的に話題を集めただけだったようです。

そして最近、イギリスのスタートアップ企業「Invisiblity Shield Co」は、”透明シールドもどき”のイメージを払拭するような、完成度の高いステルスシールドを発表しました。

現在、クラウドファンディングサービス「Kickstarter」で支援募集中です。

目次

特殊レンズが「光を曲げて」物体を透明化

特殊レンズが「光を曲げて」物体を透明化


シールド背後の人や物だけ消すことが可能 / Credit:Invisiblity Shield Co(YouTube)_A Real Working INVISIBILITY SHIELD(2022)

開発されたステルスシールドは、その後ろの人や物が存在しないかのように「見えなく」します。

もちろん、不透明なただの板ではありません。

すりガラスのように若干ぼやけていますが、シールドを通しても背景の色や模様がしっかりと透けて見えるのです。

では、どのような仕組みで物体だけを消しているのでしょうか?


レンズが入射した光を屈折させる / Credit:Invisiblity Shield Co(Kickstarter)_A Real Working INVISIBILITY SHIELD(2022)

ステルスシールドには、光を屈折させる特殊レンズが利用されています。

この小さな特殊レンズが、入射した光を内部で反射または屈折させるのです。

そして角度や位置が計算された特殊レンズが複数配列されることで、1枚のステルスシールドがつくられます。

そのため、ステルスシールドの光の通し方は、通常の透明なガラスとはまったく異なります。

通常のガラスであれば、物体からの光(太陽光が物体に当たって反射した光)も背景の光も、ガラスをまっすぐ通過して観測者の目に届きます。


シールド背後の物体や人からの光は屈折して、観測者にほとんど届かない / Credit:Invisiblity Shield Co(Kickstarter)_A Real Working INVISIBILITY SHIELD(2022)

しかしステルスシールドの場合は、物体からの光が屈折・拡散し、観測者の目になるべく届かないようになっているのです。

つまり、観測者が見ている映像は、シールドのすぐ後ろ(物体)から届くほんの僅かな光と、もっと後ろの背景から届く膨大な光が混ざって合成されたものなのです。


階段などの背景が効果的 / Credit:Invisiblity Shield Co(Kickstarter)_A Real Working INVISIBILITY SHIELD(2022)

また開発チームによると、「特殊レンズの配列方向により、水平方向に同じパターンをもつ背景での利用が効果的」とのこと。

たとえば、草原や砂浜、空、壁、水平にひかれたライン、階段などが該当します。

さて開発チームは、自社の製品について「これまでで最高の透明シールド」と主張しています。

実際のところ、完全な透明シールドと言えるかは微妙なところですが、ステルスシールドとしての実用が可能でしょう。


まるでフィクションの世界のよう / Credit:Invisiblity Shield Co(Kickstarter)_A Real Working INVISIBILITY SHIELD(2022)

現在、数種のステルスシールドがあり、クラウドファンディングサービス「Kickstarter」の支援額に応じて入手可能。

スモールサイズ(310×210mm)は65ドル(約7700円)、フルサイズ(950×650mm)は394ドル(4万6800円)となっています。

フィクションの世界に一歩足を踏み入れたい方は、ぜひチェックしてみてください。

参考文献

A Real Working INVISIBILITY SHIELD
https://www.kickstarter.com/projects/invisibility-shield/invisibility-shield/

Harry Potter eat your heart out! Scientists develop an ‘invisibility shield’ that can hide objects by bending light
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-10622865/Scientists-develop-Harry-Potter-like-invisibility-cloak-hide-objects-bending-light.html

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。
他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。
趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。