こんなデカい恒星ブラックホールはどうやって生まれるのか?


Credit: canva

しかし、この貴重な発見は同時に大きな謎を提示しています。

これほど大きな恒星ブラックホールがどうやって形成されたのか、研究者たちにもわからないのです。

恒星ブラックホールはたいてい、元となる恒星が寿命を迎える中で大部分の質量を失ってしまうので、その後にできるブラックホールが太陽質量の30倍になることは考えられません。

その一方で研究者らは、あるひとつの仮説も立てています。

それは「ガイアBH3の元になった恒星が、水素やヘリウムより重い元素をほとんど含まない”金属不足の星”だったのではないか」というものです。

天文学では、水素やヘリウムより重い元素を指して「金属」と呼びます。

そして過去の研究によると、金属不足の星は一生の間に失われる質量が少なくなることがわかっているのです。

つまり、金属不足の星は寿命を迎えたときに巨大なブラックホールを作るための材料がまだ残っていることを意味します。

加えて、ガイアの観測データからはガイアBH3とその伴星がともに金属量に乏しいことが示唆されました。

これは研究者の仮説が正しいことを示しますが、この説を確かなものにするにはさらなる観測データが必要になるという。

今後、ガイアBH3の挙動を追うことで、巨大な恒星ブラックホールが誕生するシナリオの謎を解き明かせるかもしれません。

参考文献

Sleeping giant surprises Gaia scientists
https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Gaia/Sleeping_giant_surprises_Gaia_scientists

Most massive stellar black hole in our galaxy found
https://www.eso.org/public/news/eso2408/

元論文

Discovery of a dormant 33 solar-mass black hole in pre-release Gaia astrometry
https://doi.org/10.1051/0004-6361/202449763

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。
他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。
趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。