2024年夏アニメの『負けヒロインが多すぎる』では、恋に敗れたヒロインが注目されました。ほかのマンガ作品にも圧倒的に有利だといわれながらも、恋に敗れたヒロインもいます。彼女たちはどのような結末を迎えたのでしょうか。



内気な三玖だけどそこがいい? 『五等分の花嫁』4巻(講談社)

【画像】え…っ? 破壊力ヤバ! こちらが「ジムデートでのラフな格好」「白無垢姿」がかわいすぎる中野三玖さんです(4枚)

「思い出の女の子」が迎えた相反する結末

 2024年夏アニメでは特定の誰かに想いを寄せながらも、恋に破れてしまったヒロインに焦点を当てた作品『負けヒロインが多すぎる』が注目を集めています。これまでのマンガ作品のなかにも似たようなキャラは存在しており、ファンから圧倒的に有利だと予想されるも、最後は振られてしまったヒロインもいました。

 恋の行方は、「主人公の過去」も重要なポイントになることがよくあります。『五等分の花嫁』(著:春場ねぎ)の主人公である「上杉風太郎」には、小学生の頃に京都で出会った思い出の少女がいました。その正体は風太郎が家庭教師を務める五つ子の誰かであり、誰なのかを予想するファンが相次ぎます。

 真っ先に恋愛対決へ参戦した三女「中野三玖」は、奥手すぎて告白する勇気を持てませんでした。その間に次女「中野二乃」が風太郎に告白し、三玖は一歩先を越されてしまいます。

 一方、四女「中野四葉」はほかの姉妹を応援する立場をとり、長女「中野一花」を含めた3人で恋が争われるなか、三玖は二乃と並び最有力候補でした。しかし、学園祭の終わり際に選択を迫られた風太郎が選んだのは、のちに明らかになった思い出の少女の四葉です。

 とはいっても四葉が選ばれたのは、彼女が思い出の少女だったからではなく、彼女の存在が風太郎の助けになっていたからでした。三玖は恋愛に敗れましたが、内面的で引っ込み思案だった彼女が積極的な一面も見せるまでに成長します。

 最終的に恋愛レースから一歩引いた立場だったヒロインが選ばれることになり、三玖ファンは「物語の初期から風太郎への想いを胸に頑張ってきた姿を見ていたからこそ、三玖エンドも見たいって切実に考えてしまう」「やっぱり二乃か三玖のどっちかが選ばれて欲しかった… 」「三玖が推しだったので、三玖と風太郎と結ばれなかったから寂しかった…けど最後に三玖が笑って居たのでまあ良しとするしかないか 」と、推しの大逆転負けを悲しんでいました。公式人気投票で1位にもなっていたキャラだけに、特に残念がる人が多かったようです。

 反対に「思い出の少女」でありながら恋に敗れたのが、『ニセコイ』(著:古味直志)でした。主人公の「一条楽」は、幼い頃に女の子と「ザクシャ イン ラブ(愛を永遠に)」という約束をかわし、その証としてペンダントと開けるための鍵をふたりで分かち合います。

 楽は思い出のペンダントを大切にしながら育ち、クラスメイトの「小野寺小咲」に想いを寄せていました。しかしヤクザである実家の事情から楽は、もうひとりのヒロインでマフィアの娘である「桐崎千棘」と偽の恋人関係を結びます。

 小咲や千棘を含めて鍵を持つ複数のヒロインが現れるなかで、小咲は何度か楽に意を決して告白しようとしますが、両想いでありながらもことごとく失敗して、関係は進展しません。その状況のまま最終局面までもつれこみ、楽が行方をくらました千棘を追いかけるなか、ついに小咲の告白が果たされました。

 しかし、すでに楽の心が決まっていたために小咲は振られ、別れ際に手渡された鍵から楽は約束した女の子が小咲だったことを知ります。ヒロインたちの将来が描かれた最終回で小咲はパティシエとなり、楽と千棘の結婚式に向けて巨大なウェディングケーキを作るなど、楽との関係について吹っ切れた様子を見せていました。

 このようなラストに対し、読者からは「物語の伏線が小野寺エンドしかない状況で千棘エンドなのが納得いかない」「過去の気持ちより今に正直な千棘エンドで良かったと思う」など意見が分かれ、物議をかもしもました。



『政宗くんのリベンジ』8巻(一迅社)

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大逆転に次ぐ大逆転の決着

 上述の2作品とは違った意味で主人公の過去が影響してくるのが、『政宗くんのリベンジ』(作:竹岡葉月/画:Tiv)です。主人公の高校生「真壁政宗」は、小太りだった8年前の小学生時代に仲が良かった「安達垣愛姫」から「豚足」と呼ばれて見捨てられたことが、トラウマになっていました。その後、政宗は名字を変えて激やせし、愛姫を自分に惚れさせて最後はこっぴどく振る復讐を計画します。そして、彼はその性格や行いから「残虐姫」と呼ばれるようになった愛姫と、高校で再会しました。

 政宗は愛姫の世話役でパシリ同然の扱いに不満を持つ、「小岩井吉乃」と秘密の協力関係を結び、計画を進めるうちに吉乃を「師匠」と呼んで、尊敬するようになっていきます。しかし、吉乃こそかつて愛姫に扮して政宗を豚足と呼び、トラウマを植え付けた張本人でした。その後、誤解していたトラウマを解消した政宗は愛姫と付き合い始めますが、すれ違ったふたりの恋心は結果的に破局を迎えます。

 そして、実は政宗の復讐に協力するうちに彼へ恋心を抱いていた吉乃は、失恋をキッカケに実家に戻っていた政宗を追って告白を果たしました。しかし、愛姫を忘れられなかった政宗は吉乃を振り、自分が誤解で復讐計画を遂行していたことを愛姫に謝罪して、再度の告白で彼女と結ばれるのです。

 主人公にトラウマを植え付けた張本人ながら、計画を支えてきた吉乃を応援していたファンも多く、「推しが勝ったと思ったところから大どんでん返し」「吉乃が好きだから途中見るのツラかった」などの声も出ていました。

 ちなみに、大学生編『政宗くんのリベンジ -engagement-』では、政宗と愛姫の関係に再び危機が訪れます。北海道の畜産大学に通い、東京の政宗と離れた遠距離恋愛に悩んでいた愛姫を奮い立たせたのが、高校時代まで世話役として隣にいた吉乃でした。別の人生を送り始めたとはいえ、愛姫と政宗の仲を取り持とうとする吉乃には、失恋を経てもふたりに対する想いの強さを感じます。

 主人公を巡る恋の戦いが繰り広げられるなか、惜しくも敗れてしまったヒロインたちですが、いずれも大切な何かを得ています。『負けヒロイン』でも語られるように、恋に敗れたから終わりではなく、その後のヒロインたちに目を向けてみるのも面白いかもしれません。