アニメ、マンガ作品に登場するキャラのなかには、見た目が良くても性格や行動で、視聴者から反感を買うキャラクターもいました。そういった声があっても仕方ない、いわゆる「クズキャラ」のなかには、同情してしまうような事情もあり、一概に全否定できないキャラもいるようです。今回は「嫌われた美女」を振り返ります。



手前に大きく映っている赤い長髪がネーナ「機動戦士ガンダム00 5」Blu-ray(バンダイビジュアル)

【画像】え…っかわいい…みんなは愛せる? こちらがクズと言われる「美女」キャラたちです(4枚)

自分勝手すぎる悪魔的な性格

 アニメに登場する数多くのキャラクターのなかには、見た目は美しいものの性格や行動のせいで視聴者から反発を受けるキャラもいます。そういった声が出るのも仕方ない、いわゆる「クズキャラ」のなかには同情してしまうような一面もあり、好き嫌いが分かれることも多いです。

『盾の勇者の成り上がり』マイン・スフィア(マルティ=S=メルロマルク)

 2019年から現在までに3シーズンが放送されている『盾の勇者の成り上がり』に登場した、「メルロマルク王国」の第1王女「マルティ=S=メルロマルク(CV:ブリドカットセーラ恵美)」こと冒険者「マイン・スフィア」は、制裁を受けても反省する様子のない魔性な性格で、嫌っている視聴者も少なくありません。

 マインは、異世界に召喚された「四聖勇者」のひとりで、不遇な扱いを受けた主人公の「岩谷尚文(CV:石川界人)」と仲間になったただひとりの冒険者でした。しかし、利己的で策略に長けたマインの目的は尚文の財産で、彼からお金と装備を盗んだうえ、婦女暴行未遂の冤罪をなすりつけて尚文の名誉と信頼を失墜させます。

 それだけでなく、マインは自身より王位継承権が上の妹「メルティ=メルロマルク(CV:内田真礼)」を暗殺しようと企てますが、その野望は信頼できる仲間を得た尚文に阻止されました。最終的に罪が明るみになり、マインは母親の女王から死刑を宣告されました。

 しかし、尚文の恩情によって命は助けられ、本名「ビッチ」および冒険者名「アバズレ」に改名するという罰に落ち着きます。もっとも王族の地位を失ったところでマインの行いに変わりはなく、自分に利益がある相手に色目を使って乗り換えながら暗躍を続けるなど、反省の色はまったくありません。

 自分の利益しか考えず悪業を働き続けるマインは、視聴者から「ヘイト以外の感情が湧かない」「尚文をだまして絶望させるところがむかついた」といった声も出るほど嫌われています。

『機動戦士ガンダム00』ネーナ・トリニティ

 2007年から前後半に分割して放送された『機動戦士ガンダム00』の、私設武装組織「ソレスタルビーイング」に所属する部隊「トリニティ」の一員「ネーナ・トリニティ(CV:釘宮理恵)」も、自分勝手な行動が批判を受けているキャラクターです。

 あるとき、暇がないほど忙しい任務の移動中に、空中を「ガンダムスローネドライ」で飛行していたネーナは、地上で結婚式を挙げている光景を見かけます。戦いに明け暮れる自分とのあまりの差に腹を立てたネーナは、「能天気に遊んじゃってさ」と地上へ発砲し、攻撃に巻き込まれた「ルイス・ハレヴィ(CV:斎藤千和)」は自身の左腕を失い、彼女の親族も犠牲になりました。

 その後、第1期の戦いを終えたネーナはトリニティでただひとりだけ生き残り、ソレスタルビーイングを支援する「王留美(CV:真堂圭)」に保護されます。しかし、第2期で留美の指示によって動いていたネーナは、留美が落ち目と見るや即座に彼女を裏切り、自ら手にかけました。しかし、自らもだまされたネーナは、復讐心で軍に参加したルイスとモビルスーツ戦になり、ルイスの復讐が果たされる形で最期を迎えます。

 ネーナの見た目と声が好きというファンもいる一方で、「変革をテーマとした作品で、悪い意味で何も変わらなかったゲス」「いっさい感情移入できないキャラになった」という声もあり、強烈な悪役美女として視聴者の記憶に残っているようです。



右から2番手を歩くベージュ色の髪をした少女が川井。「映画『聲の形』Blu-ray 通常版」(ポニーキャニオン) (C)大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会

(広告の後にも続きます)

嫌われる理由は善悪の問題だけじゃない

 とんでもない悪事を働いたわけではないものの、拒否反応を示す視聴者もいるのが、2016年にアニメ映画もされた大今良時さんのマンガ『聲の形』に登場する「川井みき(CV:潘めぐみ)」です。

 本作の物語は小学生時代に主人公の「石田将也(CV:入野自由/小学生時代は松岡茉優)」が、耳が不自由な女の子「西宮硝子(CV:早見沙織)」へのいじめの加害者だった頃から始まります。その後、高校生になった石田が硝子と再会し、不器用ながらも少しずつ人間関係を修復していくさまが描かれていました。

 問題の川井は小学生時代に石田が黒板に西宮のひどい落書きをした際、口で「やめときなよ」と注意するだけで、実際には笑顔を浮かべて静観する「傍観者」です。しかし、終盤に石田の罪を非難する場面で、「私はね、止めたんだよ。石田くんのこと。でも聞いてくれなかった」と主張していました。この発言にもある通り、川井は自身のことを正当化しているように見えます。

 川井の自己愛に関しては、橋の上でいじめの責任感にふさぎこんだ石田が、川井に対し、「昔からお前は自分がかわいいだけなんだよ」と心境を吐露する場面もありました。こうした川井の自己中心的な言動が視聴者の一部には偽善的に映り、「川井は人間の醜悪さがもれ出てる」と、嫌われているようです。

 もっとも作品自体が善悪の二元論だけでは語りきれない面もあり、「めちゃくちゃムカつくけど、冷静に考えると悪いところが何もない」「誤解やミスリードもあって、感想で言われるような子じゃない」という擁護の声も少なからずあがっていました。