レッドブルはF1のパワーユニット(PU)パートナーであるホンダと共同で、若手ドライバー育成プログラムに取り組んできた。ただ、両社のF1でのパートナーシップが2025年末で終了することに伴い、育成分野での協業も徐々に終わりに近付いていると言える。この件について、レッドブルでドライバー育成を統括する、モータースポーツアドバイザーのヘルムート・マルコ博士に話を聞いた。
レッドブル陣営のチームがホンダのPUを搭載してF1を戦うようになったのは2018年。最初は姉妹チームのトロロッソ(現RB)のみの供給で、2019年からレッドブルへの供給もスタートし、現在に至る。既に複数のタイトルを手にするなど大成功を収めたこのパートナーシップだが、ホンダは2026年からアストンマーティンにPUをワークス供給するため、レッドブルとは袂を分つことになる。
このパートナーシップ期間を通してレッドブルは、ホンダと共に若手ドライバー育成に取り組んできた。その筆頭株が角田裕毅であり、彼は2021年にF1昇格を果たし、2025年もRBの一員として残留することが決まっている。
また岩佐歩夢もジュニアカテゴリーで好成績を残してスーパーライセンス取得の条件を満たすなど、F1まであと一歩のところまで迫っている。岩佐は今季スーパーフォーミュラに参戦してTEAM MUGENでレッドブルカラーのマシンを走らせる傍ら、レッドブル陣営でF1シミュレータドライバーを務め、今年の日本GPではRBからフリー走行1回目に出走した。
そしてレッドブルは日本のスーパーフォーミュラを、自陣営の育成ドライバーの真の実力を測る場としても活用してきた。2017年のピエール・ガスリーを皮切りに数多くのジュニアドライバーをスーパーフォーミュラで戦わせ、昨年はリアム・ローソンが、そして今年は前述の通り岩佐が送り込まれた。
しかしながら、レッドブルとホンダのパートナーシップ終了に伴い、こういった取り組みも終わりを迎えると思われる。既報の通り、スーパーフォーミュラでのTEAM MUGENとのパートナーシップは2024年限りで終了するのでは、という情報も入ってきていた。
なおHRC(ホンダ・レーシング)の担当者はmotorsport.com日本版に対し、以前からの決定事項として、ホンダとレッドブルによる共同のドライバー育成プログラムが今年限りで終了すると明かした一方で、来季レッドブルがスーパーフォーミュラでTEAM MUGENと組むかどうか、岩佐の処遇がどうなるかなど、それ以上の詳細については明言していなかった。
そしてこの度、motorsport.comはアゼルバイジャンでマルコへの独占インタビューを実施。その中で、ホンダ、スーパーフォーミュラ、そして岩佐といった日本絡みの育成プログラムの今後について尋ねた。
まず初めに、ホンダとのPUサプライヤーとしての提携終了は、共同のドライバー育成プログラムの終了も意味するのかと改めて確認を求められたマルコは「そうだ」と肯定。その終了のタイミングは今年いっぱいか? それとも来年いっぱいか? との質問には以下のように答え、岩佐に関する来季の計画も明らかにした。
「岩佐とはまだ(関係を)続けていくことになる」
「彼はスーパーフォーミュラにもう1年参戦し、レーシングブルズ(RB)のリザーブドライバーになる。しかし、我々が今年ほどの関与をすることはないだろう」
岩佐を来年もスーパーフォーミュラに参戦させる一方で、「今年ほど関与をすることはないだろう」と語ったマルコ。さらに詳しく話を聞くと、岩佐を来季もTEAM MUGENに残留させる意向である一方で、そのマシンがレッドブルカラーをまとうことはないようだ。
岩佐を来年もスーパーフォーミュラに参戦させるというものの、スーパーフォーミュラでのレッドブルリバリーのマシンは来年いっぱいで見納めなのかと聞かれたマルコは、こう答えた。
「いいや、来年の段階で既にレッドブルリバリーのマシンはなくなる。単なるブランディングになるんだ」
「我々には、選手権をリードしているノジリ(野尻智紀)という男がいる。彼とは、ヘルメットの契約に加え、レーシングスーツにも色々と(ロゴなどが)ある。我々は岩佐に対しても、それと同じものをオファーしている。マシンにブランディング(カラーリング)されることはもうないのだ」
今季のスーパーフォーミュラは9戦中5戦を終了したが、岩佐はここまで、予選でポールポジション1回を含むフロントロウ3回を記録し、決勝では2位2回。ランキング5番手につけている。マルコは岩佐の戦いぶりについて「スタートや予選などで不運に見舞われたが、最初から速さを見せつけている」と評した。
サポートの形こそ変わることになりそうだが、岩佐は来季もレッドブルとの関わりを継続するようだ。