TVアニメ『蒼き流星SPTレイズナー』の最終回は放送当時、理解できた視聴者はまずいなかったことでしょう。そういえる理由と、「ふたつめの最終回」について紐解いていきます。
『蒼き流星SPTレイズナー』 (C)サンライズ
【令和最新版】こちらが最終決戦仕様の「ニューレイズナー」と「ザカール」です(10枚)
最終話にみな愕然!
1985年から86年にかけて全38話が放送されたアニメ『蒼き流星SPTレイズナー』は、『装甲騎兵ボトムズ』(1983年放送開始)などを手掛けた高橋良輔監督の作品で、侵略者である「グラドス人」と地球人との戦いが描かれました。
主人公である「エイジ」が搭乗する人型ロボット(SPT)「SPT-LZ-00Xレイズナー」はAI「レイ(フォロン)」を搭載しており、使命のためにエイジと対立することもあるなど、人類とAIの共存を模索する現代にも通じる、先鋭的なテーマを内包しています。
しかし、さまざまな事情により中盤以降は世界観が大きく変化し、また放送が短縮されたことにより、当時リアルタイムで観ていた方にとって、衝撃的な最終回となってしまったこともまた事実です。さて、TV放送ではどのような流れで最後を迎えたのでしょうか。
第37話「エイジ対ル・カイン」で展開された、エイジが操る「V-MAX(戦闘システムの呼称)」を搭載したレイズナーと、主要敵キャラであるグラドス人「ル・カイン」が駆る「V-MAX・レッドパワー」を搭載したSPT「ザカール」の対決は、ル・カインの勝利に終わりました。ル・カインはエイジが知る地球とグラドスの間に隠された秘密を聞き出そうとしており、部下がエイジとレイズナーにトドメを刺そうとするとそれに割って入り、「手出しをすれば死ぬものと思え!」と叫んで立ちはだかります。
果たして次週はどんな展開を迎えるのか。そうして迎えた最終回「歪む宇宙(そら)」は、想像とはだいぶ異なる内容でした。
ゲリラ戦を強いられていたはずの地球側にはなぜか複数のSPTが配備されており、グラドス軍と対峙しようとしていました。破損したはずのレイズナーも修理されており、エイジも無事だったのです。
『蒼き流星SPTレイズナー ACT-III刻印2000』 (C)サンライズ
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意味不明な最終回、からのOVA!
何が起こっているのか分からないまま、話は先へと進んでいきます。地球とグラドスの秘密を握る「グラドスの刻印」を、エイジの姉である「ジュリア」が発動させ、エイジは仲間たちに見送られて出撃します。ル・カインは重用していた地球人「ロアン・デミトリッヒ」に裏切られながらも愛機ザカールで出撃し、グラドスの刻印の周囲で青と赤のV-MAX装備機は飛び交い、やがてすべてが何かのなかに消えました。
その後はほぼ回想シーンが続き、敵味方に分かれたフリをしていたエイジの仲間たちが一堂に会します。いつも今ひとつ頼りないところを見せていた「アーサー・カミングスJr.」が、空に向かってエイジに呼びかけ、レイズナーが地球めがけてV-MAXを発動したところで本編は終了となりました。何がどうなったのか分からなかった、というのが、当時の視聴者としては正直なところだったでしょう。
しかしその後、OVAシリーズの3作目『蒼き流星SPTレイズナー ACT-III刻印2000』が、上述の最終回放送から約4か月後に発売され、ようやくストーリーの全貌を知ることができました。
実は地球人とグラドス人は同じ種族であり、かつて滅亡の危機にあったグラドス人は、地球人の生命核を持ちかえり生きながらえたのです。真実を知ったル・カインは父親であるグレスコや部下のカルラを射殺、地球文明の破壊に乗り出す暴挙に出て、多くの都市が廃墟と化しました。
一方、ル・カインとの決闘後に大破したレイズナーは、地球側が新たに開発した機体にレイ(フォロン)を移植し、「E-SPT-LZ-00X-B V-MAX強化型レイズナー」(作中呼称「ニューレイズナー」)として蘇っていたのです。地球側レジスタンスにもSPTが配備され、ロアンはクーデターを起こしル・カインの支配体制を崩壊に導きました。
最後、エイジとの戦いを求めたル・カインはグラドスの刻印を守るレイズナーに襲い掛かりますが、レイズナーもザカールも刻印に飲み込まれ、戦闘は終了。ル・カインはジュリアの元で安らぎを得、エイジは再びレイズナーを駆って今度こそ地球の仲間たちの元へ帰り着き、『レイズナー』はついにクライマックスを迎えることができたのです。
もし、TVシリーズのラストは知っていても、OVA版の最終回を観たことがない方は、ぜひご覧になることをお勧めします。