アクションカメラの先駆者、GoProがリストラで従業員15%削減…研究開発よりもマーケティングに力を入れたスタートアップはなぜここまで凋落したのか?

研究開発費よりもマーケティングを重視した、いびつな構造

GoProが絶頂期を迎えていた2015年度の研究開発費は2億4100万ドル。一方、広告宣伝費は2億6800万ドルだった。製品開発にかけるそれよりも、マーケティング費用のほうが高かったのだ。

アクションカメラの誕生と市場拡大は、YouTubeやSNSの発達と切り離すことができない。GoProはサーファーやスノーボーダーなどアウトドアスポーツのユーザーが撮影した動画を買い取り、自社のYouTubeで利用するなど、巧みなマーケティング戦略でファンを獲得してきた。

上場した2014年当時、日本の家電メーカーがGoProのような優れた製品を生み出せなかったのは、各メーカーが機能性にこだわり過ぎたからだとする風潮があった。そこに「現代の消費者は機能を買うのではない、体験を買うのだ」というGoProの登場は革新的だった。

確かにそれは一理あるが、GoProは機能面を軽視しすぎたきらいがある。GoProはソニーなどから主力部品を調達し、製造を委託するファブレス企業だ。

ファブレスで大成功した会社にAppleがあるが、その理由は、iPhoneの製品化には巨額の研究開発費を投じ続け、デザインと機能面で他社が追随できないレベルにまで達することができたからだ。

さらに、GoProは2016年にドローンを販売してわずか2年後に撤退している。中国の民生用ドローントップメーカーであるDJIの牙城を崩すことができなかったのだ。短期間での撤退決定は、その端緒すらつかめなかったということになる。一連の出来事は、GoProがモノづくりに向いていない企業であることをよく表している。

ファブレスというと格好はつく。しかし、製造を委託する会社にモノづくりを丸投げした結果、上流工程を担う会社の技術開発力そのものが落ちるというのはよくある話だ。

GoProは2018年に身売りの可能性に言及して世間を驚かせた。それ以降は具体的な話に進展していないが、すでに進退きわまった状態にあるように見える。今回の人員削減でますます開発力は失われ、他社に勝てる商品を世に送り出せるとは考えづらいからだ。

GoProの時価総額はかつて90億ドル近くまで達していたが、現在は2億ドルほど。巨大企業はおろか、中堅でも手を出せそうなレベルだ。

一時代を築いたスタートアップが苦境に立たされ、叫び声をあげている。

取材・文/不破 聡 写真/Shutterstock