レッドブルは、ファンから募集したスペシャルデザインのカラーリングをシンガポールGPとアメリカGPで採用する予定だったが、重量増加を避けるためにこの催しを中止することを決めた。
レッドブルは『REBL CUSTMS』と題し、今季のイギリスGP、シンガポールGP、アメリカGPで使用される特注のカラーリングデザインをフォロワーから募集していた。レッドブルは昨年も同様の取り組みをアメリカでの3レースで実施している。
デザインが採用された受賞者は、そのアイデアを実際のマシンで見ることができるだけでなく、チームの特別ゲストとしてレースを楽しむこともできる。
イギリスGPでも実際にスペシャルカラーが採用されたが、マクラーレンやフェラーリとの戦いが激化している現状を踏まえ、シンガポールGPを前に計画の変更が行なわれた。
motorsport.comの調べによると、シンガポールで計画されていたカラーリングをファクトリーで実車に施す構想段階で、このペイントがRB20の重量を約1kg増加させることが判明したという。
1kgはラップタイムにして1周あたり0.03秒程度の影響にしかならないが、上位チームの競争力が拮抗した現状を考えると、チームはマーケティングキャンペーンによってチャンピオンシップにダメージをおよぼすリスクを冒すことはできないと判断したようだ。
実際、アゼルバイジャンGPでレッドブルはマクラーレンに完敗した。ランド・ノリス(マクラーレン)が不運な予選Q1敗退に終わったにもかかわらず、決勝レースが終わってみればオスカー・ピアストリが優勝、ノリスも4位まで追い上げた。
一方レッドブルはセルジオ・ペレスが表彰台争いの中、残り2周でカルロス・サインツJr.(フェラーリ)と接触しクラッシュ。マックス・フェルスタッペンも5位止まりで、レッドブルはついにコンストラクターズランキング首位から陥落してしまったのだ。
そうした状況を受けて、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は攻めの姿勢を貫く必要があると語っていた。このスペシャルカラー企画の中止も、その一環だと言えるだろう。
シンガポールGPを前に、チームはカスタムカラーリング計画を断念し、今季残りの期間はレギュラーカラーを使用することを明らかにした。
「残念ながら、REBL CUSTMSのデザインがRB20の上で実際にどのように見えるかをテストする段階になって、これらの特注カラーリングを作成するために使用される塗料が、RB20のボディワークに予期せぬ過度の重量を加えることが分かった」
「ご想像の通り、重量増はパフォーマンスを低下させるものであり、チームは2024年シーズンの残りでこのマシンを可能な限り競争力のあるものにすることを優先している」
「その結果、チームはシンガポールGPとアメリカGPでRB20にREBL CUSTMSのカラーリングを施さない決断を下したことをお伝えしなければならない」
2022年のレギュレーション変更以降、F1チームはマシンの重量を規則で定められた最低重量以下に収めようと努力してきた。
しかしその結果、カーボン地むき出しとなるマシンも増加。F1上層部は、鮮やかなカラーリングのF1マシンを取り戻すべく、話し合いを行なっている。
FIAのシングルシーター担当責任者であるニコラス・トンバジスは次のように語っている。
「塗料の重量の関係で、カーボン地むき出しのクルマが多すぎるのは問題だ。黒いクルマが多すぎる」
「可能な限り重量を少なく保つため、ペイントの種類を変更したり、非常に薄いフィルムを使ったり、チームは様々な取り組みをしているんだ」
なおシンガポールGPでは、メルセデスがタイトルスポンサーであるペトロナス創立50周年を祝うワンオフカラーを採用する他、レッドブルの姉妹チームであるRBも、アパレル・パートナーのヒューゴがデザインした特別カラーリングでシンガポールGPを戦う予定となっている。