昭和期には誰もが知っており、令和でも語り草になる名作マンガが多々生まれました。物語の面白さや深さに引き込まれるのはもちろんですが、なかには、誰も報われない「全滅エンド」が描かれたことによって有名になったマンガもあります。



『新ルパン三世』第12巻(双葉社)

【画像】え…っ?表紙の段階で「細くておっきい」 こちらが原作でも美しすぎた峰不二子です(5枚)

不良のケンカから始まり、迎えたのは日本崩壊

 数ある昭和の名作マンガには、主人公ほか主要キャラ、その他大勢までも死んでしまう「全滅エンド」が描かれた作品も目立ちます。たとえば永井豪先生の『デビルマン』や、横山光輝先生の『マーズ』などが有名でしょう。そのほかにも、衝撃的なラストを迎えた作品が多々ありました。

 1973年から「週刊少年ジャンプ」(集英社)にて連載が始まった本宮ひろ志先生のマンガ『大ぼら一代』は、主人公である「丹波太郎字」が絶命し、さらには日本が崩壊するという壮絶なラストを迎えています。

 同作は豪族である丹波一族の妾(めかけ)の子供として生まれ、ケンカに明け暮れる小学生「山岡太郎字」が、頭が切れる転校生「間源太郎」と出会って、将来の日本を変えていくことを目的にした「大ぼら同盟」を結成するという物語です。

 同作のストーリーはどんどん壮大になっていき、日本全土を巻き込んだ衝撃展開が起きます。物語の途中で太郎字は警官を誤射して、少年院に4年間入れられてしまいました。そして、その間に太郎字のライバルで日本中の不良をまとめ上げた「島村万次郎」は、権力を握って日本の独裁者になっていたのです。太郎字は彼を止めるために、戦うことを決意します。

 そして、物語終盤になると、国防軍を掌握した万次郎に太刀打ちできないと察した太郎字は、命令書を残して銃で頭を撃ち抜き自殺します。その命令書には、側近である「袖原」に太郎字の首を万次郎のもとに持って行かせ、面会時に万次郎を殺せという指示が書かれていたのです。

 その計画を袖原は無事に最後まで遂行し、独裁者の万次郎死亡で幕を閉じるのかと思いきや、突如として大地震がやってきて、日本全土があっという間に廃墟と化してしまいました。そして、『大ぼら一代』はここで完結を迎えます。

 実際に同作を読んだ人からは、「あまりに投げっぱなしのラストは有名な話だけど、熱血パワーがみなぎる登場キャラたちには今読んでも魅力を感じる」「壮大な世界観を回収しきれないと判断して大地震を起こしたんだと思う。でも、日本で独裁政治が起きた状況がリアルで、個人的にはとても面白かった」などの声があがっていました。

 また、アニメや映画でも多くの人々に親しまれているモンキー・パンチ先生のマンガ『ルパン三世』は、続編として1977年から「Weekly 漫画アクション」(双葉社)で『新ルパン三世』の連載が始まりました。

 その『新ルパン三世』のラストでは、主人公「ルパン三世」を筆頭に、仲間の「次元大介」「石川五右ェ門」「峰不二子」らおなじみの頼もしいキャラたちが、全滅してしまったのです。

『新ルパン三世』の最終話である189話「完結編 ENDLESS…」では、「銭形警部」の画策によってルパンたちが、大量の爆弾が仕かけられた島に閉じ込められてしまいます。とはいってもさまざまな窮地の場面を脱してきたルパン一味のことなので、最終的には無事に切り抜けるかと思いきや、彼らは冷静に状況を判断してあっさりと諦め、そのまま島は爆発します。とはいっても、彼らの死体は描かれていないため、一応は生死不明という位置づけになるでしょう。

 やはり、ルパンたちの全滅エンドを忘れられない読者も多いようで、ネット上には「死を目の前にしても、怯えずに余裕を見せていた様子が何ともルパンらしくてよく覚えている」「ラストの銭形が言った『挑戦だけに生きてるんだ あいつは』というセリフは心に刺さった」といった声が見受けられました。



『ザ・ムーン』(著:ジョージ秋山)第4巻(eBookJapan Plus)

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少年少女主人公でも容赦なし

 ほかには、1972年から「週刊少年サンデー」(小学館)で連載されたジョージ秋山先生の『ザ・ムーン』も、主要キャラの全滅が描かれた一作です。同作では、9人の少年少女たちが心をひとつにすることで動く巨大ロボット「ザ・ムーン」を駆使して、悪党たちと戦う姿が描かれています。

 物語終盤では、宇宙からやってきた「ケンネル星人」が生物を死に至らしめるカビを地球に散布し、それを食い止めるため、リーダーの「サンスウ」を筆頭に9人が立ち上がりました。そして敵によって隠されたザ・ムーンを探し当て、カビ発生装置の場所も突き止めて、あとは装置を止めるだけとなりますが、9人はカビの影響でその場に倒れ込んでしまうのです。

 その後、見開きでザ・ムーンが「ムーン ムーン」と言いながら涙を流す場面が描かれ、ラストひとコマでフランスの小説家「ロマン=ローラン」による「神は苦しむ 神は戦う(中略)神は『生命』であり 闇の中に落ちて ひろがり 闇を 呑みこむ 一滴の光だからである……」という言葉が綴られて、物語は幕を閉じるのでした。

 作中で9人の生死について明記されてはいないものの、彼らの死および地球の滅亡は避けられない状況であり、その後味の悪いラストに対して「今でも忘れられない」「トラウマ必死の最終話」などの声も多く、いまだにバッドエンドを迎えた作品として語り草となっています。