自重エクササイズは手軽に始めることができ、カロリーも消費する / Credit: Canva

ジムへ行かずとも、自分の体一つで筋肉を鍛えることができるのが自重エクササイズの魅力です。

ギリシャのテッサリア大学(University of Thessaly)のファトゥーロス教授らの研究グループは、プランク、プッシュアップ(腕立て伏せ)、スクワット、片脚スクワット、ランジ(フォワードランジ)、バーピー、ジャンピングジャックという7種類の自重エクササイズを実施した際に、どれくらいカロリーを消費するのかを詳しく調べました。

その結果を見ると、全身を動かし、有酸素運動の効果も併せ持つバーピーのカロリー消費が最も多い一方で、動きのないプランクのカロリー消費が少ないことが分かりました。

本記事では、この研究結果とともに、カロリー消費が少ないプランクの痩せる効果を調べた研究結果を合わせて説明することで、自重エクササイズとの向き合い方を考えます。

今回の研究結果は、全米ストレングス&コンディショニング協会の公式学術雑誌『Journal of Strength and Conditioning Research』に2024年8月14日付けでオンライン公開されています。

目次

カロリーを大量に消費する自重エクササイズはバーピープランクでも痩せられる

カロリーを大量に消費する自重エクササイズはバーピー

体脂肪を減らしたい人はもちろん、美味しいものを気兼ねなく食べたい人にとって、運動によってエネルギー(カロリー)を消費することが大切です。

カロリーを消費する手段としては、ジョギングやサイクリングに代表される有酸素運動が一般的ですが、最近ではカロリー消費を狙って筋トレに取り組む人も増えています。

特にダンベルやバーベルなどの特別な器具を使わない自重エクササイズは、自宅で手軽にできるため、取り組むハードルが低いのが魅力です。

今回、研究グループは、18〜35歳の健康的な男女(平均体重:73.6kg)が7種類の自重エクササイズを実施した際の消費カロリーを、運動前から運動後にかけて呼気ガスマスクを装着し、指先から微量の血液を採取して血中乳酸濃度を測定することで詳しく調べました。

このアプローチは、筋トレが無酸素性のエネルギーを使ったり、運動後にもエネルギーを消費したりすることを考慮したもので、そういったカロリー消費も反映できるようにしています。

早速結果を見ると、体重移動を伴いながら全身を使うバーピーのカロリー消費が最も激しく、30秒実施するだけで平均16.1kcalも消費することが分かりました。

なお、バーピーのやり方はいくつかのバリエーションがありますが、その1つは次の方法です。

立った状態から始めます。
しゃがんで手を地面に付けます。
足で地面を蹴り、腕立て伏せの姿勢になります。
足を元に戻してしゃがんだ体勢に戻ります。
立ち上がります。


バーピーは、全身を使い、筋トレと有酸素運動を兼ねた種目 / Credit: Wikimedia, The burpee in it’s true form, as intended by Royal H. Burpee, performed by Taco Fleur.

これは、ジャンピングジャック(11.5kcal)、腕立て伏せ(11kcal)、スクワット(10kcal)、片脚スクワット(9.9kcal)、ランジ(9.3kcal)、プランク(5.7kcal)に比べても、大きなもので、短時間でカロリーを消費するにはバーピーが優秀であることを示しています。

このように、全身を使いながら体をダイナミックに動かすバーピーは短時間で高いカロリー消費が期待でき、その差は動きのないプランクに比べて3倍近くにもなります。

一方、このようなダイナミックな種目は、場合によっては騒音や振動が発生するため、集合住宅に住んでいる人などには実施しにくいという懸念もあります。

では、プランクのようなあまりカロリーを消費しない種目であっても、継続すれば痩せる効果が期待できるのでしょうか? 次のページではこの点を見ていきます。

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プランクでも痩せられる

今年2月、韓国の韓瑞大学校(Hanseo University)に所属するジー教授らが興味深いトレーニング実験の結果を欧州スポーツ科学会の公式雑誌『European Journal of Sport Science』に発表しています。

そのトレーニング実験とは、大学生を、プランクトレーニングをする群(プランク群)としない群(対照群)にランダムに分けたものです。

ここで、プランク群は3種類のプランク(スタンダードプランク、エルボープランク、サイドプランク)を週3回、12週間実施しています。

各エクササイズの方法を簡単に説明すると、次のとおりです。

スタンダードプランク:腕立て伏せの開始姿勢に似ていて、腕を伸ばした状態でつま先と手で体重を支え、体を一直線に保つ


スタンダードプランク(イメージ) / Credit: 写真AC

エルボープランク:肘とつま先で体重を支えながら、体を一直線に保つ


エルボープランク(イメージ) / Credit: 写真AC

サイドプランク:横向きになり、肘で体を支えながら腰を落とさずに体を一直線に保つ


サイドプランク(イメージ) / Credit: 写真AC

なお、各種目のセット数は、最初の4週間が3セット、次の4週間が4セット、最後の4週間が5セットです。

また、各種目は1セット当たり1分実施したため、毎回のトレーニングでプランクをしている時間は、最初の4週間が9分、次の4週間が12分、最後の4週間が15分になります。

その結果、トレーニング期間前後の体重を見ると、プランクに取り組んだグループでのみ減少していました(約2.8kg)。

また、身体組成の変化を見ると、プランク群では体脂肪が減り、筋肉量が増加していました。

これらの結果は、一般的には脂肪燃焼というよりも体幹を鍛えることを目的に行われる動きの伴わない3種類のプランクであっても、12週間続けることで、筋肉量を増やしながら体脂肪が減ることを示しています。

塵も積もれば山となるではありませんが、プランクのように動きを伴わず、時間当たりのカロリー消費が少ない種目であっても、コツコツ続けることができれば、しっかりと痩せる効果が期待できると言えそうです。

最初に説明したとおり、自分の体一つで気軽にできるのが自重エクササイズの魅力です。

優劣を決め過ぎず、バーピーからプランクまで、好みやトレーニングをする場所に応じて、いろいろなエクササイズにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

参考文献

No One Likes Burpees, so Here’s Exactly How Many You Have To Do per Week To See Results
https://parade.com/health/how-many-burpee-to-see-results

元論文

The Energy Expenditure Associated With Body-Weight Resistance Exercises of Various Movement Patterns Performed at Different Durations
https://doi.org/10.1519/JSC.0000000000004919

Plank exercise improves respiratory capacity through positive changes in body composition, abdominis function, and autonomic nerves’ activities
https://doi.org/10.1002/ejsc.12086

ライター

髙山史徳: 大学では健康行動科学、大学院では体育学・体育科学を専攻。持久系スポーツの研究者として約10年間活動。 ナゾロジーでは、スポーツや健康に関係する記事を執筆していきます。 価値観の多様性を重視し、多くの人が前向きになれる文章を目指しています。

編集者

ナゾロジー 編集部