『機動戦士Zガンダム』に登場する「パプテマス・シロッコ」は「ジ・O」のパイロットであり、「カミーユ・ビダン」の前に立ちはだかった最後の敵です。思わせぶりなシロッコは、ジ・Oで何を成し遂げようとしていたのでしょうか。



ジ・Oの隠し腕ギミックは刺さる人も多いかも? 「MG 1/100 PMX-003 ジ・O」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

【画像】イロモノ? だがそれが良い! こちらがシロッコの制作したMS/MAです(5枚)

シロッコが神を目指したモビルスーツ

『機動戦士Zガンダム』に登場した「ジ・O(ジオ)」のパイロット「パプテマス・シロッコ」は、主人公「カミーユ・ビダン」が乗る「Zガンダム」と最後に対峙したモビルスーツ(MS)です。しかし、シロッコは思わせぶりな部分もあって、彼がジ・Oで何を成し遂げようとしていたのか、その目的はなかなか見えませんでした。

 型式番号「PMX-003 ジ・O」は『機動戦士Zガンダム』の中盤から登場したシロッコが、自らの専用機として作りあげたニュータイプ専用MSです。その名前の由来は「theology(神学)」から取ったとする説や、「O」が「完全な形」を意味して「神の意志」になる説など、さまざまな考えがささやかれています。ただ、いずれにせよシロッコが自身の搭乗する機体としてふさわしいように、絶対的な性能を目指して作ったのは間違いなさそうです。

 機体のサイズは全高24.8m、本体重量53.3tとなっていて、反連邦組織「エゥーゴ」で最新兵器だった「Zガンダム」の全高19.85m、本体重量28.7tというスペックと比べると、大柄な印象です。そのため、外見だけでは動きが鈍そうに見えますが、総数にして50基もの姿勢制御用バーニアを機体の各所に備えていて、さらにシロッコが独自に開発した「バイオ・センサー」を補助装置に使い、パイロットの操作が機体に伝わるまでの時間差を軽減して運動性も増しているため、見た目に似合わず高い機動力を誇っています。

 初登場したTV版『Zガンダム』第46話「シロッコ立つ」では、帯同していた「サラ・ザビアロフ」のMS「ボリノーク・サマーン」と「レコア・ロンド」のMS「パラス・アテネ」が、敵対する組織「アクシズ」の首魁「ハマーン・カーン」が乗るMS「キュベレイ」と、その誘導兵器「ファンネル」の自由自在な攻撃に翻弄されるなか、シロッコは死角からのビーム攻撃も見えているかのように回避し、ファンネルを撃ち落とす芸当を見せました。

 武装こそ腰部の隠し腕を除けば、ビーム・ソード4本にビーム・ライフルと少なめです。もっとも、キュベレイやZガンダムといった高性能機と互角に戦うのを見ると、それでも十分な武器構成だったのでしょう。

 後付けにはなりますが、ジ・Oの後継機にはシロッコが後の世を見据えて構想していたとされるファンネル搭載機「PMX-004 タイタニア」や、その完成形とされる「PMX-004-2 タイタニアII」も存在しています。また、タイタニアと同時にシロッコが設計していたとされる「AGX-11 オーヴェロン」は、白いジ・Oに似た追加外装が施された機体で、中身はガンダムタイプの見た目をしています。



野心家で内面を見せないため謎が多いシロッコ。「GGG 機動戦士Zガンダム パプテマス・シロッコ」(メガハウス) (C)創通・サンライズ

(広告の後にも続きます)

本当にシロッコは女性社会を目指したのか

 シロッコは第21話「ゼータの鼓動」で、「ティターンズ」の士官「ジェリド・メサ」と「マウアー・ファラオ」を前に「戦争のあとで誰が人類の支配を握るかで、地球圏はどうにでもなる。そのときに地球圏を収める天才が必要だと思えんか?」と熱弁しています。その問題に「それをあんたが?」と聞き返したジェリドへ「戦後の地球を支配するのは女だと思っている」と、女性を尊重する素振りを見せていました。確かにシロッコは、サラやレコアといった女性を重用していましたが、本当に女性社会を作ろうとしていたのか疑問が残ります。

 疑問に思えるのがジ・Oの立ち位置で、先述したように初陣で、同機との3機編成が想定されているサラのボリノーク・サマーンと、レコアのパラス・アテネをともなっていました。そのうちパラス・アテネのほうは中距離戦主体の重火器型MSで高い火力を持っていますが、ボリノーク・サマーンは偵察や索敵を主体としており、戦闘用の装備は最低限しか持ちません。

 ティターンズの司令官「ジャミトフ・ハイマン」を暗殺した後は、実質的にシロッコが組織を率いていたとはいえ、やはり3機編成の中心にあるのは一番の高性能機であるジ・Oです。そうして振り返ってみると、シロッコが女性に主導権を渡そうとしていたとは思えません。

 もしシロッコが本気で戦後に女性が支配する社会を作りたければ、女性のハマーンが支配する「アクシズ」に協力する道もあるはずが、実際には敵対しています。仮にシロッコによって女性社会の宇宙世紀が実現されても、自身の専用機に「神の意志」と名付ける野心家なので、裏で主導権を握るのは彼自身だったことも考えられます。

 作中でのシロッコはジ・Oに乗り、地球圏の主導権を争いましたが、最後は機体のバイオセンサーをカミーユの高いニュータイプ能力で掌握され、Zガンダムのウェイブライダー(飛行)形態による突撃で志半ばのまま敗れています。

 もしかしたら、女性で誰か権力を譲りわたそうと思った相手がいたかもしれませんが、ティターンズの実権を握ったところでエゥーゴに敗れ、シロッコの時代がやってこなかった以上は、真実は闇のなかと言わざるを得ないでしょう。