パワハラやタカリ、公金不正支出にこれらを告発した幹部職員に不当な人事報復を加えた疑いもある兵庫県の斎藤元彦知事。知事に対する不信任決議案が9月19日、県議会で全会一致で可決された。就任から3年、選挙で推した維新や自民党の一部議員も含む86人の県議全員からの辞職要求だ。10日以内の県議会解散か失職の選択を迫られる斎藤知事は弱気な言葉も漏らし始めたが、議会解散に打って出るとの見方が消えたわけではない。問題は、斎藤知事に相談する相手が全くいないことだ。
次の焦点は知事が失職を受け入れるか、それとも議会を解散するか
19日午前に開幕した県議会の冒頭、斎藤知事は今回の問題について「多くの県民の皆様にご心配をおかけしていること、改めて心よりお詫びを申し上げます」と述べて一礼をしたが、続けて県政改革に注いできた自身のこれまでの努力を強調した。
その上で「調査に誠実に対応し、県民の皆様への説明責任を果たしていくこと、そして、反省すべき点、改めるべき点をしっかりと受け止め、日々の仕事に活かしていくことが県政を前に進めていく上で大切であるという風に考えております」と述べ、辞職する意向はないことを改めて表明した。
この日、知事が議場で今回の問題に触れたのはこれだけ。夕刻になり、最大会派自民党の議員が全議員を代表して不信任決議案の提案理由を述べたのに続き、他会派や無所属の計6人が賛成討論を続けた。
「組織のトップとして、政治家として(知事には)事態の収拾に努めなければならない責任があった」
「知事の側近の前総務部長は告発者の個人情報を持ち歩いていたとの情報もある。組織として最悪の事態だ。ガバナンスが崩壊している」
1時間以上にわたり行政の責任者として失格だという厳しい言葉を聞かされる間、斎藤知事は両手の指を組み正面を見据えながら、感情の乱れを見せるようなことはなかった。
結局86人の議員全員が賛成票を投じ、現行憲法下で5例目となる不信任案可決が現実のものに。次の焦点は知事が失職を受け入れるか、それとも議会を解散するか。過去4回の知事の不信任案可決の事例ではいずれも知事が失職を選んでいる。
自分を非難する討論と採決の間、一言も口を開く機会がなかった斎藤知事は、閉会直後、記者団の取材に応じたが、その場で今後の選択を明言することはなかった。
「(不信任案可決は)大変重い議会側の選択で、私にとっても非常に重い。しっかりと考えることが大事です」(斎藤知事)
(広告の後にも続きます)
「私は無所属で出さしていただきました」
一方で斎藤知事は、このような事態になった理由をどう考えているのか、と心境を問う質問に「こういった状況になった結果責任は(私に)ある」と、自身の責任に触れる発言も始めた。これを聞いた記者団には、知事は失職に傾いているのではないかとの見方が広がったが、知事はこうした考えを認めることはなかった。
一方で目を引いたのは、今後の選択を相談する相手はいるのか、との質問に「この問題は政策ではなく、知事としての対応の一番大事な政治的な話になるので、ここはやっぱり私が自分の中でしっかり判断していくことが大事です」と答えたことだ。実はこれが、現在の兵庫県議会関係者が一番頭を悩ませている部分だ。
「身内っていうことがどういうことかって、私はちょっと分かりませんけども、前回の選挙で私は無所属で出さしていただきました」
大阪府の吉村洋文知事は斎藤知事の今後について「職を辞して信を問うべきだ」と表明している。このことについて前日の18日午後、記者が斎藤知事に対し「身内である維新からこのように言われていることをどう思うか」と尋ねると、自分は無所属で勝ち上がってきたと強調し、吉村知事の指示に従ういわれはないとばかりの答えを返している。