声優発表でファンが騒然となった劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』。これまで慣れ親しんだカガリの声が変更になったことが原因です。そこで過去のシリーズであった声優交代について紐解いてみましょう。
2024年1月公開予定の劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』ティザーポスター (C)創通・サンライズ
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意外と昔からあった「ガンダム声優」の交代
2024年1月26日公開予定の劇場アニメ『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の新情報が先日、発表されました。劇場版に登場するキャラたちの担当声優陣の発表でしたが、これがファンの間で大きな物議を醸しています。
シリーズ前2作『機動戦士ガンダムSEED』、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』で登場した作品の中心キャラであるカガリ・ユラ・アスハの担当声優が、これまでの進藤尚美さんから森なな子さんに変更となったことが、ファンとっては大きな衝撃だったようです。
このことに関してネット上ではさまざまな憶測と意見が飛びかっていました。ファンにとっては慣れ親しんだ声優の変更は、看過できるものではありません。しかし、ガンダムシリーズを振り返ってみると、新規作品での声優変更は意外と多く行われていました。そこで過去の例を紐解いてみましょう。
実は最初の作品となるTV版『機動戦士ガンダム』のなかで、早くも声優変更が行われていました。ジョブ・ジョンやオムル・ハング、オスカ・ダブリンとマーカー・クランといったホワイトベース乗組員の声は話数が進むごとに何度か変わっています。
もっともこれらのキャラはセミレギュラークラスで、当時の製作状況にも理由があったので今回の例と一概に比べられるものではありません。比較対象としては、その後の劇場版三部作での声優変更の方が近いかもしれません。
この劇場版では、TV版では資金面の事情から兼役を余儀なくされていたキャラに、あらためて声優を配置するということで何人かの声優交代が行われています。しかし、それだけでない部分もあって一部のファンが眉をひそめたこともありました。
たとえば劇場版第1作で登場したアムロ・レイの母親であるカマリア・レイです。新たに担当したのが配給会社である松竹の代表的女優だった倍賞千恵子さんでした。これに関して公式発表を聞かずとも、大方の人が「大人の事情」だったと感じます。
第2作以降は理由が想像できないようなキャラの声優変更が目立ちました。筆者が印象的だったのがスレッガー・ロウで、TV版の玄田哲章さんから井上真樹夫さんに変更。その玄田さんがスレッガーの最後の相手であるドズル・ザビの声になっていました。これらの声優変更と直接関係しているかは不明ですが、第2作以降の音響監督はTV版とは違う方になっています。
こうして振り返ってみると、声優変更自体は昔から行われていたことがわかるでしょう。さまざまな事情があると思いますが、ここで近年に話題となったふたつの声優変更についても振り返ってみましょう。
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21世紀に入ってから起きたふたつの声優交代
ひとつ目がTV作品だった『機動戦士Zガンダム』を再編集した劇場版の第2部『機動戦士ΖガンダムII A New Translation -恋人たち-』でのことです。TVシリーズ20周年記念作品でもあった劇場版は、新たな解釈と異なる視点で再構成されました。
そういった理由から大幅なキャストの変更が行われています。何しろ、主人公であるカミーユ・ビダンの声をTV版で演じていた飛田展男さんもオーディションを受けたほど。もっとも飛田さんは無事に富野由悠季監督の期待に応えるレベルの演技を見せ、見事カミーユ役を続投することになりました。
ここで問題になったのが、フォウ・ムラサメ役が島津冴子さんからゆかなさんに変更されたことです。前述の流れなら不思議なこともないのですが、島津さんが「映画出演のオファーがなかった」というコメントを出したところで問題となりました。
この交代劇に関して各方面からさまざまなコメントが出てきましたが、ひとつだけ言えるのは島津さんとの合意のないまま話が進んだということでしょうか。いまだにファンの間でも納得のいかない、遺恨を残した声優交代問題のひとつとなっています。
ふたつ目は劇場作品『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の主人公であるハサウェイ・ノアの声優変更です。
もともと、ハサウェイというキャラは最初に登場した作品『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』から佐々木望さんが担当していました。その後、アニメでの登場はありませんでしたが、ゲームなどで登場する際は常に佐々木さんがハサウェイ役を演じ、ゲーム内で原作となる小説版『閃光のハサウェイ』の物語を再現しています。
その後、『逆襲のシャア』から33年経過して、劇場版アニメとして『閃光のハサウェイ』が公開されることになりました。そして、この時にハサウェイ役を担当したのが小野賢章さんです。
この起用に関して佐々木さんがTwitter上で「知らなかった」というツイートをしたことで、ファンの間で激しい議論となりました。しかし、後に佐々木さんが「キャラクターは声優のものでない」とのコメントを残し、小野さんにエールを送ったことで問題は沈静化しています。
それから、この劇場版で佐々木さんはゲイス・H・ヒューゲスト役で小野さんのハサウェイと共演しました。ある意味でハサウェイ役のバトンタッチだったのかもしれません。この起用にはファンから称賛の声が上がりました。
このように、21世紀に入ってから起こったふたつの「声優交代」と今回に劇場版『SEED』の声優交代を比べると、大きく違う点がひとつあります。それは、公式で交代についての発表を行ったという点です。おそらく何度かあった問題を考慮して、想定されるファンの反発に備えた対応と考えられます。
ファンのなかには納得がいかずに詳細な情報の開示を求める人もいますが、公にできないことも世の中にはあるでしょう。少なくとも公式が一度発表をした以上、これで幕引きと考えるのが普通です。何年後かに詳細が発表されることもあるかもしれません。今はいたずらにネットにあふれる情報に振り回されることなく、ただ新作劇場版を楽しみにしたほうが、ストレスにはならないでしょう。