営業職でもリモートワークが効果的?
「リモートが合わず、非効率な業務も明確になりました。一番相性が悪いのは、労働集約的な“作業”です。コロナ初期、オンラインのカメラを就業中は点けっぱなしにさせ、すべての労働を監視するようなことをしていた管理職もいました。
工場の生産ラインや事務処理を進めていくような作業労働は、対面での時間管理や成果管理が適しており、進捗を自主管理するようなオンラインには合いませんでした」(東北大学特任教授・増沢隆太氏)
リモートワークによる生産性をめぐっては、各所で研究データやアンケートがとられているが、データごとに「生産性は変わらない」「むしろ上がった」「効率が下がっている」などとバラつきがあり、明確な答えはいまだ出ていない。
業種や職種によって大きく異なるのだから、この先も完璧なデータは出ないだろう。その一方で、絶対にテレワークとは合わないと思われた職種で、意外な声もあがっているという。
「当初、リモートワークに反発だらけだった対面の営業職で、相性がいいとされているのです。営業は“お客様と顔をつきあわせなければ誠意が通じない”……、今でもそうした価値観の人はいるでしょう。しかし営業相手の意見として、面倒な接待やら世間話やらをすっ飛ばしていきなり本題に入れるリモート営業(交渉)を、好ましいと思う人が少なくなかったのです。
昔風の接待営業、ご機嫌伺い訪問などを無駄と感じるのは若手の管理職だけでなく、高齢の多忙な上級管理者も同じでした。彼らの多くは時間を凝縮して交渉ができるリモートを、Win-winなツールと受け止めています」(東北大学特任教授・増沢隆太氏)
結局、出社かリモートかはあくまで業務次第であって、どちらかが優れているという二者択一ではない。また、いくら出社のほうが効率がいいからと、週5の出社を義務付ければ、リモートを求める社員が流出してしまう可能性がある。そうなると、また社員を一から育てなおす羽目になり、効率を重視したハズが、元も子もないことになってしまう。
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これからの日本社会はどうなる
多くの企業が今まさに、リモートワークを続けるか廃止するかで悩んでいることだろう。そんな中で、今回のアマゾンの週5出社の義務付けは、日本社会にどんな影響をもたらすのか。
「アマゾンに限らず、イーロン・マスク氏は、コロナ禍がまだ収まっているとはいえない2022年に、早々とテスラ社において週40時間の出勤を命じ、続いて、買収したツイッター社においても在宅勤務を禁止しています。このような “The外資“な会社が、むしろ日本的にも見える週5日出勤を取り入れるということは、そうした旧来の勤務形態や価値観を維持したい経営者にとっては追い風となるでしょう。追従する企業は一定数出ると思います。
ニューノーマルに反対する老害というイメージを持たれがちだった経営層の人々にとって、外資のトップ企業がリモートを廃止しているというのはまたとない援軍であり、『出社してナンボ』という信条を後押しするでしょう」(東北大学特任教授・増沢隆太氏)
これから先、日本の社会、そして世界の社会はどのように変化していくのだろうか。コロナの唯一の功績とも呼ばれた、リモート化の社会が消えてしまう可能性がでてきている。
取材・文/集英社オンライン編集部