骨折の右手は添えるだけ……根性の“ほぼ片手運転”で第4戦富士を戦い切ったJLOC元嶋佑弥。王座への思いが原動力に「今年は本当にチャンスの年」

 スーパーGT・GT300クラスを戦う88号車VENTENY Lamborghini GT3(今大会から車両名が変更)は、第2戦富士でのポールトゥウインで一躍タイトル候補に浮上すると、ランキング3番手でシーズンを折り返した。第4戦富士でも5位に入った88号車だが、この時ドライバーのひとりである元嶋佑弥は右手を粉砕骨折していた。

 元嶋は第4戦の際、右手にテーピングを巻いた状態でレースウィークを過ごしており、それに気付いたファンからは心配の声も挙がっていた。元嶋はレース後にSNSを更新し「レースウィーク水曜日に右手を粉砕骨折してしまい、直前まで参戦できるか微妙な状態でした(自転車の怪我ではない)」と明かしていた。

 レースウィーク金曜日にメディカルチェックをクリアし、出場が叶った元嶋だったが、骨折した右手は痛みが伴うだけでなく強くステアリングを握ることができなかったため、基本的には左手だけを使って予選と決勝を戦ったという。

「めちゃめちゃ痛かったです。右手はシフトアップのためだけに使い、左手だけで走っていました」と元嶋は言う。

「でも自分が悪いので、我慢するしかありません。咄嗟にカウンターを当てる時には左手では足りないので、右手を突いてしまいました。GT500車両と接触があったのですが、その時は激痛が走りましたね」

「できれば休みたかったですが、今年はチャンピオンシップも良いところにいて、そんなわけにもいかないですし、怪我は自己責任なので甘えたことも言えないなと」

 元嶋はほぼ片手での運転を強いられながらも、予選でも好タイムを記録して小暮卓史とのタイム合算で5番手を獲得すると、決勝でも自身の担当スティントを走り切って5位入賞に貢献した。ここで積み上げた6点が、後のタイトル争いで効いてくる可能性もあるだろう。当然パワステが搭載されているとはいえ、元嶋は右手が使えないことによるパフォーマンス面での悪影響はそれほど大きくないと言うから驚きだ。

 9月1日に予定されていた第5戦鈴鹿が延期となったことは元嶋にとって“恵みの雨”となったが、その後もスーパー耐久やGR86/BRZ Cupなどレースが続いた。しばらく片手でレースを戦っていたというが、第6戦SUGOのレースウィークから始まったリハビリにより、手も少しずつ動かせるようになってきたという。

 今年33歳の元嶋にとっては、GT300の王座が狙えるこれ以上ないチャンス。SUGO大会からの変更で給油リストリクターが絞られたことはかなり不利に働くだろうと語る一方で、「今年は本当にチャンピオンを獲れるチャンスの年。最後まで集中して頑張りたいです」と意気込んだ。