ワインダーとモータードライブ
ニコマートELWには、カメラ底部にオートワインダーAW-1からの回転力を伝達するためのカップリングと電気接点が設けられている。接点はボディ側から撮影終了の信号をワインダーに送り、巻き上げをスタートさせるためのもので、シャッターレリーズはボディ側で行う。ニコンFやF2のモータードライブではモータードライブ側からカメラ底面の突き棒を押してレリーズするので、そこが異なるわけだ。ただ、これがワインダーとモータードライブの違いというわけではない。後年のニコンEM用のMD-EやMD-14などもカメラ側でレリーズする形式なのにモータードライブと称しており、他社のものも含めて何がワインダーで何がモータードライブなのかは、明確な定義はないようである。
オートワインダーAW-1側の駆動軸は常にスプリングで原点位置に戻るような力が加えられており、巻き上げが終了すると駆動力が解除されて元に戻るような仕掛けになっている。こうやってスクエア型フォーカルプレンシャッター特有の問題を解決しており、後年のニコンFM/FEシリーズ用のモータードライブMD-12などにもこの仕組みが使われている。
従って、このAW-1やMD-12などは1コマの巻き上げ終了後に駆動力が外れて元に戻る音がカチンカチンとけっこう大きく聞こえ、独特の巻き上げ音となっていた。
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電源スイッチ
ニコマートELの電源スイッチは、それまでのニコマートFTやFTnのものを引き継いでレバースイッチとなっていた。つまり巻き上げレバーの準備角まで引き出すことでスイッチオンとなり、同時にシャッターボタンのロックが外れるというものだ。しかし、ニコマートELWでオートワインダーAW-1を装着すると巻き上げレバーを操作することがなくなる。そうなると電源スイッチオンで引き出された巻き上げレバーが邪魔な存在となるのだ。
そこで、ニコマートELWではシャッターボタンの周囲に電源スイッチのレバーを設け、巻き上げレバーを引っ込めた状態でもこのレバーで電源をオンにすることができるようにした。もちろんシャッターボタンのロック解除もこれに連動している。これは同じくAW-1を使うニコンEL2にも引き継がれている。ただ、レバースイッチは電源スイッチの状態が一目でわかるので切り忘れ防止の効果があったのだが、このシャッターボタン周囲のレバー追加によって、その効果は薄れた。