メルセデスは、夏休み前のベルギーGPで初投入したアップデート・フロアについて比較テストを重ねてきた。しかし、シンガポールGPには旧フロアしか持ち込んでおらず、さらに次のアメリカGPではまた新たなフロアを投入する予定だ。
メルセデスはベルギーGPでフロアをアップデートし、一歩前進することを期待していた。しかしチームがセットアップを試行錯誤した結果、プラクティスでマシンが不安定な挙動を見せたため、決勝レースでは使用されなかった。
投入時にトラブルが起きたにも関わらず、メルセデスは新しいフロアがパフォーマンスを一歩前進させると確信し、オランダGPとイタリアGPの両方で新しいフロアの比較実験を行ない、最終的に新フロアの方が優れているという結論に達した。
しかし夏休み前にルイス・ハミルトンやジョージ・ラッセルが見せていた強さと比べると、これらのレースは比較的期待外れのパフォーマンスだったため、メルセデスは先週末のアゼルバイジャンGPに新フロアを持ち込まなかった。
そして今週末のシンガポールGPには、パフォーマンスパターンもはっきりしない不安定な週末を過ごすことになることから、旧スペックのフロアが持ち込まれている。この決断には、スペアパーツの状況や連戦となるロジスティックス面も後押ししているようだ。
現在、メルセデスのファクトリーはアメリカGPに向けてさらに新しいフロアの開発に集中しており、これが大失敗に終わらない限り、ベルギーGPで投入されたフロアはもう使われないだろう。
メルセデスのトト・ウルフ代表は、チームが最近W15で直面しているバランスの問題は、新旧どちらのフロアにも共通しているようだと語った。
旧フロアで戦ったアゼルバイジャンGPについて、ウルフ代表は次のように語った。
「我々は新フロアと同じような問題に苦しんだ。だからシンガポールでも、同じ問題があるだろう」
「それを抱えながらレースをする必要がある。でもオースティン以降はおそらく新しい仕様になるだろう」
オースティンで投入するアップデートについて、トラックサイド・エンジニアリング・ディレクターであるアンドリュー・ショブリンは、かなり大きなステップになると語った。
「ご存知のように、マシンのスペックは常に進化している。我々は常に毎レース、パフォーマンスを発揮できるよう努力しているんだ」
「現時点では、オースティンにもっと大きなパッケージを持ち込むことに主眼を置いている。それから、今年最後の6レースに向かっていくんだ。その先(のアップデート)はもっと小さなモノになる」
「でも、オースティンのレースでマシンをより大きくアップデートすることが、いま我々が取り組んでいることなんだ」
シンガポールGP初日はウルフ代表の予想が的中。メルセデスの2台はマシンのバランスに苦しみ、ルイス・ハミルトンが11番手、ジョージ・ラッセルが7番手と低調な滑り出しとなった。チームとしては、アメリカGPで投入されるアップデートで問題が解決されることを願うばかりだろう。