オレンジジュースは果汁なしのオレンジドリンクに比べると健康的 / Credit: Canva
フルーツ味のする飲料と言っても、100%果汁のジュース、果汁入りの飲料、果汁が一切含まれないフルーツ風味の飲み物まで、いろいろあります。
こういった各飲料の名称については、法令や規格で細かく規定されているものの、普段、私たちは、その違いをさほど認識せずに、飲み物を手にしています。
ところが今年に入って、カナダのトロント州立大学(Toronto metropolitan University)に所属する研究グループが発表した研究によると、オレンジジュースとオレンジ風味の飲料とでは、その後の血糖値と食事量に与える影響が大きく違うことが明らかになっています。
この結果は、私たち消費者がフルーツ味のする飲料を選ぶ際に、その中身に着目する大切さを教えてくれています。
今回の研究結果は、学術雑誌『Nutrients』に2024年1月12日付けで公開されています。
本記事では、まず日本におけるフルーツ飲料等の名称の違いに触れた上で、この研究を説明していきます。
目次
各フルーツ飲料の違いオレンジジュースはオレンジ風味の飲料よりも健康的
各フルーツ飲料の違い
今から遡ること約10年前(2015年3月4日)、世界保健機関は、肥満や虫歯の予防を目的に「1日当たりの遊離糖類の摂取量を総エネルギー摂取量の10%未満に減らす」ことを推奨しました。
また、その指針では、遊離糖類の摂取を5%未満に抑えることが出来たら、健康効果がより高まる可能性があるとも記されています。
この遊離糖類(free sugars)とは、飲食物に付け加えられる単糖類(例:ブドウ糖、果糖)や二糖類(例:砂糖、乳糖)に加え、果汁、ハチミツなどに元々含まれるものも入ります。つまり、次に詳しく説明するジュースに含まれる糖質も遊離糖類に含まれます。
ここで、日本におけるフルーツ味のする飲料(以下、「フルーツ飲料等」)の種類について説明します。
フルーツ飲料等には、果実ジュース、果実ミックスジュース、果実・野菜ミックスジュース、果汁入り飲料、その他の飲料などがあります。
このうち、商品名に「ジュース」が入っている飲料には、必ず果汁が100%含まれています。ただし、果実・野菜ミックスジュースは、果汁と野菜汁の合計で100%、かつ果汁が50%を超える場合を指します。
なお、ジュースは、製造方法によって、ストレート、濃縮還元と、さらに細かく分けられます。
一方、「果汁入り飲料」とは、果汁が10%以上100%未満の飲料を指し、ジュースと明記することや、パッケージに果物の断面や果汁のしずくを使うことが禁止されています。
また、果汁10%未満または無果汁で甘味料や酸味料、香料を使ってフルーツの風味を出している飲料は、ジュースはもちろんのこと、果汁入り飲料にも分類されず、「その他の飲料」に該当します(例えば無果汁のオレンジソーダ)。
そして、商品にもよるものの、果汁入り飲料またはその他の飲料の中には、果汁とは別に、砂糖類(例:果糖ぶどう糖液糖、砂糖、ぶどう糖)が加えられているものが多くあります。
オレンジソーダには果汁0%の商品もある / Credit: 写真AC
フルーツ飲料等の中でも、ジュースは、かつては健康的な飲み物と捉えられていましたが、最近では糖質の摂りすぎによる健康リスクが世に広まったこともあり、果汁入り飲料やその他の飲料と同じく、健康面でマイナスの印象を持っている人が増えています。
そんな中、今回紹介する実験では、オレンジジュースとオレンジ風味のソーダ(その他の飲料)を飲んだ後の血糖値や、その後の食事量に及ぼす影響を調べることで、遊離糖類が含まれる飲料でも、その中身によって体に与える影響が異なるのかが検証されました。
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オレンジジュースはオレンジ風味の飲料よりも健康的
今回の実験の対象となったのは年齢が18〜45歳、正常体重(BMIが18.5〜24.9)などの基準を満たした36名の男女です。
対象者は最低5日間の間隔を空けながら、次の3種類の飲料条件のトライアルにランダムに参加しました。
・100%オレンジジュース条件(105.6kcal)
・オレンジドリンク条件(119.1kcal)
・水条件(0kcal)
※全て240ml
このうち、オレンジドリンク条件の飲料を調べたところ、炭酸飲料(オレンジソーダ)で、砂糖類は含まれている一方、果汁が含まれていない商品でした。したがって、この研究におけるオレンジドリンクは、日本で言う「その他の飲料」になります。
実験では、対象者は午前8時に実験室に来て、まず同じ朝食を食べて、その2時間後に、指定された飲料を飲みました。
飲料を飲んだ直後から1時間後まで血糖値を測り続けた上で、60分後にピザを昼食として食べました。この際、研究グループは、ピザの量は規定せず、参加者に対して、「心地よく満腹を感じるまで」食べるように促しています。
また、昼食後は実験室を離れることが許されましたが、その日の残りの時間帯に摂取した飲食物が記録されたとともに、CGMデバイスを装着することで、血糖値に関するデータ(間質液中のグルコース濃度)が計測されました。
このような実験の結果、飲料摂取から60分後の昼食や1日合計の摂取カロリーは、100%オレンジジュース条件の方がオレンジドリンク条件よりも少ないことが分かりました。
また、有意差こそなかったものの、100%オレンジジュース条件は水条件よりも摂取カロリーが低い傾向もありました。
具体的な数値は以下の通りです(数値は平均値)。
■昼食の摂取カロリー
100%オレンジジュース条件: 1151kcal
オレンジドリンク条件: 1269kcal
水条件: 1240kcal
■1日を通した摂取カロリー
100%オレンジジュース条件: 2717kcal
オレンジドリンク条件: 3137kcal
水条件: 2975kcal
そして、興味深いことに、飲料に含まれる糖質の量を考慮しても、各飲料を飲んでから1時間後までの血糖値の上昇度合いは、オレンジドリンク条件よりも100%オレンジジュース条件で小さいことが分かりました。
100%オレンジジュース(左)とオレンジドリンク(右)を飲んでから1時間後までの血糖値の上昇度合い(各飲料に含まれる糖質の影響を考慮済) / Credit: Robayo et al. Effect of 100% Orange Juice and a Volume-Matched Sugar-Sweetened Drink on Subjective Appetite, Food Intake, and Glycemic Response in Adults. Nutrients (2024)
また、実験室を離れた後から11時間後までのグルコース濃度は、100%オレンジジュース条件がオレンジドリンク条件のみならず、水条件よりも低くなっていました。
100%オレンジジュース(■)、オレンジドリンク(▲)、水(●)を摂取し、昼食をとった後の間質液中のグルコース濃度 / Credit: Robayo et al. Effect of 100% Orange Juice and a Volume-Matched Sugar-Sweetened Drink on Subjective Appetite, Food Intake, and Glycemic Response in Adults. Nutrients (2024)
これらの結果から、研究グループは、昼食の前に100%オレンジジュースを飲むことは、オレンジドリンクを飲むよりもその後の摂取カロリーを抑え、血糖値も低くなるとまとめています。
そして、100%オレンジジュースとオレンジドリンクの反応の違いの一因としては、オレンジジュースには、血糖値の上昇を抑える働きを持つポリフェノールが含まれることが関係している可能性があると考察しています。
今回の結果は、血糖値が気になる人はもちろん、ダイエットをしたい人にも興味深い結果であるものの、あくまでも飲料を1回飲んだ際の急性影響を見たものであり、習慣的に飲み続けた際の慢性影響については不明です。
また、一口に「その他の飲料」と言っても、各飲料の中身は商品によって様々な上、世界保健機関の指針のとおり、100%ジュースであっても過剰に摂取することは健康に望ましくない影響を与えるでしょう。
したがって、今回の研究結果をもとに、オレンジジュースはダイエットに良いと解釈するのには無理があります。
その一方、この結果は、普段私たちが何気なく手にしている飲料であっても、その選び方によっては、その後の食事量にまで著しい影響を与える可能性があると解釈することは出来るでしょう。
日本で発売されているフルーツ飲料等のうち、ジュースの場合には、ストレートか濃縮還元かを含めて、パッケージや商品情報にその旨が記載されています。
フルーツ味のする飲料を日頃から飲む人は、その中身にも関心を持ってはいかがでしょうか?
参考文献
STUDY: 100% ORANGE JUICE INTAKE RESULTS IN LOWER DAILY BLOOD GLUCOSE COMPARED TO ORANGE DRINK
https://elitenews.uk/study-100-orange-juice-intake-results-in-lower-daily-blood-glucose-compared-to-orange-drink/
元論文
Effect of 100% Orange Juice and a Volume-Matched Sugar-Sweetened Drink on Subjective Appetite, Food Intake, and Glycemic Response in Adults
https://doi.org/10.3390/nu16020242
ライター
髙山史徳: 大学では健康行動科学、大学院では体育学・体育科学を専攻。持久系スポーツの研究者として約10年間活動。 ナゾロジーでは、スポーツや健康に関係する記事を執筆していきます。 価値観の多様性を重視し、多くの人が前向きになれる文章を目指しています。
編集者
ナゾロジー 編集部