自身の薄毛と向かい合いながら、その体験をもとに漫画『東京ハゲかけ日和』を描く作者のトリバタケハルノブ氏。今回は薄毛だけでなく、アラフォー特有の加齢による人生の「自己責任」のあり方を考えてみたら……。
「薄毛」自己管理できない人扱いの時代なのか⁉︎
子どもの頃「アメリカでは太った人は出世できないんだって」という話を誰かから聞いたことがある。あれは本当だったのだろうか。
家族を含め周りの人に尋ねてみたところ、みんな似たような話をどこかで聞いた覚えがあるらしい。しかし話の出どころは誰も知らない。まるで都市伝説みたいだ。
同様に「歯ならびが悪い人は〜」「喫煙者は〜」という話もあった。僕は幼い頃から歯ならびにコンプレックスがあり、とはいえ矯正具を付けてからかいの対象になることも怖かったので(そういう時代だったのです)、「日本人に生まれてよかった!」と心の底から思ったものだ。
それにしてもこの都市伝説はまるっきり今でいうルッキズム。
ひどい時代!と言いたくなるけれど、大人になった今、だんだんと「そういうことか」と納得できてきた部分もある。
僕は若い頃、いくら飲み食いしても太らない体質が自慢だった。しかし残念ながら老いは平等。年々代謝が落ち、仕事柄の運動不足も相まって腰回りに贅肉がつき出し、気がつけばお腹も出てきた。本当にアメリカのビジネスマンじゃなくてよかった。タバコは20代で止めたけど歯並びは相変わらずだし…
…というのは結局言い訳なのだろう。
「仕事柄運動不足」は理由にならない。SNSを見渡せば、売れている同業者はたいてい運動習慣を持っていて、早朝のジョギングや日々のジム通いを報告しあっている。歯並びだって大人になってからでも矯正できるタイミングはある。ろくに働いてなかった僕は、その費用が捻出できなかっただけ。
つまりあれは自己管理の話だったのだ。「太った人は出世できない」ではなく「体質や職種や老化を言い訳にせず、若い頃から自分を客観視し、日々節制・努力し続けられる性質の人が出世しやすい」ということ。
強いから生き残る。適者生存という話なのかもしれない。世間は厳しい。反ルッキズムと適者生存は、そもそも別のレイヤーの問題か。
今さら売れっ子のイラストレーターに出世できるとも思わないけれど、僕も少しは自己管理したほうがいいのかな、と考えはじめたところで気がついた。件の都市伝説の出世できない項目に「薄毛」は入っていない。
それは「薄毛」が自己管理できるものではなかったからだろう。しかし今やAGAは治療できるもの、という認識が広がりつつある。もしかすると今後、薄毛も自己管理すべき項目に入ってくる時代がやってくるかもしれない……。
信じるか信じないかはあなた次第です!
文/トリバタケハルノブ