ミシュランは来年のMotoGPに新しいフロントタイヤを投入する計画を撤回した。ミサノテストで新タイヤを試したライダーからはポジティブな反応があったものの、ミシュランは保守的な方針を選んだ。
今週末のエミリア・ロマーニャGPに先立ち、金曜日に計画変更のニュースが各チームに伝えられた。
ミシュランは今年、悪天候のためにムジェロで予定されていた最初のテストが中止になるなど、ニュータイヤを走らせる機会が限られていた。先週ミサノで行なわれた公式テストはニュータイヤをテストする重要な機会となったが、MotoGPの序列に大きな影響を与えかねない新タイヤの投入という決断を下すには、30分間という短い時間では不十分だと判断された。
ミシュランは現在、2026年に新タイヤを投入することを目標に、より多くのデータを収集することにしている。それまでにはタイヤがすべてのバイクとコンディションに適していることが確認できるとミシュランは考えているのだ。
「ミサノでのテスト終了後、ライダーからのフィードバックとデータの両方を分析した結果、新しいフロントタイヤは当初の予定通り2025年に導入するのではなく、それ以降に導入することを決定した」
ミシュランのMotoGPディレクター、ピエロ・タラマッソはそう説明する。
「この決断を下した理由はいくつかある。ひとつは今年、フロントとリヤの両方に新しいコンパウンドを投入したことで、すべてのサーキットとタイムから、それらが機能し、グリップとパフォーマンスの両面で優れていることがわかった」
「とはいえ、まだ限界には達していないので、このタイヤでまだ改善する余地がある。そのため、来季もこのコンパウンドを継続することにした」
「もうひとつの理由は、ミサノでのテストがうまくいったことだ。彼らはみな、このタイヤにはポテンシャルがある、グリップがある、少し動くけれども良い感覚と良いフィードバックが得られる、と感じていた」
「ただし、現在のラバーとは挙動が違うので、感覚に慣れるのに時間がかかるし、自分のライディングスタイルに合わせる必要があることも指摘された。これらには時間がかかる」
「一部のライダーは数周で正しいフィーリングを見つけることができたが、新しいフロントタイヤが理解され、馴染むには時間が必要であることはすでに分かっている」
タラマッソは、ミシュランはすでに2024年の残り期間と来年初めに向けて大規模なテストプログラムを用意していることを明かした。
「こうしたことを考慮すると、我々ミシュランとしては、製品をより良くするために、さらにいくつかの変更を加えたいと考えている」
「ベースはいいし、ポテンシャルもある。でも、もっとテストが必要だ。新しいバージョンをバレンシアに持って行き、来年初めのセパンとタイのテストでもさらにテストする」
「そして2025年シーズンを通して、様々なサーキット、様々なコンディションでテストを行う。ミサノでの30分だけでは投入の決断は下せないからだ。すぐにでもサーキットに持ち込みたいのは事実だが、心よりも頭で考えなければならない選択だ」
「最も合理的な選択肢は、まず他のコースや状況での効果を確認することだ。焦る必要はない。一度決めたら後戻りはできないのだから。これが正しい決断だと信じている」
タラマッソは生産工程も含めて、新タイヤの特徴について次のように強調した。
「当初から、我々はこのタイヤに大きな期待を抱いていた。なぜならそれは、新しい生産プロセスで生まれるモノだからだ。このプロセスによって今後、より速くより高度な技術的進化が可能となる」
「新しい素材を採用したことで、より軽量になり、プロファイルも新しくなった。また内圧や気温の変化の影響を受けにくくなるはずだ」
「あと一歩のところまで来てはいるが、まだ我々が望んでいたような状態には至っていない。そのため、もう少し時間をかけてあらゆる場所で、特にすべてのブランドとライダーにとってうまく機能するタイヤを提案することにした」
「忘れてはならないのは、このコンパウンドがバイクの進化に伴うものだということだ。なぜなら、このコンパウンドは現行マシンのサイクルが終了する2026年だけでなく、2027年にデビューするニューマシンも使うタイヤになるはずだからだ。新旧レギュレーション間の安定性を保証することが、ポイントのひとつになるだろう」
2016年にブリヂストンからMotoGPクラスの単独タイヤサプライヤーを引き継いだミシュランだが、MotoGPとの現行契約の有効期間は26年の現行ルールサイクル終了までとなっている。
しかしタラマッソ曰く、ミシュランは新世代のMotoGPマシンがサーキットを走る2027年以降もMotoGPに留まるという明確な意志を持っているという。
「ミシュランがMotoGPに参戦し続けることは秘密ではない。すでにドルナと話し合っており、シーズン終了後に契約を延長することが目標だ」と彼は語った。