フェイクビデオやビデオフラウド対策
AIによって高品質なフェイクビデオや音声の生成が容易になっている。これに対して欧州では、倫理面や表現の自由、社会正義や人間としての権利という非常に本質的な観点から、日本以上の危機感を持って望んでいる印象を受けた。ただし、まだ啓蒙レベルを脱しているとは言えない。
またやはりAIによってビデオフラウドがより高度になっていく懸念も強く示されている。ビデオフラウドとは、広告収益を不正に得るために人工的に動画広告の視聴回数や視聴時間を水増しする行為である。
以下にその詳細を説明する。
こうした虚偽や不正に対して、日本と欧州の取り組みには、いくつかの重要な違いがある。特にEUは、この分野でより積極的かつ包括的なアプローチをするべきであるという姿勢が見える。
法的枠組みとしてEUは、デジタルサービス法(DSA)やデジタル市場法(DMA)など、包括的な法規制を導入している。同時にオンラインのプラットフォームの責任を明確に定義し、違反に対して厳しい罰則を設けている。
これに対して日本は既存の法律の改正や個別のガイドラインの策定が中心と言える。さらにAIそのものに対しても、AI技術の使用に関する包括的な規制枠組みの構築を目指すべきだというのが全体の論調である。
なおこれらの取り組みにおいて、は放送やネットという区切りの概念は当然ない。
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DVBとEBUに目立った動きなし
DVBやEBUによる次世代の放送に対する取り組みについて、新たな進展は見られなかった。これはDVBのブースを見れば一目瞭然で既視感満。昨年の写真と差し替えても気が付かないのではないだろうか。
これはDVB-IやDVB-NIPが目指している次世代の放送の姿が2030年頃をイメージしているので、まだ具体的なユースケースとなるコンテンツの開発が進んでいないためだろう。教育に使えるといったレベルの話は、イノベーションとしては弱いからだ。
DVBはATSC3.0との比較で見ると、電波でIPを送るというATSCに対して、電波もネットもシームレスに取り扱うという、思想とも言うべき点で両者は異なっている。
DVBのこの考え方を具現化するコンテンツはもう少し、AIやXRの技術がこなれる必要がある。そのためにはあと数年は動向を見守っていくべきだと思う。
ひょっとすると、穿った見方をするのなら、別に全部ネットでできるのでわざわざ(無理して)電波を使わなければならないのだろうか、といった疑問符は現時点では終えてはいない。