〈独占・野田佳彦元首相〉もう“立憲共産党”とは呼ばせない「中道、そしてやや右寄りのゾーンを取り込む」「裏金や世襲議員の跋扈といった古い政治のドブさらいをします」

「悪夢のような政権」と言われて

たかまつ 総理を目指すと仰いましたが、総理になったら何をしますか。

野田「信なくば立たず」ですから、まず政治を正します。特に、裏金のような汚れた政治とカネの問題をクリーンにすること、そして先ほど言った世襲政治が跳梁跋扈するような古い政治を払しょくすること。今回の自民党総裁選のように表紙だけ替える疑似政権交代では政治を正せないので、真の政権交代を目指し、その先頭に立つのが私の仕事かと。

国民の信頼を取り戻し、同時にやっていかなければならないのは、分厚い中間層の再建。私が総理だったときに「分厚い中間層を復活させる」ことをテーマに掲げましたが、それ以降、年々格差が広がって今は深刻な状態になっています。

例えば一世帯の平均所得が530万円とすると、それ以下の世帯が6割もいる。この収入の格差問題にはぜひともメスを入れたいですし、安倍元総理と党首討論で約束した議員定数削減も必ず実現したい。

たかまつ 民主党政権時代に、何を間違えられたと思いますか。

野田 党運営ですね。熟議を重ねて決め、決めた以上はそれに従うという文化が醸成できなかった。議論を尽くし、決めなきゃならない時期になっても、反対の人はそのまま反対、さらには党を出ていくグループもあった。

挙句には「悪夢のような政権」というレッテルを貼られてしまいましたけど、われわれがつくった子育て支援の拡充や高齢者福祉だけでなく、若年世帯に対する社会保障などは、自民党政権になっても踏襲されている。むしろ、横取りされたと言ってもいい。だから私たちの政権はそんなに否定されることもなかったと思ってますが、正当に評価してもらうように強く訴えなければならなかった、という反省はあります。

たかまつ 安全保障に関しても心配する声が少なからずあります。

野田 日米同盟が軸になってルールメイキングしながら、世界の繁栄と平和を実現していくというのが基本。そのルールメイキングに中国なども加わってもらい、力による現状変更はダメという世界的世論を作り上げていくのが日本の役割だと思います。私の前の前の政権のときに日米関係が壊れたときがありましたけど、その後、修復はできたと思っています。そんな経験を踏まえ、「もしトラ」でも「もしハリ」でも対応できるように準備はしたい。

(広告の後にも続きます)

中道からやや右寄りのゾーンを取り込む

たかまつ 枝野(幸男)さん、泉(健太)さんが代表を務められたときは、何がまずかったと思いますか。

野田 人の課題を私が言うのも…おふたりともそれぞれの立場で頑張られたと思いますよ。ただ、これから政権を取りに行こうとするときに、中道からやや左とのお付き合いが強すぎるという偏ったイメージができあがってしまいました。

しかし、政権交代の機運が高まった今、本来は自民党を支持していたけど離れていった保守層はかなりいるので、その人たちに届くようなメッセージを送りたい。つまり、中道から右寄りの人たちを視野に入れて、政権を取りに行くのが基本戦略です。現在は枝野さんも泉さんも同じ考えだと思いますが、私の持ち味を生かせるのは、中道、そしてやや右寄りのゾーンなんですよ。 

たかまつ 政権交代を目指すうえで、野党共闘や政策協定はどう考えていますか。

野田 それは選挙が終わってから。

たかまつ 政策協定を結び、選挙のときに有権者に判断してもらうということではしないのですか?

野田 各党は党勢拡大のために自分たちの政策を強く訴えるはずです。ただ、政治改革については野党の考えはほぼ一致していますし、教育無償化、選択的夫婦別姓など重なる政策もあります。

だから政策協定というより、選挙結果が出た後で、それぞれの議席に応じ政権内で一緒にこういうテーマをやりましょうとか、あるいは閣外で協力をいただくとか、話し合いによっていろいろなバリエーションが出てきます。

それでも、選挙区調整はできる限りやれるように、対話を欠かさない関係を構築しておくことが基本じゃないでしょうか。総選挙で自民党・公明党を過半数割れに追い込むのが我々の基本戦略ですから。