9月22日、宮城県のスポーツランドSUGOでスーパーGT第6戦の決勝レースが行なわれた。ウエットコンディションの難しいレースを制したのは、GT500クラスが37号車Deloitte TOM'S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ)、GT300クラスが65号車LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗)だった。
9月1日の第5戦鈴鹿が台風の影響で延期になったため、後半戦最初のレースとなった今回のSUGO戦。しかし週末は天候不良に見舞われ、土曜朝の公式練習は赤旗6回。午後の予選は天候不良で異例のキャンセルとなった。これに伴い、決勝レースのスターティンググリッドは公式練習のタイム順となった。
決勝日も朝から天候優れず、特に午前中は非常に強い雨が降った。そのため12時から予定されていた決勝前ウォームアップも1時間遅れでスタートし、決勝レースは予定の13時半から、14時22分からのセーフティカースタートに変更された。ただその甲斐あって天候は回復し、ウォームアップが始まった13時頃からは雨も収まり、空も明るくなり始めた。
スタート時刻までに路面が乾き切るほどではなかったものの、レース中にドライタイヤに交換するチームが出てくるのではないか……そういった雰囲気の中、300km(84周)のレースが始まっていった。
■GT500
GT500のポールポジションは、38号車KeePer CERUMO GR Supra。2番手以降も14号車ENEOS X PRIME GR Supra、19号車WedsSport ADVAN GR Supra、36号車au TOM'S GR Supraとスープラ勢が続き、日産勢最上位は5番手の12号車MARELLI IMPUL Z、ホンダ勢最上位は6番手の64号車Modulo CIVIC TYPE R-GTとなった。
セーフティカー先導の下で3周走行した後、4周目からレーススタート。トップの38号車KeePer CERUMOは石浦宏明のドライブで逃げを打つが、2番手以降は数周で目まぐるしく順位が変わった。2番手にはポイントリーダーの36号車au TOM'Sが上がり、12号車IMPUL、64号車Modulo CIVIC TYPE R-GT、14号車ENEOSというオーダーに。19号車WedsSportはペースが上がらず後退した。
ペースが良いのは36号車au TOM'S坪井翔。坪井は16周目のハイポイントコーナーで38号車KeePer CERUMO石浦を交わしてトップ浮上。後続に対するリードを広げていった。
26周目、接触によるGT300車両のストップによりセーフティカー(SC)が出動。これでピットレーンは一旦クローズドとなり、SC先導中の29周終了時にオープンされた。この時点でピットウインドウは開いているためドライバー交代を伴うピット作業も戦略上可能となった。
32周目にリスタートが切られると。23号車MOTUL AUTECH Z、39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraはルーティンのピットストップに向かった。しかし路面がなかなか乾かないこともあり、交換したタイヤはウエットタイヤだ。一方トップ争いは、36号車au TOM'Sと14号車ENEOSが接近。さらには、14番手スタートだった37号車Deloitte TOM'Sの笹原もその背後に迫ってきた。
上記のスープラ3台に加え、17号車Astemoシビックも加えた4台が数珠繋ぎとなってのバトルとなったが、37周目に動いたのが笹原。4コーナーで14号車ENEOS、馬の背で36号車au TOM'Sを交わして一気にトップに立った。一方、36号車は4番手にポジションを落とした。
42周目、GT300クラスの11号車GAINER TANAX Zがバックストレートでクラッシュ。これを見てフルコースイエロー(FCY)やSCが出ると踏んでか、各チームが一斉にピットへ。実際にFCYが出されてピットレーンクローズとなるまでの間にピットレーンに進入し、ルーティン作業を行なった。履くタイヤはドライタイヤだ。一方、24号車リアライズコーポレーション ADVAN Z、8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTだけはステイアウトを選択してトップと2番手につけたが、この段階でタイヤもドライバーも交代していないことから、勝負権を失う可能性が高い、厳しい状況であった。
FCY後に出されたSCの先導は49周で終了。笹原からバトンを受け継いだジュリアーノ・アレジが駆る37号車Deloitte TOM'Sが、3番手ながら実質的なレースリーダーとして50周目に入っていった。前の2台がほどなくしてピットインしたことでアレジは名実共にトップ。2番手には、ポールスタートの38号車KeePer CERUMOの大湯都史樹が浮上してきたが、アレジもファステストラップを刻むなど負けじとプッシュし、10秒前後のギャップを保った。
アレジはそのまま首位を守り切りトップチェッカー。彼と笹原にとって感動の初優勝となった第3戦鈴鹿に続き、2勝目を挙げた。2位は38号車KeePer CERUMO、3位は12号車IMPULだった。
36号車au TOM'Sは今回も粘り強いレースを見せて4位。坪井/山下健太組は49ポイントで選手権首位をキープしたが、37号車の笹原/アレジ組が48ポイントに迫り、TOM'Sのランキングワンツーとなった。
■GT300
GT300は公式練習で速さを見せたミシュラン勢、ダンロップ勢が上位を占めた。ポールポジションは20号車シェイドレーシング GR86 GTで、2番グリッドは61号車SUBARU BRZ R&D SPORT、3番グリッドは777号車D'station Vantage GT3と続いた。
まだ路面は濡れているということもあり、ほとんどのマシンがウエットタイヤでスタートしたものの、公式中継の情報では16番グリッドとの18号車UPGARAGE NSX GT3と19番グリッドの4号車グッドスマイル 初音ミク AMGがドライタイヤでのスタートを選択したとのこと。3周のセーフティカーランを挟み、4周目からレースが本格的にスタートした。
レース序盤は20号車シェイド、45号車PONOS FERRARI 296、7号車Studie BMW M4のミシュラン勢が速さを見せ、1-2-3を形成。そこから少し離されてダンロップ勢というオーダーとなった。一方スリックタイヤでギャンブルした2台はライバルより1周10秒以上遅く、厳しい状況下での走行を強いられた。
上位争いでは45号車PONOSのケイ・コッツォリーノのペースが良く、清水英志郎が駆る首位の20号車シェイドに迫る。そして14周目のSPインでオーバーテイクし、45号車がトップに躍り出ると、コッツォリーノはライバルに対して10秒以上のマージンを築いた。
そんな中、3番手を走っていた20号車シェイドの右リヤタイヤが脱落。清水は緊急ピットインしたが無念のガレージインとなった。これにより、ミシュラン陣営の一角が崩れた。
その後、ドライタイヤに交換したアウトラップで接触があった25号車HOPPY Schatz GR Supra GTがSPアウトでストップ。これによりセーフティカーがコースインし、45号車PONOSの大量リードは失われてしまった。
GT500が32周目に入るタイミングでリスタートが切られた。45号車PONOSが首位をキープしたが、2番手の7号車Studieもニクラス・クルッテンが2秒以内のギャップで食らいついていった。3番手には、前戦ウイナーの65号車LEON PYRAMID AMGがジャンプアップしてきた。
そして40周に近付く頃から、ドライタイヤの61号車SUBARUらのラップタイムが先頭集団を上回るようになってくる。これを見て2号車muta Racing GR86 GT、88号車VENTENY Lamborghini GT3らがピットに駆け込み、スリックに交換。そんな中で11号車GAINER TANAX Zがバックストレートでクラッシュしたことから、フルコースイエロー(FCY)やセーフティカー(SC)を見越して、先頭集団含めたさらに多くの車両がピットに向かっていった。程なくしてFCY、SCと出されていき、ピットレーンはクローズされた。
48周目(GT500先頭50周目)に再開。トップの45号車PONOSを駆るのは女性ドライバーのリル・ワドゥーだが、その直後には65号車LEONの篠原拓朗が迫った。しかし篠原も決め手を欠き、ポジションが入れ替わらないまま周回が過ぎていった。
しかしながらプレッシャーをかけ続けた篠原。67周目の最終コーナーでついに並びかけ、1コーナーでワドゥーをオーバーテイク。首位に浮上した。
篠原はそこから後続を突き離してトップチェッカー。65号車LEONの蒲生尚弥/篠原組は2連勝を飾った上に、ポイントランキングでも首位独走状態となった。2位は45号車PONOS、3位は777号車D'stationだった。