スポーツランドSUGOで行なわれたスーパーGT第6戦は、ウエット路面からドライ路面に変化していく難しいレースとなったが、その中で歴史に残る記録が生まれた。GT300クラスの2位には45号車PONOS FERRARI 296のケイ・コッツォリーノ/リル・ワドゥー組が入ったが、フェラーリのGTファクトリードライバーでもあるワドゥーはスーパーGTで表彰台に乗った初めての女性ドライバーとなったのだ。
厳密には、前身の全日本GT選手権時代の1995年、開幕戦鈴鹿のGT2クラスで岡野谷純(ランティック スカイライン)が2位に入ったという記録が残っているが、それを含めても女性ドライバーの表彰台獲得は29年ぶり。また同レースのGT2クラスはエントリー5台であり、ランティック スカイラインは欧州車販売の外国屋スカイラインから4周遅れの2位という結果であった。それを考えると、計26台による戦いで一時は首位も走りながらも2位でフィニッシュしたワドゥーの戦いぶりは、まさに快挙と言える。
45号車フェラーリは、5番グリッドからレースをスタート。ウエット路面で強さを見せるミシュランタイヤとのパッケージも相まって、前半担当のコッツォリーノはトップに立つと独走状態を築いた。「僕たちは持ち込んだタイヤの中で、インターミディエイトを使いました。少し発動に時間がかかりましたが、そこからタイヤが作動するレンジに入ったら、究極のペースで走れました」とコッツォリーノは振り返った。
コッツォリーノは後続に10秒以上のリードを築いていたが、セーフティカー出動によりそのマージンを失った。そこからレース折り返しのタイミングで他車のアクシデントが発生したことで、セーフティカーが出ることを見越してピットに。ワドゥーにドライバーチェンジしたが、セーフティカーランが終わりレースが再開する頃には、65号車LEON PYRAMID AMGの篠原拓朗が背後に迫っていた。これについてコッツォリーノは「セーフティカーがなければ、リルにはもっと楽なレースをさせてあげられた」と悔しがっていた。
残り周回は30周以上。篠原のペースが明らかに上回っているように見えたが、ワドゥーは長く首位を座を明け渡さなかった。しかし残り13周のところで勝負あり。篠原が最終コーナーで並びかけ、1コーナーのブレーキングでワドゥーをオーバーテイクした。
粘りの走りを見せたワドゥーだが、篠原から首位の座を守り切るのが難しいことは承知しており、できる限りの仕事ができたと振り返った。
「正直、かなりクレイジーなディフェンスをしないといけないのは分かっていたので、難しかったです」とワドゥーは言う。
「ただ最終的にはできる限りのことをしましたが、最終コーナーで並ばれて守り切ることができませんでした。実際私たちは彼らと戦えるペースはなかったと思うので、ベストを尽くせたと思います」
また一方の篠原は、早々にワドゥーを仕留めたかったものの、まだ路面にウエットパッチが残る中、リスクを冒したくないと考えていたと語った。
「ウエットコンディションからドライコンディションに変わる中で、クリッピングポイントの先の部分、コーナーのミドルとなる部分で水が残っていました」と篠原は言う。
「そこは単独で走っていても、コーナーの立ち上がりやミドルで滑ることがありました。ブレーキング勝負で(相手の懐に)入ることはできたと思いますが、その先で曲がれなかったり、というリスクは感じていました。だからこそ、確実にいけるところを探していました」
65号車LEONを抑えることはできなかったものの、2位表彰台という結果を残したワドゥー。この結果は悔しいものか、満足できるものかと尋ねると、彼女は次のように語って相方コッツォリーノを称賛した。
「チームと私たちにとって良い結果になりました」
「ケイは今日素晴らしい仕事をしてくれて、マシンを先頭に持っていってくれました。ミシュランタイヤのストロングポイントが雨なのは分かっていましたし、もっと雨が降って欲しかったのですが、ああいう状態になってしまいました。スリックタイヤでは厳しいことも分かっていましたし、雨がなければこういう結果にもならなかったことも理解しています」
「ケイが今日素晴らしい走りをしたおかげで、チームにとって大きな成果を残せました。今年か来年のうちに、ドライで彼ら(LEON)と表彰台を争いたいですね」
またコッツォリーノもワドゥーを褒め称え、「ああいったトップ争いでメンタルを強く維持できる素晴らしい選手なので、組んでいて楽しいです。これからも楽しみです」とコメントした。