グローブのデザイン
スノーグローブのデザインは、雪上という厳しい自然条件下で使われるために、見た目の美しさよりも機能性を追求してデザインされているものがほとんどだ。機能的であるためには、どのようなデザインであるべきか。そこには素材や構造だけでなく、手を覆い、手指を動かすという必要性からくるデザイン上の工夫が凝らされる。
形状
雪山で冷えてかじかんだ手でウエアのジッパーを開閉するのは意外とストレスフルなものだ。ポールを握ったり、ビンディングを調節したり、ゴーグルを装着したりと、手指が少しでも動かしやすいほうがいいに決まっている。手の動きにダイレクトに影響するのがグローブの形状だ。
■ 5本指・3本指・ミトン
スノーグローブはおよそこれらのタイプに分かれる。
メリット | 課題 | |
5本指 グローブ | フィット感が高い・手指が微細に動かせる | 指先が冷えやすい・乾きにくい・(素材にもよるが)指の部分がこわばりやすい |
3本指 グローブ | 親指と人差し指は独立しているので物をつかんだりするには必要十分・まとまっている部分は温かい | フィット感は感じ方に個人差が大きい・3本という動かし方に慣れる必要あり |
ミトングローブ | 指がまとまっていることで温かい・ポールは比較的握りやすい・シワやヨレができにくいので傷みにくい | フィット感は低い・微細な動きができない・ジャンプしてのグラブトリックはかなり大変 |
’24ー25季に業界初のクワッド(4本指)グローブが登場!
HIMARAK
BRANDY
Material: deer
¥22,000
雪上での作業が細やかにスピーディーにできて、薬指と小指は温かいまま。やわらかく保温性に優れ、擦れキズにも強いディアスキンを使用。-15℃~3℃に対応。
ありそうでなかった4本指のモデルが日本初としてHIMARAKから登場!「BRANDY」は日本鹿の革を採用。作業性は5本指に劣らず、寒くなりがちな薬指と小指の保温性を保持するという優れモノ。3本指と5本指の課題を見事に解決した融合モデルとでもいおうか。鹿革特有のしなやかでもっちりとした質感で、使い心地は抜群。-15℃~3℃に対応。
■ エルゴ・グリップ
デザインにおいてHESTRAでも採用しているのが、「人間工学に基づき、最も手の力を抜いた自然な状態の指に合わせ、湾曲した形状に設計した」という「ErgoGrip(エルゴ・グリップ)」という技術だ。オートバイやゴルフのグローブで有名な日本の手袋メーカー松岡手袋が開発したもので、2009年に革製品の素材や加工技術を競う世界大会で、加工技術部門の大賞である「テクノロジー・アワード」を受賞、特許も保有している。
ErgoGripは、人間の手の自然なカタチを得るために、ミリ単位の曲線と動きを研究し、高次元のフィット感を実現、手指の形状と動きにそったパーツのカッティングと縫製で、手指を動かす際のエネルギーロスが少ない。手の形状に合わせることで表面にシワやヨレができにくく、ポールをグリップするのも楽で快適だ。道具を扱うのにも指先が動かしやすいためストレスがない。雪山で長時間つけていても疲れないというわけだ。
縫製
グローブはさまざまなパーツから成っているが、その縫い合わせ方によってもフィット感や快適性が変わってくる。特に指先は細やかな動きをする際に縫い目が当たると違和感を覚えたり、正確な動きがしづらくなることがある。縫製も手指の動かしやすさや使用感に直結する重要なポイントなのだ。
機能性を重視した縫い目
指の平側の関節を一つ一つのパーツに裁断し、関節の縫い目の位置を指の合間に収まるように設計。指を曲げた形状で立体的に縫製することで、高いフィット感とスムースな使用感が得られる。
(広告の後にも続きます)
グローブの使い勝手の工夫
グローブはユーザーによって、どのように使うかはいろいろ。保温性重視ならミトン、手指の動かしやすさなら5本指、そのいいとこどりをした3本指、といったタイプがあるが、最近ではさらに面白い工夫のされたタイプも登場している。その代表格がこちら。
SWANYのフリーライディング向けの「Bocco」は、こんなふうに革のミトンの中に薄手のインナーグローブが入っていて、ファスナーを開ければ中から5本指がニョキッと大きく出せて、普通の5本指グローブとして機能する。
滑走中は保温性・防水性の高い本革ミトンでぬくぬく。そして、雪上での細かい手先を動かしたいシーン、例えばシェルのジッパーを上げ下げしたり、ゴーグルのレンズを付け替えたり、スマホをいじったり、そんなときはファスナーを開けて5本指のインナーで対応。手指が外気温にさらされることがないので、手は暖かいままでいられる、なんとありがたいことか!