2次元ならではの鍛え上げられた肉体を持つキャラクターの再現は、実写化作品で大きなハードルとなります。しかし、20kg以上の体重の増減という、過酷な役作りによって実現されたキャラクターもいました。



勝矢さんが映画『ゴールデンカムイ』で演じた牛山辰馬のキャラクタービジュアル  (C)2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

【画像】え…っ?「鈴木亮平の腹筋いつ見てもスゴ」「大沢たかおの腕がこんな太くなるとは」 こちらが実写で再現された衝撃キャラです(7枚)

2次元的なビジュアルの背景には、血の滲む努力が!

 現実ではいなさそうな荒唐無稽な人物が多数出てくるマンガの実写化作品においては、筋骨隆々のキャラクターを演じるために肉体改造に挑む俳優も少なくありません。並々ならぬ努力を重ねた結果、「もう本人じゃん」「再現できなくない? と思ったけど、ここまで寄せてくれるなんて」と、原作ファンも納得する作り込みになったケースもありました。

 実写化に向けた肉体改造といえば、やはり鈴木亮平さんをイメージする方も多いのではないでしょうか。映画『俺物語!!』ではいかつい男子高校生「剛田猛男」を演じるのに約30kgもの増量を、『HK 変態仮面』ではバキバキの肉体を持つ主人公「色丞狂介」を演じるため一度15kg増量したうえで脂肪を削ぎ落とすという、ストイック過ぎる肉体改造を行っています。

 そんな鈴木さんをはじめ、実写化作品では数々の俳優たちが「2次元」ならではのキャラクターを再現するため、過酷な肉体改造に挑戦してきました。

『幽☆遊☆白書』で綾野剛が演じた「戸愚呂弟」

 2023年にNetflixオリジナルドラマとして配信された『幽☆遊☆白書』は、イケメンキャラの「蔵馬(演:志尊淳)」や「コエンマ(演:町田啓太)」など、いかにも2次元的なキャラクターも多く、公開前は実写化できるのか疑問に思うファンも少なくありませんでした。

 しかし、追加キャストとして、強敵である「戸愚呂兄弟」役で滝藤賢一さん(兄)と綾野剛さん(弟)のビジュアルが公開されると、「意外にありかも」「完成度高くて笑った」と好意的な意見も出るようになります。

 普段はサングラスをかけた大男で、時折ユーモアにあふれた発言も見せる戸愚呂弟は、自在に増強できる筋肉によって圧倒的な戦闘力を持つ悪役で、原作屈指の人気キャラでした。

 全身が筋肉の塊のような見た目となる100%の姿はCGを使って再現されていましたが、綾野さんは通常の状態である戸愚呂弟を演じるため、約3か月というわずかな準備期間で肉体改造を行い、10kgの増加をもとに演じていたことをラジオ番組「THE TRAD」出演時に明かしています。

 ティザー映像では、雇い主である「左京(演:稲垣吾郎)」から「新しい仕事の依頼だ」と声を掛けられ、暗闇から戸愚呂兄を肩に乗せたまま「面白い案件だと良いけどね」と静かに現れる強烈な登場シーンがありましたが、非戦闘時でも感じられる筋骨隆々なビジュアルはまさしく戸愚呂弟だといえるでしょう。

 また、綾野さんは実写映画『亜人』でも、主人公「永井圭(演:佐藤健)」の宿敵で元軍人のキャラクター「佐藤」を演じるため、撮影か月半前からトレーニングを行っていました。

 撮影前のギリギリの時間まで筋トレを行う本気の役作りには、監督をはじめとする製作陣も「(筋肉が)CGのよう」と驚愕の声があがっていたようです。

『ゴールデンカムイ』で勝矢が演じた「牛山」

 マンガ『ゴールデンカムイ』の実写映画は、原作で筋骨隆々のキャラクターが勢ぞろいしていることから「本当に再現できるのか」という疑問の声も多く聞かれていました。

 なかでも、作中屈指の強じんな肉体と常人離れした怪力を持つ柔道家の「牛山辰馬」は、「ここまで体格の良い俳優もいないのでは」「圧倒的最強キャラだからムズい」とファンの間でのキャスト予想でも、これといった名前が挙げられずにいる状況でした。

 その牛山を演じたのは、過去にも『テルマエ・ロマエ』で主人公「ルシウス」の友人「マルクス」や、『あしたのジョー』の「マンモス西」など、マンガキャラも演じた実績のある勝矢さんでした。柔道の鍛錬で硬くなった、額にあるはんぺんのような四角いコブは特殊メイクも再現され、さらに大柄で「不敗の牛山」とも称されるほどの肉体は、「もはや本人」「よく見つけてきたな」とファンから絶賛されています。

 もともと強面の悪役も演じることが多く、大柄な勝矢さんでしたが、「牛山を演じるには、太ったおじさんではダメ」という思いから約20kgもの減量を成功させたことをインタビューで明かしています。

 さらに勝矢さんは違和感のないを演技ができるよう、知人の柔道家から柔道を教わったそうです。体格はもちろん、細かい所作も原作に近づけるよう本気で役作りに挑んだからこそ、強烈な強さと個性を持つ牛山の再現度が高かったのかもしれません。今後の続編ドラマ『連続ドラマW ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編―』では、アニメでも映像化されなかった「ヒグマの背負い投げ」の場面にも期待が高まります。



青柳翔さんが「アグニ」を演じたドラマ『今際の国のアリス』キービジュアル (C)麻生羽呂・小学館/ROBOT

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大幅な増量で「誰か分からなかった」との声も?

『宮本から君へ』で一ノ瀬ワタルが演じた「拓馬」

 同じく2023年に配信されたNetflixオリジナルドラマ『サンクチュアリ -聖域-』で主人公の新人力士、猿桜を演じて大きな注目を集めた一ノ瀬ワタルさんは、2年半に及ぶ制作期間のなかで40kg以上の体重増加を含めた肉体改造を行いました。

 そんな一ノ瀬さんは、以前にも実写映画『宮本から君へ』でも元ラガーマンで、恐ろしい怪力を持つキャラクター「真淵拓馬」を演じるにあたり、2か月で33kgもの増量を行なっています。

 拓馬は主人公「宮本浩(演:池松壮亮)」は恋人である「中野靖子(演:蒼井優)」を襲ったうえ、復讐のためにやってきた宮本をカウンターの一撃で叩き伏せ、ボコボコに殴り倒すという衝撃の悪役キャラクターです。実写版でも、圧倒的な体格で宮本に勝ち目がないように感じられる説得力がありました。

 過酷過ぎる肉体改造を成功させた一ノ瀬さんは、そのうえでクライマックスの非常階段での決闘シーンの際に、惨めな負け方もしっかり再現し印象的な悪役として絶賛されています。

『今際の国のアリス』で青柳翔が演じた「アグニ」

 2020年からNetflixで実写ドラマ化された『今際の国のアリス』は、廃墟と化した東京「今際の国」を舞台に、生死をかけた「げぇむ」に挑む人びとを描いた作品です。

 全員助かることがほぼ不可能で、犠牲者も絶たない理不尽な「げぇむ」を前に、仲間内でも裏切りが発生するなど挑戦者たちは過酷な状況下に置かれます。主人公「アリス(本名:有栖良平/演:山崎賢人)」は、今際の国からの脱出を目的とする集団「ビーチ」に出会いました。

 その「ビーチ」を圧倒的な戦闘力で制圧する「アグニ」は、劇団EXILEの青柳翔さんが演じています。青柳さん扮するアグニは、黒いタンクトップからのぞく太い腕と、眼光の鋭さが原作からそのまま出てきたような印象を与えました。

 元自衛官で肉体系の「げぇむ」を得意とするアグニを演じるため、青柳さんは約20kgもの増量に加え、原作のアグニに近づけるため丸刈りにしたことを、同作のプレミアイベントで明かしています。

 細身のイメージがあり、過去には少女マンガの実写化作品にも出演していた青柳さんの大幅な増量には、視聴者から「最初誰か分からなかった」「役作りが本気過ぎる」と驚きの声も続出していました。