【国交省により処分対象に】大手不動産会社も手を染める「不動産の囲い込み」って何? 「売主からカギが届きません」とウソ。手数料を4倍もしぼり取るさらに悪質な手口とは…

国交省は宅建業法の通達を改正し、2025年から不動産業者の「囲い込み」を処分対象とした。囲い込みとは売主から預かった物件を嘘をついて他社に紹介せず、自社で囲い込んで買主を探し、買主からも手数料を取ろうとする不正行為のことだ。誰もが名前を聞いたことがある大手業者もこの不正を行なっているという。そして囲い込みは、手数料を4倍しぼり取る「さらに悪質なスキーム」の入口に過ぎないという。実態を専門家に取材した。

堂々と違法行為に手を染める業者

中古の戸建てやマンションなど、物件の売買を仲介する際、不動産業者は売主または買主から「取引額×3%+6万円」を限度に仲介手数料を受け取ることができる(取引額が400万円超の場合)。5000万円の物件だとしたら、156万円の仲介手数料となる。

通常、売主から依頼を受けた業者は「レインズ」など業者間のネットワークを通じて募集をかけ、別の不動産業者を通じても買主を探す。
一方、自社で買主を見つけることができれば「両手仲介」という形になり、売主と買主双方から3%の仲介料を得ることができる。一気に手数料が倍額手に入るというわけだ。両手仲介自体は違法ではない。

だがこの仕組みが、「囲い込み」という不正を誘発する。囲い込みとは売主から依頼を受けた不動産業者があの手この手を使い、他業者の仲介を通じた購入を阻止しようとする行為のことだ。

倍額の手数料が手に入る両手仲介を実現するため、自社で買主を見つけるまで物件を囲い込む。さて、囲い込みには具体的にどういった手段があるのだろうか。ドラマ『正直不動産』の監修も行なう不動産業者、株式会社不動産流通システム【REDS】に取材した。

「あからさまな手段として、そもそもレインズに載せないという方法があります。売主が不動産業者に仲介を依頼する契約には、複数社に依頼できる『一般媒介契約』と、1社だけに依頼する『(専属)専任媒介契約』があります。専任媒介契約では宅建業法上、仲介業者は売りに出された物件をレインズに掲載しなければなりませんが、特に悪徳な業者は法に反して掲載自体をしないのです」(REDS・深谷十三社長)

堂々と違法行為をしている業者がいるということだ。さらに、レインズに掲載したとしても、のらりくらりとかわす手法もあるようだ。

 「他の業者からの問い合わせに対し、『担当者が外出している』などといって対応しない手法があります。折り返しの連絡を約束しても電話をしてこないのです。『売主から鍵を預かっていない』と嘘をつく業者もいます。最近では『クリーニングしてから見せる』という口実でかわす方法が流行っていますね。囲い込みをする業者は他社媒介の購入希望者がいかに内覧できないようにするかを考え、自社で買主を見つけるまで先延ばしし続けます」(REDS・渡部親三氏)

レインズでは「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」と3段階で取引状況を表示できる。公開中以外のステータスに設定しておき、他社からの問い合わせが来ないようにする方法もあるという。ではどういった業者が囲い込みに手を染めるのだろうか。

「大手、零細と規模は関係なく、業界で横行している手段です。大手でもエリアや店舗によって積極的に行なうところがあります。さすがにレインズに載せないという手段は零細企業に限られますが、大手でものらりくらりと先延ばししようとします。最初の1か月は囲い込みを行ない、2か月目以降は他社仲介を受け付けるという社内ルールがある業者も存在するようです」(渡部氏)

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さらに悪質な「買取再販業者」スキーム

囲い込みはそもそもの取引件数が多い首都圏の中古マンションに集中している。深谷社長によると、肌感覚で10件中2~4件が囲い込みされているといい、業界では当たり前の手法のようだ。そして囲い込みに関しては大手が“目指すべき姿”としてきた理想の形があるという。どういう形式か。

「売主から依頼を受けた大手不動産業者が子分の買取再販業者に買わせる形です。囲い込みをして依頼物件を売らずに干しておき、売主が『この値段では売れない』と勘違いして根負けするのを待って、安い値段で子分の再販業者に売らせるのです。

期限などの都合で現金が早めに欲しい売主に対し、救世主として現れた“白馬の王子様”のように再販業者を紹介します。その後、買ってくれたお礼の『専任返し』という形で再販業者は大手と専任媒介契約を結び、物件が売れればふたたび仲介手数料を支払います」(深谷社長)

この形では、大手が売主―再販業者間の両手仲介で合計6%の手数料を得ることができ、再販業者―買主間の両手仲介で再び6%の手数料を受け取ることができる。安値で売って損をした売主に代わり、大手は“12%”の手数料を手にするのだ。例えば次のケースが想定される。

「この商習慣において、再販業者は売買の差額から利益を得ることができます。例えば売主が5000万円での売却を希望していた物件を囲い込み、根負けするのを待って3500万円で再販業者に買わせる。そして再販業者は物件をリフォームして5980万円で売りに出す形が想定されます。大手が買主を仲介してくれるので再販業者は損することはありません。この取引で再販業者は購入価格の10~20%の利益を得られます」(渡部氏)

このケースで大手不動産会社は3500万円の6%+6万、そして5,980万円の6%+6万円の仲介手数料を得ることができ、総額でおよそ590万円になる。売主は、5,000万円とまではいかなくても、囲い込まれなければ3,500万円より高く売れたかもしれない。買い替えなどで売主の資金繰りに期限があるときに狙われやすいという。