同性どうしの婚姻が認められていない日本では、2015年に東京都渋谷区で初めてパートナーシップ証明制度が認められた。その後、制度を作る自治体が徐々に増えてきている。チャンネル登録者数7万人超のYouTuber「はぴLIFEチャンネル」の「ぽっち」さんと「みち子」さんは、2021年にパートナーシップ宣誓交付を受けたレズビアンカップルだ。今年4月には、友人男性から精子提供を受けて妊娠したことを発表。出産までの道のりについて、生後1ヶ月未満の新生児がいる自宅でインタビューを行なった。
「へその緒が首に絡まって、赤ちゃんの心拍が弱まってしまって……」
長身でモデルのようなモード系ファッションのみち子さん(33)と、小柄でかわいらしいフェミニン系ファッションのぽっちさん(31)。YouTubeに公開されている2人のデート動画は、「付き合いたてのころを思い出す」や「2人のやりとりを見ていると和む」と、LGBTに関心がある人のみならず、多くの人の人気を集めている。
記者は、そんなレズビアンカップルのYouTube「はぴLIFE」の人気を探るべく、彼女らの自宅に向かった。そこでは、まだ出産から約2週間しか経っていないみち子さんをはじめ、ぽっちさん、息子さん、そして愛犬・ダリくんが迎えてくれた。
ーーご出産、おめでとうございます。初めての出産はいかがでしたか?
みち子 クリニックに関しては、ぽっちの希望で無痛分娩や動画撮影など、出産に関する計画を相談できる「バースプラン」がしっかりしているところを選びました。
出産に関しては、前日の夜中2時くらいに陣痛のような痛みがきたのですが、朝方5時半ごろからその間隔が短くなって、痛みも強くなってきて。朝7時に病院に連絡したところ「お風呂入って、ご飯食べてきて」と言われたので、そのあと病院に向かい、そのまま入院しました。病院に着いてからは、けっこう慌ただしくて大変でしたね。
――どのように大変でしたか?
みち子 まず、「へその緒が首に絡まって、赤ちゃんの心拍が弱まっている」と言われたんですよ。もともとぽっちも出産に立ち会えるはずだったのですが、スタッフの皆さんが慌ただしくなり、それどころじゃなくなってしまって……。
帝王切開に切り替わる可能性もあって麻酔も打ったのですが、ドクターの指示どおりに横向きになったり、ベッドに座ったりを繰り返しているうちに、13時ごろに生まれてきてくれて。出産直前になって「危ないかも」と言われていたので、今は「本当に無事に生まれてきてくれてありがとう」って気持ちです。
あと、出産後にぽっちの姿が見えたときは、安心して大号泣してしまいましたね。
――無痛分娩は、ぽっちさんが希望したのですね。
ぽっち そうです。無痛分娩に関して、よく「お金がかかるから、旦那さんが無痛分娩を許してくれなかった」「贅沢だ」「甘えだ」という声も聞きますけど、私としては意味がわからないですね。私は、みち子に絶対に痛い思いをしてほしくなかったんです。
みち子 私自身はそのあたりに関してまったく無頓着なので、ぽっちが細かく面倒をみてくれて、感謝しています。
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同性カップルが子育てしづらい日本の現状
――今回、みち子さんが先にご出産されたのには、何か理由があったのでしょうか。
ぽっち 2人とも子宮や卵巣の超音波検査などのプレコンセプションケアを受けていて、どちらも将来的に妊娠できる可能性があることはわかっていました。それで、2年かけてドナーとなるお相手を探しつつ、同時に妊活を進めていたんです。でも、年齢的にみち子を優先させたほうがいいかなと思い、私は妊活をいったん中止することにしました。
――ドナーのお相手はどのように見つけたのでしょうか。
ぽっち 日本では現在、男性と婚姻していない独身女性や同性カップルに対する人工授精や体外受精は非合法となっているんです。だから、はっきりと言えないところがもどかしいんですけど、最終的に男性10人くらいの候補から慎重に選んだうえで、お互いにルールもきっちり決めて、1年くらい交流をしたあとに妊活に協力してくれることになりました。
みち子 「認知はしなくていい」「養育費はいらない」「子どもの行事に参加したり、面会したりしたいときは来てもらう」とか、細かく決めたよね。やっぱり子どもにとって父親の存在を隠すことなく、会える環境にしてあげられることが大事だなって思って。
――ということは、戸籍上、現在みち子さんは母子家庭ということになるのでしょうか?
ぽっち そうなんです。つい先日、みち子が産褥期(さんじょくき)なので、出生届を私1人で出しに行こうと、事前に役所に確認したんです。でも、本人ではない場合は委任状が必要なうえ、かなり細かく指定どおりの文言を書かなければならず、1カ所でも間違えたら出し直しになるって言われて……。
みち子 「出し直しになるくらいなら、一緒に行っちゃったほうがいいね」と。なので、私も行きました。
ぽっち そのときに「あー、まだ日本だと同性カップルは子育てしづらい部分があるな」とひしひしと感じました。「今後、この子が病気になったときや不測の事態が起こったとき、どこまで私1人で対応できるんだろう」と少し不安になったくらい。
みち子 そうだよね。私たちは「同性愛者の婚姻関係を認めて!」と主張したいわけではないのですが、血の繋がりがないばかりに、親として当然の動きができないというのは、なかなか難しいなと感じましたね。