マンガのなかには、連載を通して驚くほど絵柄が変わる作品も存在します。絵の技術が向上したり、作品の方向性が変わったりと、さまざまな理由で絵柄は変化し、序盤と終盤でまるで別の作品のように見えることも少なくありません。今回は、ネットでもよく話題になる「ビックリするぐらい絵が変わったマンガ」を振り返ります。



『ああっ女神さまっ』最終第48巻(講談社)

【画像】え…っ? 「本当に同じ人?」「1巻と最終巻で変わりすぎ」 こちらが 『ああっ女神さまっ』女神のご尊顔の変化の記録です(7枚)

序盤と終盤で別人レベル

 人気マンガのなかには、連載中に驚くほど絵柄が変化した作品があります。絵の上達やコンセプトの変化など、絵柄が変わる理由は多々あり、作品の序盤と終盤で、まるで別人が描いたように見えることもあるのです。今回は、ネットでもたびたび話題になる、「ビックリするぐらい絵が変わったマンガ」を振り返ります。

『ああっ女神さまっ』

 マンガ『あぁ女神さまっ』(著:藤島康介)は、1988年から2014年まで「アフタヌーン」で連載されていた作品で、アニメ化もされ人気を博しました。平凡な大学生「森里螢一と」、彼の前に降臨した女神「ベルダンディー」の交流や螢一の大学生活など、多様な内容が描かれている同作は、その長い連載の間に絵柄が大きく変化したことで知られています。

 偶然、女神ベルダンディーに電話をかけた螢一が、「どんな願いでも1つ叶えてあげます」と言われ、冗談半分で「君のような人がずっと僕のそばにいてほしい」と願ったところから物語は始まりました。同作の最大の魅力は、ベルダンディーや彼女の姉妹であるウルドやスクルドなどの女神たちの美しさです。

 しかし、連載期間が26年という長期のため、時代に合わせて絵柄が変化しており、読者からは「1巻と最終巻じゃ別人レベル」「変わりすぎでは?」という意見も見られました。それでも、「序盤は古い絵柄だが、すぐに進化して気にならなくなる」など、変化した後の絵柄を好む意見も多数みられます。

 藤島先生は『あぁ女神さまっ』の連載中に、「サクラ大戦」シリーズや「テイルズ」シリーズなどの大ヒットゲームのキャラクターデザインも担当しており、「これらの仕事がマンガに影響を与えたのでは?」という意見もありました。初期の絵柄の人気も高いものの、時代に合わせてアップデートされた先生の絵が、多くの支持を得ていることは間違いありません。

『バクマン。』

 マンガ『バクマン。』(原作・大場つぐみ、作画・小畑健)は、2008年から2012年まで「週刊少年ジャンプ」で連載され、アニメ化や実写映画化もされたヒット作品です。そして、漫画家を目指すふたりの少年、「真城最高」と「高木秋人」の奮闘を描いた同作は、キャラや設定、ストーリーの面白さだけでなく、絵柄の変化も注目されました。

 連載初期は『DEATH NOTE』でも知られる小畑健先生の緻密な作画や凝った構図で読者を楽しませていましたが、連載が進むにつれてコメディ調のデフォルメされたシーンが増え、軽めの絵柄に変化していったのです。絵の変化が顕著になる単行本13巻が発売された際には、下描きをせずにペン入れをする「白鳥シュン」というキャラが登場しており、「小畑先生が実際にこの方法を試しているのでは?」という噂もありました。

 この大きな絵柄の変化に驚いた読者もいましたが、実写映画化した際の対談記事で、小畑先生は「この作品の主役がセリフだということに気付いて、絵を意図的に変えていた」と語っています。他の「ジャンプ作品」と比べて、『バクマン。』はセリフ量がかなり多いマンガだったため、作中の真城のように、小畑先生も原作の魅力を引き出すべく、さまざまな工夫を凝らしていたようです。

『ロザリオとバンパイア』

 2004年に「月刊少年ジャンプ」で連載を開始した『ロザリオとバンパイア』(著:池田晃久)は、2007年に「ジャンプスクエアSQ」に場所を移して、『ロザリオとバンパイア season II』とタイトルも変えながら2014年まで続き、2008年にはTVアニメ化もされた人気作です。

 妖怪だけが通う学園「陽海学園」に入学してしまった人間の少年「青野月音」が、吸血鬼の少女「赤夜萌香」との出会いから成長していくという物語で、キャラのかわいさとシリアスバトルやラブコメなど多様な展開が好評でした。そして、連載を通じて作者の画力が大きく上達した作品としても有名です。

 同作は、連載当初から十分に上手かったものの、キャラのかわいらしい印象が強調された絵柄でした。しかし、連載が進むにつれて画力が上がり、絵柄も大人っぽく変わっていったのです。とくに、『ロザリオとバンパイア season II』になってからは、読者から「萌香が美しすぎる」「月音イケメンになりすぎだろ」という意見が出るほど、絵柄の変化は顕著でした。

 現在は「紗池晃久」と名義を変えて活動している先生は、さらに進化した絵で『GHOST GIRL ゴーストガール』を連載中です。