メルセデスのチーム代表を務めるトト・ウルフは、ルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルがF1シンガポールGP後にメディア対応の義務をスキップしたことについて、両ドライバーが”オーバーヒート”していたと説明した。この対応については、FIAも容認したという。
気温31度、湿度76%という高温多湿の厳しい気象条件のマリーナベイ市街地コースを62周走るという過酷なシンガポールGP。2008年に初開催されて以降、このコースでセーフティカーが出動しなかったのは今回が初めてであり、ドライバーたちが休憩できなかったことも過酷さに拍車をかけた要因だった。レース終盤には、ラッセルが無線でコックピットがサウナ状態だと訴えるシーンもあった。
ドライバーふたりの健康状態について、ウルフ代表は次のように語った。
「ふたりともオーバーヒートに苦しんでいたが、今は大丈夫だ。彼らは氷風呂に入り、それが少しは助けになったと思う」
ハミルトンは3番グリッドからスタートして6位でフィニッシュ。最初のスティントで履いたソフトタイヤが、彼のレースを躓かせる結果となった。ラッセルは最終的に優勝したランド・ノリス(マクラーレン)に1分以上の差をつけられたものの、グリッド位置と同じ4位でフィニッシュした。
メルセデスが「レースを読み違えた」ことを認めたウルフ代表は、ハミルトンをソフトタイヤでスタートさせた理由を説明した。
「基本的に、モナコのような大行列のレースが繰り広げられるシンガポールの傾向を踏まえ、ソフトタイヤならスタートでチャンスを与えられると判断した」
「それが唯一のオーバーテイクのチャンスだった。あれは我々全員が共同で下した間違った判断だった」
「良いオフセット戦略のように感じたけど、リヤタイヤのデグラデーションは一方通行で、厳しかった」
「そうしたロジックが背景にあった。我々が決めたことが裏目に出たんだ。だが、クルマが遅すぎるという事実は隠せない」
F1は昨年のカタールGPでドライバーの体調不良が続出したことを受けて、再発防止に取り組んでおり、コックピット前方のノーズ上部に2つ目の冷却吸気口を設けることが認められた。さらに現在、簡易なエアコンシステムをコックピットに搭載できないかFIAが試行錯誤している段階だ。