近所にジャンクフード店やバーがあると「行きつけ」になり、心不全リスクが高まる
一方で、店の密集度合いに限らず、店との単純な距離の近さも大きな影響を与えます。
パブやバーに近い場所(500m未満)に住む人は、心不全のリスクが13%も高かったのです。
またファーストフード店に最も近い場所に住む人たちのグループは、近所にファーストフード店がない人(2km以上)に比べて心不全のリスクが10%高くなりました。
徒歩で通えるような場所にファーストフード店があると、心不全リスクが10%も高まる / Credit:Canva
家の近くにバーやファーストフード店があるなら、そこが「行きつけの店」となり、ついつい出向いてしまうのでしょう。
「徒歩で行ける距離」なら、なおさらそうでしょう。
ちなみに、②レストランまたはカフェテリア のカテゴリーでは、心不全との有意な関連性は見つかりませんでした。
レストランなどではファーストフード店と比べて、健康的な食事が提供されることが多く、また利用の気軽さの面から考えると訪れる頻度が控えめになるからかもしれません。
そして今回の研究では、大学の学位を持たない人や、ジムなどの運動施設にアクセスできない都市部の成人においても、心不全のリスクが高い傾向にありました。
このことから研究チームは、「教育や環境の改善が軽食の選択に対して良い影響を及ぼし、心不全のリスクの低減につながるかもしれない」と考えています。
一方で、研究の対象者は94%がヨーロッパ系白人であり、サンプルに偏りがあります。
より正確な結果を求めるためには、サンプルサイズをさらに拡大する必要があるでしょう。
ファーストフード店が近くにないと、自然とヘルシーな料理を作ることが増え、健康的な食生活を送りやすいのかも / Credit:Canva
今回の研究からは、心不全の発症リスクは食環境の影響を受けることが示唆されます。
過去には、アメリカのオーガスタ大学(Augusta University)によって、「ファーストフード店が多く、スーパーは少ない地域」と「がん死亡率」にも関連性があると報告されました。
これらを考慮すると、私たちの健康は、私たちが思っている以上に、住んでいる場所の影響を受けるのかもしれません。
ジャンクフードをついつい食べてしまわないためには、ジャンクフードをそもそも買わないことが大切であり、そのためには近所にファーストフード店がないことがもっとも重要なようです。
なんだか人間の意志の弱さも感じさせる研究結果ですね。
参考文献
Living near pubs, bars and fast-food restaurants could be bad for heart health
https://newsroom.heart.org/news/living-near-pubs-bars-and-fast-food-restaurants-could-be-bad-for-heart-health
Living near three or more bars, fast-food restaurants could raise heart failure risk
https://www.healio.com/news/cardiology/20240227/living-near-three-or-more-bars-fastfood-restaurants-could-raise-heart-failure-risk
元論文
Ready-to-Eat Food Environments and Risk of Incident Heart Failure: A Prospective Cohort Study
https://doi.org/10.1161/CIRCHEARTFAILURE.123.010830
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。