これぞマッカートニーポップというべき素晴らしさ

話をポールに戻して、迎えた5月10日、ついにポールのニューアルバム『タッグ・オブ・ウォー』がリリースされた。2年前の『マッカートニーⅡ』とは違い、事前告知も行き届き、前評判も高く、注目度が高まったなかでのリリースだった。大きな期待感をもったまま、学校帰りに立ち寄った秋葉原の石丸電気で購入(特典はポスター)し、家に帰ってレコードを聞いたとき、感動のあまり言葉を失った。メロディ、演奏、アレンジ等々の細部まで作り込まれたポップミュージック、これぞマッカートニーポップというべき素晴らしさを目の当たりにし、本気を出したときのポールはこんなにすごいんだ、ポールを信じてよかったと思った。

なにせ来日逮捕で信頼を失い、ジョンの死でビートルズはジョンだった、というイメージが跋扈し、ポールには完全に悪者となっていたなかでの『タッグ・オブ・ウォー』は、その評価を回復させる起死回生の一作であった。オリコンチャートでも1位を獲得、以降のポール史を見ても、作品のクオリティ、話題性、セールス、自分の気持ちなど、いろいろな意味でここがピークだったような気がする。