【MotoGP】モルビデリ、開幕前大クラッシュで実は”記憶喪失”だったと明かす。「家族のことも分からなかった」

 プラマックからMotoGPに参戦中のフランコ・モルビデリは、2024年1月の自主練中の転倒でプレシーズンテストを欠場しなくてはいけなかった。

 彼は当時、転倒後の一定期間、記憶喪失状態にあったことを明らかにした。

 今年1月、モルビデリはドゥカティがポルティマオで開催したWSBKのプライベートテストに相乗りし、ドゥカティの市販マシンによるトレーニングを行なった。

 そして他のドゥカティ陣営のライダーも参加したこのトレーニングで、モルビデリは大クラッシュを経験した。幸い大きな怪我は無かったが、頭部を打ってしまい血栓もできていたため、2月6日から行なわれたセパン公式テストと、2月末のカタール公式テストを欠場するはめになった。

 そんなモルビデリは最近イタリアの『La Repubblica』紙のインタビューで、病院で頭部の負傷から回復するまでの間、記憶喪失となり家族すら認識できない状態にあったと明らかにした。

「あの事故の真相は、僕にも完全な形で語られたことはないんだ」

「僕は記憶を2週間にわたって失っていた。とても親密な関係にある人達のことが分からなかったし、大切な家族のことも分からなかった。もう無理なように見えたよ」

「この世界の全てに恐ろしさを感じていた。でも幸運なことに、僕は記憶や意識が少しずつ戻り始めていった。日に日に細かなところが戻ってきて、僕の脳は以前の機能を取り戻し始めた」

 その後モルビデリはテストに参加できないまま2024年シーズンの開幕戦を迎えた。当時の開幕戦の状況を、彼は次のように振り返っている。

「このミーティングの2週間前まで、僕はまだ少し“ボケた”状態だった。でもプラマックの僕のチームの皆も、周囲のスポーツ・ファミリーも素晴らしかった」

「バイクに戻って来るのはかなりタフなチャレンジだった。2023年の最終戦から3ヵ月、(MotoGP)バイクに乗っていなかったわけだからね」

「1ヵ月はトレーニングもしていなかった。怪我から回復して来たところで、そのためにはじっとしていることが必要だったからね」

 モルビデリは2023年限りでヤマハを離れドゥカティ陣営のプラマックへと移籍したが、テストの欠場によって基本的にぶっつけ本番のデビューとなってしまった。

 2020年にランキング2位となって以来、ヤマハで苦戦が続いていたためドゥカティのマシンへの乗り換えはチャンスだったが、こうした状況もあり前半戦は特に出遅れてしまっていた。

 モルビデリは1月のクラッシュによって、MotoGPキャリアが台無しになりそうになった後、立ち直るために歯を食いしばったと振り返っている。

「ヤマハで厳しい2年間を経験した後にああいった打撃を受けたわけだけど、自分自身にこれが最後の打撃だと言い聞かせるんだ。歯を食いしばってね」

「人生はどの瞬間でも試練に遭遇する可能性がある。僕は様々なことを経験してきたと言える自信があるけど、そのたびに逆境を乗り越えられるように十分強くあらねばならないと学ぶんだ」

「一人の人間として、母や婚約者、家族が僕のそばにいてくれたことは幸運だったと言うほかない。自分が愛されているということが分かったし、それに値する存在でありたいと思っているよ」

Additional reporting by Lena Buffa