JRや私鉄など鉄道業界には以前からある「乗り放題きっぷ」。バス業界にも、路線バスには一部エリアで用意されているが、長距離の都市間バスの乗り放題というのは見かけなかった。
2020年10~12月には北陸、関西、中国、四国のJRバスを対象とした「西日本高速バス乗り放題きっぷ」が5日間乗り放題で9800円と激安で話題になったこともあったが、これは1500枚の限定販売だった。
鉄道には、JR九州の「旅名人の九州満喫きっぷ」(3日間1万1000円)があり、エリア内の私鉄・第3セクターが利用可能であるものの、青春18きっぷ同様に新幹線・特急には乗車できない。「ぐるっと九州きっぷ」(3日間1万4300円。ネット購入の場合)という別の乗り放題きっぷなら別途購入で乗車できるが、こちらはJR九州の路線のみとなっている。
そうした中、九州では季節に関係なく、路線バスに加えて都市間バスが「乗り放題きっぷ」を常時販売している。九州7県+山口県の下関・長門エリアを網羅した「SUNQパス」がそれだ。一部公営バスを含む、46社局が参加し、関門海峡や熊本~島原、鹿児島~桜島などのフェリーも対象になっている。これ1枚あれば九州内での移動にはほぼ困らないという優れモノである。
SUNQパスは、全エリア対応の3日間(1万1000円)と4日間(1万4000円)、北部九州+下関・長門3日間(9000円)、南九州3日間(9000円)の4種類。
筆者も取材やプライベートの旅行で何度かSUNQパスを利用したが、3列シートの都市間バスも多いので移動中も快適。また、熊本~別府を結ぶ「九州横断バス」、熊本~天草の「快速あまくさ号」など、沿線の眺めが絶景の路線も少なくなかった。
さらに、きっぷ購入者は各観光名所や飲食店、ホテルなどが割引になるという特典もついている。ただ安いだけの乗り放題きっぷではないのだ。
秋の行楽に九州への旅を計画している方は、現地での移動の足として活用してみるといいだろう。
(高島昌俊)
*写真は熊本~別府を結ぶ九州横断バス