Credit: canva
地球にはこれまで星の数ほどの生物が誕生し、繁栄と絶滅を繰り返してきました。
今こうした生命進化の物語を私たちが知っているのは、何よりも「化石」のおかげです。
化石がなければ、ジョーズを丸呑みできるほど巨大なメガロドンがいたことも、子供たちに大人気の恐竜がいたことも知らずじまいだったでしょう。
化石はまさに地球の過去を収めるタイムカプセルなのです。
ナゾロジーでも化石発見のニュースをよく取り扱ってきましたが、では、そもそも死んだ生物はどんな手順で化石になるのでしょう?
また化石の作られ方にはどのようなパターンがあるのでしょうか?
化石の語源から人類による研究史もふまえ、化石のイロハについて見ていきます。
目次
人類はいつ頃から化石を知っていた?化石が作られるパターンとは?恐竜が化石化するプロセスを見てみよう!
人類はいつ頃から化石を知っていた?
化石(fossil)とは、過去に存在した動植物の遺骸や痕跡が地層中に埋もれて保存されたものを指します。
発見されるものの多くは動物の歯や骨ですが、他に皮膚や筋肉などの軟部組織から、足跡や巣穴などの痕跡も含めて「化石」と総称されます。
化石の語源は、ラテン語で”掘り起こされたもの”を意味する”フォッシリス(fossilis)”に由来します。
人類はいつ頃から化石を知っていた? / Credit: canva
化石の存在は古くから人類によって知られていました。
石器時代の遺跡では、クロマニョン人が巻き貝の化石から作った首飾りが見つかっています。
ただ彼らは化石の正体が何なのかは知らなかったでしょう。
人類が最初に化石について考察したのは、紀元前7世紀頃の古代ギリシアとされています。
その当時はすでに化石を「過去の生物」と考える向きがあったようですが、万学の祖・アリストテレスは「不思議な力で石の中に生まれるもの」と誤った見解を示していたそうです。
その後もレオナルド・ダ・ヴィンチを含む多くの偉人が化石について考察していますが、科学的な学問としては18〜19世紀になるまで実質的な進歩はありませんでした。
化石研究が本格化したのは18〜19世紀から / Credit: canva
しかし1796年に、フランスの博物学者であるジョルジュ・キュヴィエが現生のゾウの骨格とゾウによく似た化石の詳細な比較研究をし、この化石が現生のゾウとはまったく異なる古代の絶滅生物であると結論付けました。
こうした命名されたのが「マンモス」です。
それから程なく、シベリアの永久凍土で氷漬けになったマンモスが発見され、キュヴィエの主張が決定づけられました。
そして1811年に、イギリスの古生物学者であるメアリー・アニングが魚竜や首長竜の化石を次々と発見し、その解剖学的な特徴について詳しい研究を始めます。
彼女の活躍をきっかけに化石研究が盛んになり、恐竜学の開拓へと繋がったのです。
それでは、化石はどのようなプロセスを経て作られるのでしょうか?
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化石が作られるパターンとは?
化石の作られ方にはいくつかのパターンがありますが、最も基本的なものは、死んだ動植物が堆積物(泥、砂、火山灰など)に埋められることで石化する方法です。
このとき、皮膚や筋肉などの柔らかい軟部組織は微生物によって分解されてなくなり、硬い歯や骨、殻だけが残されます。
ここに堆積物が積もっていくと、堆積物の中のミネラル(石の元となる成分)が歯や骨にゆっくりと染み込み、何百万年もかけて結晶化していきます。
このパターンを「石灰化(Permineralisation)」と呼びます。
このプロセスで骨などは石と同じような硬さとなり、まさに化石と呼ぶべき変化を起こすのです。
ジュラ紀の海にいた首長竜の一種プリオサウルスの化石 / Credit: Australian Museum – How do fossils form?(2023)
これと別に、生物の遺骸が堆積物中に埋まったものの、中で分解されるか溶けてしまったことでその生物の形をした空間だけが3次元的にポッカリと残されることがあります。
こうした鋳型のような化石を「印象化石(Impression fossil)」といいます。
貝殻のような海洋の無脊椎動物や陸上の植物などは、印象化石として残ることが多いようです。
三葉虫の印象化石 / Credit: Australian Museum – What are fossils?(2020)
それから樹脂に閉じ込められることで保存される「琥珀(Amber)」というパターンもあります。
樹脂は木の表面を流れ落ちる液体なので、琥珀として残るのは小さな昆虫がほとんどです。
琥珀は生物を丸ごと密閉してくれるので、生きていたままの姿で全体像を知ることができます。
アリ入りの琥珀 / Credit: ja.wikipedia
また生物自体の体は残されていないものの、その足跡や巣穴、あるいは糞などが化石化したもの「生痕化石(Trace fossils)」と呼びます。
先の印象化石とよく似ていますが、生痕化石からはその生物がどんな動きをしていたのか、どんな巣に住んでいたのか、何を食べていたのかなどの生態を知ることができます。
そして最も化石化しにくい軟部組織が保存されるケースも稀にあります。
皮膚や筋肉、内臓、体毛、羽毛などは柔らかく分解されやすいので、ほとんど化石として残りません。
しかしながら、死んだ動植物が泥中などの低酸素環境にすばやく密封された場合、そこでは微生物が活動できないので、軟部組織が分解されることなくそのまま残されるのです。
こうした保存のされ方をすると、どんな大きな生物でもまるでミイラのように生前の姿を留めることができます。
実際に過去には、皮膚や消化管までほぼ完全に保存されたノドサウルスの奇跡的なミイラ化石が発見されました。
これは「史上最も完全な保存状態の恐竜」と称されています。
では最後に、恐竜が死んでから化石化するまでのプロセスを図解で追ってみましょう。