新型コロナウイルスのワクチンが血管系へ及ぼす影響


新型コロナウイルスのワクチンが血管系へ及ぼす影響 / Credit:K. Faksova et al . COVID-19 vaccines and adverse events of special interest: A multinational Global Vaccine Data Network (GVDN) cohort study of 99 million vaccinated individuals . Vaccine 2024

上の表は主に血液学的な副反応をまとめたものになります。

全体的にみて、神経学的な症状を示した前の表に比べて、黄色の部分が多くなっているのがわかります。

一番左の血小板減少症(THR)は出血を防ぐ役割がある血小板が血液中で減ってしまう症状であり、1回目の接種で、3種類全てのワクチンで有意な増加を示しました。

(※アストラゼネカ1.07倍、ファイザー1.11倍、モデルナ1.33倍)

左から2番目の特発性血小板減少症(ITP)はウイルス感染後などに突然発症する血小板が減少する症状であり、1回目のアストラゼネカのワクチン(1.40倍)とファイザーのワクチン(1.08倍)で有意に増加しました。

中央の肺塞栓症(PEM)は足の静脈などから剥がれた血栓によって、肺に血液を起こる血管が突然に閉塞してしまう症状であり、3種類全てのワクチンで1回目の接種後に増加しました。

(※アストラゼネカ1.20倍、ファイザー1.29倍、モデルナ1.33倍)

脳静脈血栓症(CVST)頭蓋や硬膜洞でみられる血栓症であり、1回目の接種後にアストラゼネカのワクチンで3.23倍、ファイザーのワクチンで1.49倍に増加しました。

一番右の内臓静脈血栓症(SVT)は肝臓へ続く血管(門脈系)の静脈が閉塞してしまう症状であり、1回目の接種後にファイザーのワクチン(1.25倍)とモデルナのワクチン(1.23倍)で増加しているのがわかります。

アストラゼネカのワクチンはパンデミック中にもかかわらず血栓症になるとして利用が一時停止したことがありますが、3つ目の表でも統計的に顕著(赤色マス)に血栓ができることが示されています。

(広告の後にも続きます)

ワクチンの利益は健康リスクを上回る

健康リスクをあまり気にしなくていい理由

研究結果をまとめると、調査された13種の症状において、ファイザーやモデルナなどmRNA系のワクチンは心筋症や心膜炎などのリスクを増加させ、アストラゼネカのワクチンは顔面麻痺と内臓静脈血栓症以外の11種類全てのリスクを増加させると言えるでしょう。

この結果は、新型コロナウイルスの3種類のワクチンには明らかに健康リスクがあることを示しています。

もし新型コロナウイルスが存在しない世界で、新型コロナウイルスのワクチンだけを打つという矛盾した設定を許せば、ワクチン接種は健康リスクだけを増大させることになるでしょう。

健康な人にとって、全く有害事象が出ない薬やワクチンは存在しないからです。

しかし現実は違います。

これまでに行われた複数の研究では全て、新型コロナウイルスの感染によって、心筋症や心膜炎などの症状の発生率が大幅に増加することがわかっているからです。

また新型コロナウイルスの感染によって、その後に心筋炎になる確率が、ワクチン接種後の数週間よりも、遥かに高くなることがわかっています。

実際、新型コロナウイルス感染症で入院した8人に1人が心筋炎と診断されていました。

さらに感染後に神経系への何らかの影響が出る確率は「617倍」と圧倒的に増化することが報告されています。

最新の研究では、新型コロナウイルスの症状が長引く要因が、感染によって脳が損傷してしまったことであると報告されています。

新型コロナウイルスは現在も変異を続けており、一部の国や地域では再流行に近い広範な感染者を出しています。

ビッグデータを用いた研究では、英国の国民全員が完全にワクチン接種を受けていた場合、死亡や重篤化した4万件のうち、7000件は回避できた可能性があることが示されています。

日本においてもこのような現実を考えると、新型コロナウイルスのワクチンを打つ利益は健康リスクを上回ると言えます。

似た副反応は他のワクチンでも起こる


ワクチンの副反応による心筋炎よりも感染に関連した心筋炎のほうがずっと起こりやすい / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

最近の研究で、インフルエンザや天然痘、ポリオ、麻疹、おたふく風邪、風疹など、様々な種類のワクチン4億500万回分を分析した結果、新型コロナウイルスワクチンを接種した後に起こる心筋炎や心膜炎の発症率は、これらの他のワクチンを接種した後の発症率と大差ないことがわかりました。

ただし、若い男性に限っては、モデルナやファイザーのようなmRNAベースの新型コロナウイルスワクチンを接種した後の心筋炎や心膜炎の発症率が顕著に高くなる傾向が見られました。

医学誌ランセットに掲載された研究では、新型コロナウイルスワクチン接種後に見られる心筋炎や心膜炎の稀な症例は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質やその他の特定の成分よりも、ワクチン接種による体の全体的な免疫反応に関連している可能性があることが示唆されました。

さらに、新型コロナウイルスワクチンの大規模な接種とそれに伴う綿密な監視が、心筋炎や心膜炎の報告数の増加につながっている可能性もあります。

約1億人ものサンプルを用いた副反応の研究は極めて稀であり、この人数になってはじめて見えてくる有意差があるからです。

幸いなことに、急性心筋炎になったほとんどの人は良好に回復し、長期的な健康問題を抱えることは少ないようです。

参考文献

Largest COVID Vaccine Study Ever Reveals The Actual Health Risks You Face
https://www.sciencealert.com/largest-covid-vaccine-study-ever-reveals-the-actual-health-risks-you-face

元論文

COVID-19 vaccines and adverse events of special interest: A multinational Global Vaccine Data Network (GVDN) cohort study of 99 million vaccinated individuals
https://doi.org/10.1016/j.vaccine.2024.01.100

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。
大学で研究生活を送ること10年と少し。
小説家としての活動履歴あり。
専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。
日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。
夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。