「孤独な男」を取り除けば農業が楽になる


野生型のトゲを遺伝子操作で素早くなくすことができれば農家にも恩恵があるでしょう/Credit:James W. Satterlee et al ., Science (2024)

今回の研究により、バラやナスのトゲ(prickles)が、植物の成長において重要な「Lonely Guy(孤独な男)」遺伝子によって作られることが示されました。

研究者たちは、この遺伝子を上手く改変することで、トゲが手強い植物からトゲを奪い、農作物として使用できるようになると述べています。

今回の研究では、オーストラリアに生息する野生植物(砂漠レーズンの一種)において先駆けとなる実験も行われました。

この植物は甘い果実を実らせますが、トゲに相当する組織があることが知られています。

しかし研究者たちがこの野生植物から「孤独な男」遺伝子を取り去ったところ、そのトゲがなくなりました。

もし同様の手法でトゲの存在がネックになっている植物を操作できれば、人類の食卓はより豊かなものになります。

また「イノベーションは全く新規のもの(遺伝子)を開発するのではなく、古いものを新しい方法で再利用することでも達成できる」という実例が人間のビジネスではなく植物世界で広くみられるという結果も、興味深いものと言えるでしょう。

元論文

Convergent evolution of plant prickles by repeated gene co-option over deep time
https://doi.org/10.1126/science.ado1663

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。
大学で研究生活を送ること10年と少し。
小説家としての活動履歴あり。
専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。
日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。
夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部